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イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

イタリアは9月から何が変わるのか、混沌とするグリーンパス義務化後の現状

iStock- CentralITAlliance


8月6日以降、飲食店の屋内でのテーブル席利用やバー、一般に公開される公演、スポーツイベント・競技会への入場、プール、美術館などの文化施設への入場、展示会や会議への参加などスタジアムの認証が義務付けられ、グリーンパス(グリーン証明書)を所持していることが求められるようになった。

グリーンパス(グリーン証明書)とは、
○ワクチン接種が完了したことを示すもの。
○新型コロナウイルスに感染し回復したことを示すもの(6カ月間有効)。
○PCR検査あるいは迅速抗原検査による陰性証明(48時間有効)。
これらのいずれかを指す。

グリーンパスの義務化が決定された直後は、飲食業界からは困惑の声が聞かれた。
イタリア商業連盟(コンフコンメルチョ)は7月23日に発表したプレスリリースで、「国全体で40%の飲食店は屋外エリアを持っておらず、また1,800万人がワクチン未接種」であることをあげ、グリーンパスをまだ取得できていない多くの顧客を失うリスクが既にあるとして不安と不満を述べていた。
ワクチンをまだ接種していない1,800万人の未接種客は、店内で食事をする事はできないのである。

1回目の接種後にQRコードが記載されたグリーンパスが発行された、1回目だけのものでも入店は可能である。またこの1回目のグリーンパスは接種後15日目から2回目の接種予定日まで有効。
ワクチン2回の接種をしたら、その後、ワクチン接種サイクルの完了から9カ月間有効のものが発行される。

2回目の接種後、私の場合は2日後にはすぐに、ワクチン接種証明書となるQRコードを取得するためのリンクが携帯の方にSMSメッセージで届いた。
アプリの方にも2回目のワクチン接種証明書QRコードが届いていた。

グリーンパスを携帯の専用アプリ内に保存するか、紙に印刷して、それを所持しなければならない。
各所、参加や入場をする際にグリーンパスを要求されれば、携帯アプリ内のQRコードないしは、用紙に印刷したQRコードを提示するするわけだが、携帯を家に忘れてきた人は家に取りに戻らなければならなかったり、なぜか、用紙のQRコードが読み込みされないエラーが出るなど、様々なトラブルがあったようだ。
また、アプリと身分証明書、これにレストラン経営者などが意見。アプリでパスを確認し、それが本人のパスかを身分証明書の提示を要求して二重確認までする必要あるのか?
内務省が「顧客にパス要求は義務、身分証明書の要求はしなくても良い。」と発表した。
証明書が偽物の場合顧客には、罰金が課せられる。

グリーンパスQRコードと本人証明のために身分証明書を提示しなくても良い。氏名の確認もない。
「そこまではしなくていい」と、内務省が言ったので・・・。

それを知った後、その抜け穴に、目敏く漬け込み、商売を始める者が早速現れた。

SNS上で偽の(他人の)グリーンパスを販売していた4人が検挙された。逮捕された4人のうち、2人は未成年者だった。
グリーンパスは、150€(約19,500円)~500ユーロ(64,700円)の価格で販売していたという。なんと、その偽の証明書「フェイクパス」の購入に何千人もの匿名ユーザーが加入したことが明らかになった。LINEのような携帯アプリTelegramで決済をして金銭のやり取りなどをしていた32の掲載サイトが押収されたというから驚きだ。


22歳の学生、アンドレア・コロネッタ君は、グリーンパスQRコードを身体にタトゥーしてしまった。
まず、グリーンパスをなくす事はないだろうし、提示を要求された時にスムーズに認証してもらえるし、自分の人生の中で特定づけるこの歴史の瞬間を身体に刻みたかったからという彼なりの理由があったそうだ。
しかし、3回目以降の追加ブースターなども今後、予測されている中、QRコードは3回目以降も変わり続ける。タトゥーをしてしまった2回目のRQコードは無効になってしまうのに、どうしてこんな早まったことをしてしまったのだろうか。
流行病からカバーされた証明を流行りのファッション感覚でタトゥーしてしまう若者。


