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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

爆弾に点火したフランスの年末年始

大晦日には、2,500人が集まるレイブパーティーが行われていた  pixabay画像

是が非でも、ノエルを家族と過ごしたかったフランス人の希望が叶い、テーブルを囲むのは6人までという制限付きではありながら、ほとんどの家族がクリスマスを家族と過ごしたフランスにとって、次は、年末の年越しの時をどう過ごすのか?が、注目されていました。ノエルは、家族と過ごすフランス人も、例年ならば、年越しは友人同士が集まって、わいわい過ごすのが一般的な習慣であるからです。

昨年10月には、1日の感染者数が6万人以上の危機的状況を迎え、10月末から11月にかけての2度目のロックダウンで奇跡的に1日の感染者数は、1万人台まで減少し、ロックダウンはノエルに向けて解除され、ロックダウンの代わりに20時以降の夜間外出禁止が敷かれたものの、ロックダウン解除とともに、また、ノエルが近づくにつれて、徐々に感染者数は増加し続け、2度目のロックダウン前には、24日と31日には、夜間外出禁止が撤廃される予定になっていたものの、結局、24日の夜間外出制限は撤廃されたままでしたが、31日の夜間外出禁止の撤廃は取り消しになりました。

外出がダメなら家でパーティー

かれこれ10ヶ月以上続いているこのコロナウィルス感染による行動制限に加えて、大晦日の夜間外出制限に、フランスの若者は、大反発。夜間外出禁止がダメなら、20時までに友人の家に滑り込み、夜通しパーティーをやればいいだろ!と年越しパーティーをやる気満々でした。実際に大晦日の前の段階の世論調査でも、フランス人の25%、若者に限れば50%の人が年越しのパーティーを予定している(ODOXA/仏・大手世論調査会社の統計より)という恐ろしい現実が示されていました。ましてやノエルで少なくとも感染は悪化している状況に上乗せする状況で、さらに広範囲の人が集うタガが外れやすい若者のパーティーです。結果は想像するのも恐ろしい限りです。

夜間に外出さえしなければ良いと考えている若者は、夜20時までに友人宅に集まり、一晩中、皆で家で過ごせば良いと考えており、この日に備えて、寝袋や簡易ベッドがあっという間に完売状態、若者は、外出しない年越しのパーティーの準備をしていることが当日前から露見していました。

最近、フランスの若者の間で人気急上昇中のユーチューバー・ユーゴ HugoDécrypte(登録者数110万人)(主に若者の世論調査をインスタグラム等で取りながら、幅広いニュースを伝えている)は、そんな若者の世論調査・動向も合わせてアップロードしており、特に若い世代への影響力も大きいことから、彼のチャンネルには、マクロン大統領がゲスト出演して彼のインタビューに答えたりもしています。彼の動画の中では、この彼自身がとった若者への世論調査によって、若者の45%が31日の夜間ロックダウンに反対しており、友人同士で集まるためには、20時までに集まり、翌日6時に帰りさえすれば良いのだろうと開き直っている人が多いことを伝えていました。

https://www.youtube.com/channel/UCAcAnMF0OrCtUep3Y4M-ZPw (ユーゴのYouTubeサイト)

2度目のロックダウン解除時には1日1万人前後にまで下がっていたものの、クリスマスを前後して1日の感染者数は、2万人前後に増加し始めました。この状況を受けて、大晦日の2日前には、政府の防衛審議会が開かれたので、当然、大晦日への対策が講じられると思いきや、フランス政府は、現段階では、制限を追加する状況にはないと判断し、結局、発表された対策は、感染状況の悪化している15カ所の地域に関しては、1月2日から夜間外出制限を現行の20時から18時に変更するというものでした。これには、はっきり言って、私は、失望しました。「夜間外出制限を18時に前倒しにするにしても、それがなぜ?1月2日からなのか?問題は、大晦日の年越しの日だろ!・・」と。この日1日、いや、せめて夕方からの半日だけでも完全なロックダウンにすることで、どれだけの感染を防げたでしょうか? 

一般人の私でさえが収集できる情報でさえ、大晦日の日にフランスの多くの若者が起こすであろう行動は充分に推測できていたのに、なぜ少しでもそれを回避する手段を取らなかったのか? それを考えるとフランス政府が下した決断に、私は、腹立たしささえ感じていました。

政府のこの決断に対して、フランスの科学評議会は、この年末年始の人の集まる行事(ノエル、年越し)の後、1月には、フランスの感染状態がコントロール不可能な状態に陥ることを警告していました。

そして迎えた大晦日の日

そして、迎えた大晦日の夜には、警察官が10万人動員される厳戒態勢が敷かれることになりました。政府も決して警戒をしていなかったわけではないのです。例年は、凱旋門を中心に繰り広げられるスペクタクルや花火などのために、年越しのカウントダウンの瞬間には、人で溢れかえるシャンゼリゼなどは、取り締まりの警官だけが通りを練り歩き、街路樹の赤いイルミネーションと警察車両の青いライトだけが静かに光る異様な光景、エッフェル塔の花火も中止となっていました。

   ベルサイユ4.JPG人混みを避け、無観客で行われたベルサイユ宮殿庭園での年越しの花火  France2より 筆者撮影

しかし、パリの街中がしんと静まりかえっている分だけ、例年なら、ここを訪れているはずの人々がどれだけ家の中、屋内に集まってパーテイーをしているかと思うと、それが逆に恐ろしいほどでした。しかし、10万人の警察官を動員して警戒した大晦日の年越しもまさか、それぞれの家を巡回してチェックすることは不可能です。外から見る分には、静かになっていた大晦日も実のところは、年越しのカウントダウンを祝うことを決して諦めたわけではなく、それは、街の様子からは見えない形で、しっかりと行われていたのが現実です。

ブルターニュで行われていた2,500人超えのレイブパーティー

ところが、行われていたのは、家の中でのカウントダウンパーティーだけではありませんでした。元旦の日になって、ブルターニュ地方のレンヌ南部・リューロンでは、2,500人が集まるレイブパーティー(ダンス音楽を一番中流すパーティー)が行われていたことが発覚したのです。

パーティーの場所に選ばれたリューロンの倉庫のようなスペースには、31日の夕方から数百台の車が集まり始め、夜通しのパーティーが始まりました。パーティーには、フランス国内だけではなく、イタリアやスペイン、ベルギーなどの隣国からも人が集まる大所帯。警察が介入した時には、すでに簡単に解散させることができないほどの人数になっており、憲兵隊が発砲する事態にまで発展し、少なくとも警察官25人が負傷しましたが、参加者を傷つけることはできないことから、警察も憲兵隊も手が付けられない状態が続き、パーティーは、一昼夜以上、36時間、続けられていました。

パーティーに集まっている若者は皆、屈託なく、音楽に合わせて楽しそうに踊り、マスクをしている人などほとんどおらず、たまにマスクが見えても顎マスク。ビールなどのアルコールを口に含んで、人に吹きかけている人までいます。これでは、飛沫が飛ぶどころの騒ぎではありません。最近は、映画やドラマの映像でさえ、それが現実のことでないとわかってはいても、人混みを見かけると、一瞬、ギョッとしてしまう私にとっては、もう信じがたい光景です。また、この状況を警察や憲兵隊までが出動しながらも即刻、解散させることができずにそれが一昼夜以上も続いてしまったことも、理解不能です。

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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