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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ウクライナ抗争・ドイツのスーパーから消えた「小麦粉と食用オイル」物価高騰と品薄で不安な市民の暮らし

何度足を運んでも小麦粉類と食用オイルの棚は空でがっくり。筆者撮影

ロシアによるウクライナ侵攻開始から2か月以上経った。故郷を後にせざるを得なかった避難民や今も戦火の現地で生活しているウクライナ市民の心情を思うと、胸を締め付けられる。世界が耳目を集める悲惨なニュースとは別に、ここではドイツ市民の生活が2か月でどう変わったかお伝えしたい。

店舗の棚から消えた「小麦粉と食料オイル」

ドイツのスーパーマーケットやディスカウントストアでは2月末頃から、小麦粉や食用オイル(ひまわり油、菜種油)の棚が空になっていることが珍しくなくなった。品薄ではなく、商品がないのだ。

最近になって、運が良ければ穀物類は買うことができるようになった。だが購入は1人1袋(500g)あるいは2袋までと注意書きが貼ってあり、瞬く間に売り切れてしまう。小麦粉類と異なって、食用オイルはオリーブオイル以外全く入手できない状態が続いている。(以下画像のようにオイル類もいつ入荷するのか不明・筆者撮影)

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スーパーに行けば、いつでも買えるという、これまでの当たり前が当たり前ではなくなった現象は、コロナパンデミック規制生活の中で思い知らされた。当時はトイレットペーパーの不足が続いたが、今回は食料品とあって、市民の危機感も一層強いようだ。

「ウクライナは世界で最も重要なひまわり油の供給国」と、ベルリンの油糧種子加工工業会(Ovid)の広報担当者は言う。世界のひまわり油の輸出量の半分以上が東欧の国からと聞き、やはり品薄なのは仕方がないと納得する。そしてひまわりの種まきは4月というから、ウクライナ抗争が終結しない限り、今秋の収穫も見込めない。つまり品薄と値上げはしばらく続くと覚悟した方がよいということだろう。

消費者だけでなく、ガストロノミー、食品メーカーにとっても食用オイルは当分供給不足が続くようだ。ドイツ、フランス、ポーランドでは、それぞれ100万ヘクタール近くで菜種が栽培されている。そのためひまわり油の代替品としての菜種油は不足する心配もないと専門家はいう。しかしスーパーではどの油も見当たらず、入荷なしの日々が続くと、やはり不安になってしまう。

ちなみに食料品価格は数か月前から上昇しており、「欧州の穀倉地帯」であるウクライナに対するロシアの攻撃から値上げがさらに加速している。

そんななか大手ディスカウントストアのアルディは3月、新たな値上げを開始した。アルディの宣言は、他のスーパーにも大きな影響を及ぼすことから、多くの商品の値上げは避けられない。

このような連鎖的な値上げには、他の要因も絡んでいるようだ。例えば、エネルギーや肥料のコストの上昇だ。また、人手不足と最低賃金により、人件費が割高になっている。

不足していない商品も値上げ

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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