イタリア・ワクチンとISS(イタリア国立衛生研究所)速報に関する政府の最新データ報告によると、50歳〜59歳の200万人以上がワクチン接種を受けてない。
2,048,855人(21.23%)は、初回ワクチンすら受けておらず、50〜59歳9,651,541人の内、7,042,299人がワクチン接種サイクル完了(72.97%に相当)
40〜49歳の300万人が接種0回。62.23%は2回接種完了、67%は少なくとも1回接種。
そして、学校職員12.8%(174,000人)と医療従事者1.8%(35,000人)がワクチン未接種で免疫がないと発表された。


| イタリアのワクチン接種状況2021年8月30日(06:20)更新データ

○ワクチンを接種(2回、J&Jは1回)を完了した人は、37.476.187人(総人口の62.2%)
○少なくとも1回の接種を受けた人は、42.316.748人(総人口70.3%)
○1日あたり254,276回の投与(前の週202,684回)
○これまで配給されたワクチンの合計は、4,921,216回分(合計86,125,866)


| 9月1日からは、グリーンパスの義務が拡大される

運輸、学校、大学に拡大され、既に8月から施行されている措置に追加される事となった。

イタリア政府は7月23日に発効した措置令により、7月31日までが期限となっている非常事態宣言について、12月31日まで延長し、ワクチン接種完了などを示すグリーンパス(COVID-19グリーン証明書)の利用拡大について詳細を公表した。

船やフェリーにアクセスするにもグリーンパスが必要になる。(メッシーナ海峡の海上接続は例外)。
地域の列車ではなく、インターシティ、インターシティナイト、高速列車に乗車するにはパスが必要。
3つ以上の地域を結ぶルートで「継続的または定期的」サービスを実行するバス、ドライバーとのレンタルサービスに使用されるバスにもグリーンパスは必須である。

地元の交通機関への無料アクセス:メトロ、都市バス、地方バスは新しい規則からは除外されるとのことである。

イタリア国内では、ワクチンを少なくとも1回だけ接種すればグリーンパスとしては十分であり、ワクチン証明書になるのだが、
ヨーロッパ圏内のフライトでは、現行すでに2回のワクチン接種完了が必須であったが、これがイタリア国内線のフライトでも必須になるという。

| 9月から開始の学校、どこが変わるのか

イタリアでは、新学年度の始まりは9月である。9月からすべての教育機関でCovid認証の管理が義務付けられる。
教育省が発表した教師と学校職員のチェックのための教育保健省の計画プラットフォームは、プライバシーの問題や管理の混乱を回避し、事務局でスタッフのグリーンパスを毎日確認できるようにするという。
技術的手法の定義に引き続き取り組み中で、教育保健省が学校職員のグリーンパスの管理をより効率的かつ迅速にするために検討している。
国家レベルで公式に新規導入する規定であり、それには法令法がなければならない。
ここ数日間で、重要なプラットフォームテストが行われ、最終的に正式に始動するのは、9月10日以降である。

検討しているソリューションは、校長がアクセスできる専用のプラットフォームの事だ。
プラットフォームのソリューションは、グリーンパスの即時有効性のデータを表示するだけであり、学校スタッフの雇用主である校長に他のデータを提供しないため、プライバシーの尊重を保証できるものである。

各教職員のグリーンパスのステータスは毎朝自動的に表示され、有効な資格を持っている人は緑色、状態が良くない人は赤色で分類される。
その時点で、校長は健康診断書を持っていない人が教室に入らないことを確認し、できるだけ早くPCR検査結果を要求する必要がある事を知らされる。
それ以外の場合は、赤色になった人に対して、その日から5日目に、職務の停止と給与を停止する手順がトリガーされるというものである。

しかし、ここ数週間、学校スタッフの雇用主である校長らから要求されている事と問題点は、この解決策で教職員に同意させる作業は、プライバシー関係に責任を持つ当局がするべきであって、このグリーンパス監視システムを導入するための法令は、大臣の措置であるという意見で、新たな法律が必要か、または法令の改正が必要であるかどうかはまだ分かっていない。(おそらく8月6日の法令を改正するだろう)。


| 公共交通機関

昨年2月との違いをあげると、昨年春に施行された非常に強い制限で電車、バス、地下鉄などの公共交通機関の乗車率を極限まで減らし最大容量を50%で運行させていたが、現在は、80%の乗客率である。利用客を20%減で運行している。
日本は、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で、通勤電車は密閉・密集空間ではあるものの、会話が少ないことから「3密」すべての条件には該当しないとの見方を示している。

