コラム

日仏外務・防衛閣僚会合、「特別なパートナーシップ」に中国の影

2018年01月29日(月)13時30分

日本は中東やアフリカでの協力に踏み込む姿勢を示す

もう1点、フランスが日本との協調に傾く要因は、日仏間の相互補完性にある。日本とフランスは、お互いに支援を必要とする地域が異なり、相互に支援を与え合うことで、ウィンウィンの関係になれる。今回フランスが日本のインド太平洋戦略への協力の姿勢を示した一方で、日本はフランスが重視している中東やアフリカでの協力にさらに踏み込んでいく姿勢を示した。

フランスにとって、近年のマリや中央アフリカへの介入や、中東におけるテロとの戦いは、大きな負担となってきた。その肩代わりを求め、国連やEUの関与、近隣地域諸国や域外有力国の協力や支援を必要とするフランスにとって、安倍政権の下で積極的平和主義を推進しようという日本の存在意義は大きい。日本にとっても、テロとの戦いやアフリカの能力構築などで日本らしい貢献を果たすことで、フランスのクロスサポートをアジアで期待できることは心強いことに違いない。

これまで、お互いの重要性にも関わらず、日仏両国間で、外交安全保障に関するハイレベルの政策対話が行われてこなかったのは、地理的遠隔性とともに、お互いの地政学的な意義づけが違っていたことから、共通の基盤を欠き、共通の認識も希薄であったことが大きい。その壁を乗り越えさせようとしているのは、皮肉なことに、中国の存在であると言えるかもしれない。

いずれにせよ、こうした「特別なパートナーシップ」の関係は、まだ初動段階に過ぎない。具体的な成果を挙げていくかどうかは、今後の実践の積み重ねにかかっている。これからが正念場と言える。

プロフィール

山田文比古

名古屋外国語大学教授。専門は、フランス政治外交論、現代外交論。30年近くに及ぶ外務省勤務を経て、2008年より東京外国語大学教授、2019年より現職。外務省では長くフランスとヨーロッパを担当(欧州局西欧第一課長、在フランス大使館公使など)。主著に、『フランスの外交力』(集英社新書、2005年)、『外交とは何か』(法律文化社、2015年)など。

ニュース速報

ビジネス

米国株、ダウ史上初の3万5000ドル乗せ 好決算で

ビジネス

ドル2週連続で上昇、来週のFOMCに注目=NY市場

ワールド

中国、ロス前米商務長官らに報復 「反外国制裁法」初

ワールド

G20気候・エネルギー相、石炭火力廃止など巡り合意

MAGAZINE

特集:ドキュメント 癌からの生還

2021年7月27日号(7/20発売)

東大病院から「逃亡」、転院先では手術回避、最後は自ら選んだ治療で生き延びた記者の「決断と選択」

人気ランキング

  • 1

    「無駄に性的」罰金覚悟でビキニ拒否のノルウェー女子ビーチハンド代表

  • 2

    「競技用ショーツが短すぎて不適切」英パラ代表選手、審判の指摘に絶句

  • 3

    「三国志」は日本人も中国人も大好き(でも決定的な相違点がある)

  • 4

    国際交流を奪われた悲しき五輪で角突き合わせる日本…

  • 5

    加害と向き合えない小山田圭吾君へ──二度と君の音楽…

  • 6

    世界で最も静かな場所...深遠なる静寂が広がる「音の…

  • 7

    大谷翔平は既にメジャー100年の歴史を覆し、アメリカ…

  • 8

    東京五輪はアスリート生命を脅かすスーパースプレッ…

  • 9

    日本の皆さん、習近平は「シー・チンピン」でなく「…

  • 10

    最先端!がんセンター東病院トップが明かす「若者」…

  • 1

    加害と向き合えない小山田圭吾君へ──二度と君の音楽は聴きません。元いじめられっ子からの手紙

  • 2

    20万円で売られた14歳日本人少女のその後 ──「中世にはたくさんの奴隷がいた」

  • 3

    「無駄に性的」罰金覚悟でビキニ拒否のノルウェー女子ビーチハンド代表

  • 4

    人間のオモチャにされたイルカ死ぬ──野生動物に触る…

  • 5

    「競技用ショーツが短すぎて不適切」英パラ代表選手…

  • 6

    経済依存してきた中国に、真っ向から歯向かうオース…

  • 7

    ユーチューブが投げ銭機能「スーパーサンクス」導入 …

  • 8

    BTSのジミンに憧れ整形手術18回、英国人は念願の韓国…

  • 9

    東大病院の癌治療から逃げ出した記者が元主治医に聞…

  • 10

    五輪で再燃する? 国旗に敬意を払わないアスリートを…

  • 1

    加害と向き合えない小山田圭吾君へ──二度と君の音楽は聴きません。元いじめられっ子からの手紙

  • 2

    20万円で売られた14歳日本人少女のその後 ──「中世にはたくさんの奴隷がいた」

  • 3

    閲覧ご注意:ヘビを捕食するクモが世界中で確認されている

  • 4

    「1日2個、カットしてスプーンで食べるだけ」 メンタル…

  • 5

    「寝はじめる姿勢」で目覚めが変わる 寝ても疲れが取…

  • 6

    「無駄に性的」罰金覚悟でビキニ拒否のノルウェー女…

  • 7

    人間のオモチャにされたイルカ死ぬ──野生動物に触る…

  • 8

    韓国で、日本製バイクの販売が伸びている理由

  • 9

    ある日突然「人工透析です」と告げられたら? 高血圧、…

  • 10

    テスラ6月に発売した新型「モデルS」運転中に発火=所…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中