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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

オーストラリアで人種差別はあるか

(画像:nullplus-ISTOCKS)

アメリカなどではニュースでアジア人差別の犯罪が度々ニュースになっています。オーストラリアでは、アメリカのような怪我人や死者がでるような人種差別による犯罪はないようですが、差別がまったくないとはいえません。幸運なことに私の周りでは直接の被害はありませんし、アジア人に対しても、とてもフレンドリーな環境です。しかしオーストラリアのニュースによると報告されただけでも520件のアジア系の人への差別の報告があったそうです。先日シドニーでアジア人差別に対する集会があり、アメリカのアジア人差別で亡くなった方への黙とうがありました。

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(画像:LuckyBusiness-ISTOCKS)

私の場合、オーストラリアに長くすんでいますが、シドニーやブリスベンなど大都市ではいろいろな人種の方がいるので、人種差別を感じることはあまりありませんでした。お酒に酔って人種差別的な発言をする人もいましたが、ごく稀です。人口6万人ほどの田舎町に住んでいたときは、アジア系の方に会うことはほとんどありませんでした。自分と同じ医療関係者で町にいる方、アジア系レストランで働いている方ぐらいしかいなかったと思います。田舎町なので、医師の数は常に不足していましたが、そこで働いていた頃にオーストラリア人の医師を希望する患者が何人かいたと聞いたことありましたが、普段暮らしている中で、得に差別を受けることはありませんでした。

オーストラリアは他の国に比べると人種差別がないというコメントを時々耳にしますが、これはなんともいえません。大きな人種差別の犯罪は聞きませんが、人種の壁がないかといえば見えない壁があるのかなと思うことはあります。初めてオーストラリアに来た頃、アメリカやカナダから来た学生と話していると、オーストラリアはアメリカやカナダに比べると人種差別がひどいという意見もありました。例として、テレビなど出演者に白人以外の人種割合が低い、アメリカやカナダでは使われない差別的用語がまだ使われているとも言っていました。確かにオーストラリアのニュースの司会者などでアジア人の方を見ることはあまりありませんし、プロスポーツでみることもあまりありません。ただこれはアジア系などの方がどれだけこの業界に入り込もうとしているか実情はわかりません。元々、人種的壁があるが故にその業界への進出がなかったのか、単純に興味がなかったのか明確には言えません差別用語に関してはときどき耳にしますが、これは差別用語と知らずに使っている印象を受けることも多いです。教育、認識の問題かもしれません。

オーストラリアに人種差別がないかといえばウソになりますが、学校教育や政府の取り組みなどをみていると他の国と比べて進んでいると思います。




参考
https://www.sbs.com.au/news/victims-of-coronavirus-fuelled-racism-in-australia-are-speaking-out-about-its-impact
https://www.sbs.com.au/news/anti-asian-hate-vigil-in-australia-hears-calls-for-tougher-laws-and-compulsory-training

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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