しかし、イタリアはそうはいかない。

電車内では、とにかく乗客は大声でしゃべっている。携帯で通話などもしている。車内で黙っているということはない。
もしも、交通機関利用時のマスク着用義務がなかったとすれば、飛沫は飛びまくりである。

ATMによると、9月からも80%のままで、ほぼ満員の乗客を収容して再開することができるという。
ロンバルディア州は、ラッシュ時の混雑を避けるために、授業開始時間をずらすなどして、公共交通機関の利用時の感染防止措置と安全対策を強化することに焦点を当て、政府のガイドラインと今後数日間で出るエピデミックの進展に関する評価を通じて、すでに実証されている組織的経験を元に9月13日の学校の再開する。

| 医療従事者にワクチン接種義務、従わない場合は職務停止か配置転換

トスカーナ州知事エウジェニオ・ジャーニ氏が、「ワクチン接種を受けるつもりのない人は他人の世話をすることはできません。」とSNSで発表した。9月30日からNO VAX(ワクチンを接種したくない人)の医療従事者に停職を通知する手紙が送られる。トスカーナには約4,500人いる。


| シチリア州がイエローゾーンに

イタリア政府はこれまで、Rtの数値ごとに特定のレベルのリスクに対して想定される措置として、各州を感染リスクが高い順にレッド・オレンジ・イエロー・ホワイトに色分けし、異なる措置を取ってきた。
Rtが1.25の場合はレッドゾーンとなる。1の場合はオレンジゾーンがトリガーされ、1以下である時にイエローゾーンへとわずかに制限の少ない対策がなされる。
モジュール式で規制をかける対策を法令で定めている。

現在は、8月28日に新たな保健省命令が官報に掲載され、8月30日から15日間、シチリア州にイエローゾーンの措置が適用された。
シチリア州を覗くその他イタリア全土はホワイトゾーンのままとなっている。
シチリアでは6月末~7月初頭を底に感染者数は再び増加しており、データからもイエローゾーンへと規制がかかったのは妥当な判断であった。
病床占有率は20%(制限は15%)、集中治療室の占有率は11%(制限は10%未満)

2021年8月中旬には更に自治体の独自ルールが設けられ、集会を避けるために知事と市長が新条例に署名した。
焚き火の禁止と屋外でのマスクの着用義務が復活し、シチリアのビーチとラツィオの海岸だけでなく、カンパニアの海岸でも焚き火と花火は禁止になった。


規制が最も軽微なホワイトゾーンでは、経済・社会活動における制限措置の大部分が適用対象外となっている。


|グリーンパス義務に反対デモも全国で拡大中、デモも過激化

8月28日(土)ミラノのドゥオーモ広場に集結したグリーンパス義務に反対した抗議者達の無許可デモ行列には、約3000人が参加した。
一部の過激活動家が、5つ星運動政党(M5)の仮設テント事務所を襲撃し破壊するなど、暴力や挑発を繰り返し、そのうち2名が逮捕された。
5つ星政党の新党首に就任したイタリア前首相のコンテ氏やディマイオ外相は、「暴力的で、全く文明化されておらず民主主義的ではない不当な行為である」とが強く批判している。
また、イタリア国営放送ライのジャーナリスト、アントネッラ・アルバさんがローマで「反グリーンパス」「No-Vax」の取材中にデモ集団から攻撃された。
彼女は、奪われた自分の携帯電話を取り戻そうとして、大きな女性から引きずられた。その時に、右腕に打撲傷と体にいくつかの引っかき傷などの軽傷を負ったという。
これは、«非常に深刻な事実»である。


このグリーンパスの義務化に反対する集団は、9月1日(水)に54都市で列車をブロック封鎖する考えを表明している。
そして、同日、ローマのモンテチトーリオ前に「No Green Pass」を共有する者達によるデモを呼びかけている。現在、この反グリーンパスの団体「Basta dittatura!(独裁政権をやめろ)」には、約40,000人のメンバーが登録されている。
何日もの間、ミラノのポルタガリバルディ駅からとローマのティブルティーナ駅に至るまで、イタリアの54の都市の鉄道駅を封鎖するように過激派達が座り込みデモを呼びかけている。
この集会は午後2時30分から30分間、大人数で駅に座り込みをすることで、利用客が地下鉄を利用できなくするつもりであるとの声明で、もしも、決行されると、グリーンパスを所有して真面目に通勤や通学をしている地下鉄利用者達は、大変な迷惑を被る事は必至である。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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