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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

オーストラリアの公立病院と私立病院

画像:XtockImages-iStock

オーストラリアにはMedicareという日本の国民健康保険のようなシステムがあり、オーストラリアの国籍か永住権を所持していれば自動的に医療費がカバーされる。またニュージーランド国籍、オーストラリアと保険の交互提携している国の人もMedicareを使えるシステムだ。基本的に税金が元になっており、日本の国民健康保険のように別に保険料を支払う必要はなく、収入が全くなくてもMedicareは所持できる。

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画像: robynmac-iStock

オーストラリアにはPublic (公立)とPrivate (私立)の病院があり、Publicの病院は州政府が管理していてこれも税金で賄われている。Medicareをもっている人であれば誰でも利用でき、Publicの病院では日本のように何割かの自己負担額は何もないが、その代わり日本の国民健康保険より自由度では劣る。まず救急診療以外はGP(家庭医)からの紹介状がないと受診できない。GPが患者の住んでいる地域の病院に紹介状を書き、病院側が症状などによって予約の順位を決める。命に直結する癌などの場合はカテゴリー1となり一か月以内に診察を受けられる。しかし、もっと緊急性の低い疾患の場合1年以内となる場合もある。そして患者はどの医師に見てもらうか指定できないし、時間や日時も病院から指定される。

通常、オーストラリアで何か病気があると患者はまずGPか病院の救急にいく。ほとんどの場合はGPで診療そして治療を受けるが、GPで対処できない緊急の場合やGPの予約が取れない場合は病院の救急に行くしかない。救急もMedicareでカバーされているがこちらもトリアージ制である。そのため心筋梗塞の場合などはすぐに見てもらえるが、もっと軽い症状であれば3-4時間待たされることもよくある。夜間だと研修医しか病院にいない場合も多い。

オーストラリアのpublic 病院はMedicareがあれば誰でも医療を受けられるが、順番待ちであり不便さもある。人によっては、やはりすぐに診察してもらいたい人もいる。そんな場合Private病院を使えば大概すぐに診察してもらえる。通常すぐに専門の医師に診察してもらえるが、診察にMedicareが適応されない。そのため最低でも一回の診察に200ドル以上かかかる。日本円で約1万6千円ぐらいである。検査などが必要な場合はもっと高額になる。そして入院が必要な場合もすべて自己負担となるが、その場合はPrivate医療保険(民間の医療保険)に入っていれば、カバーされる。そのためオーストラリア人の4割ほどがPrivate医療保険に加入している。

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画像: xtended license-iStock

Public病院は自己負担費用は必要ないが、時間がかかる。患者が多いので、疾患によって待ち時間がかなり変わる。外来でも病院が指定した予約日時に受診しないとまた数か月先になってしまう場合もある。

Private病院の救急では、基本的に簡単な書類を記入すれば、すぐに診察を受けることができ、常に救急の専門医が対応しているので、診断や治療もすぐに決まっていく。

PublicとPrivateの病院がある時点で医療格差ではないかという意見もあるかもしれないが、個人的には結構よくできたシステムであると思う。アメリカや日本のように健康保険に加入できなかったり、医療費が払えなくて医療を受けられない人もいない。そして長い間待つのが嫌な人にはPrivate病院というオプションもある。それぞれ人の状況や価値観は違うもので、すべての人に選択肢があるのだ。





参考
https://theconversation.com/explainer-what-is-medicare-and-how-does-it-work-22523
https://www.aihw.gov.au/reports/australias-health/health-system-overview

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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