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スタートアップ超大国 インド~ベンガルールからの現地ブログ~

永田賢|インド

続・中印国境紛争に伴うインド国内での中国アプリの禁止

istock

9月の記事で中印国境紛争に伴う中国関連アプリの禁止について触れましたが、続報がまたインド国内で出てきました。

インドと中国の国境紛争に関しての解説記事はこちらとなります。)

前回の分と合わせると、220ものアプリがインドにおいて禁止されていることになります。

では、前回に引き続いて今回の措置についてみていきましょう。

1.今回インドにおいて禁止された中国関連のアプリ

今回は43のアプリが禁止されました。インド政府からリリースされたリストは以下となります。

【今回の措置で禁止された中国関連アプリのリスト】

見たところ、TikTok以外の動画系アプリを禁止しつつ、アリババ系のアプリにもテコ入れしてきた印象を受けます。

インド政府通知より筆者作成)

CamCardは前回に続いて出てきました。改めてアプリストアに行ったところ、前回では検索画面に出てきましたが、今回は検索画面にすら出てこなくなってしまいました。

【Google Play画面】

試しに、snack videoとCamcardで調べてみましたが、見事に検索画面に出てこないです。

1606410532745.jpg

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(両画面ともGoogle Playにて筆者撮影、抜粋)

2.インド政府の姿勢

国境紛争以降、強硬姿勢を崩さないインド政府ですが、今回のアプリ禁止のロジックとしてはサイバーセキュリティの観点から情報漏洩を防ぐための措置とみることもできます。

Earlier on 29th June, 2020 the Government of India had blocked access to 59 mobile apps and on 2nd September, 2020 118 more apps were banned under section 69A of the Information Technology Act. Government is committed to protect the interests of citizens and sovereignty and integrity of India on all fronts and it shall take all possible steps to ensure that.

Ministry of Electronics & IT,Government of India blocks 43 mobile apps from accessing by users in India, MEITY issues order for blocking apps under Section 69A of the Information Technology Actより引用)

対中強硬姿勢の発露としては、このアプリ禁止措置に加えて、日本が主導していたRCEP不参加にも表現されています。

RCEPへのインド不参加については別記事で考察してみますが、恐らく(1)中国の貿易赤字を嫌った (2)RCEPによる安価な中国製品流入に自国産業育成を妨害されたくない (3)そもそも国境紛争中なのにそこまで親密にできない、といったところだと推察できます。

貿易についてみてみると、2019年のインド・中国二国間貿易金額合計は前年比2.93%減の928.9億米ドルになっています。

インドの対中輸出は前年比4.55%減の179.7億米ドルとなり、中国からの輸入も2.54%減の749.2億米ドルとなっています。中国の対インド輸出は過去10年で初めて減少しました。インドの対中貿易赤字は569.5億ドルで、前年比1.88%の微減となっています。貿易赤字は 2005 年以来初めて減少したものの、依然高い水準にあります。(データは在北京インド大使館より参照。)

3.中国の姿勢

中国政府も広報スポークスマンが批判声明を出して、自由貿易の妨げ!WTOに反する!の線で責めています。中国政府は海外でビジネスする中国企業に指導しているんだとも主張して譲らない方向です。

"For four times since June, India has imposed restrictions on smartphone apps with Chinese backgrounds under the pretext of national security. These moves in glaring violation of market principles and WTO rules severely harm the legitimate rights and interests of Chinese companies. China firmly rejects them," Zhao said.

He said the Chinese government always asks Chinese companies to observe international rules and local laws and regulations when doing business overseas. The Indian government has the responsibility to follow market principles and protect the lawful rights and interests of international investors including Chinese companies.

(XINHUA NETより引用)

熱戦にはまだなっていないですが、ヒマラヤ山脈系での軍事衝突がまた気になるところではあります。

インドも1月26日に共和国記念日の閲兵パレードを控えていることから示威行動か国威掲揚のために対中強硬施策をまた発動させてくる可能性もあります。

引き続き現場から注視していきます。

 

Profile

著者プロフィール
永田賢

Sagri Bengaluru Private Limited, Chief Strategy Officer。 大学卒業後、保険会社、人材系ベンチャー、実家の介護事業とキャリアを重ね、2017年7月に、海外でのタフなキャリアパスを求めてYusen Logistics India Pvt. Ltdのベンガルール支店に現地採用社員として着任。 現地での日系企業営業の傍ら、ベンガルールを中心としたスタートアップに魅せられ独自にネットワークを構築。2019年4月から日系アグリテックのSAgri株式会社インド法人立ち上げに参画、2度目のベンガルール赴任中。

Linkedin: https://www.linkedin.com/in/satoshi-nagata-42177948/

Twitter: @osada_ken

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