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ルワンダのカリツィエから見る日々のあれこれ

大江里佳|ルワンダ

ルワンダに嫁ぐということ①

(筆者撮影)

今日はルワンダに住み、ルワンダ人の妻として考えることについてお話したいと思う。

彼との間に授かった息子をここルワンダで出産してからもう10ヶ月程経つが、その前から合わせると3年ほどもう一緒に暮らしていることになる。そんなこともあり私たちの気持ちの中ではもうすでに家族という思いが強く、正式には婚姻の届けを出さずにパートナーという形での生活が続いていたのだが、今月頭にやっとここルワンダで婚姻の手続きを役所で行ない、結婚式も挙げることができた。

元々、婚姻をする予定ではあったが、必要な準備が整った段階で行えばいいかなと考えていた程で、実際の私たち家族の日常生活に大した影響はなく、変わることもないだろうと思っていた。また結婚式を挙げる予定も当初はなく、親族への報告を兼ねたお披露目くらいかなと考えていた。

しかし、婚姻の誓約(結婚式)の1ヶ月前になり、少しずつ準備を始めたところで、想像していた以上にやらなければいけないことがあることに気づかされ、私自身もルワンダに嫁ぐということがどんなことなのか本当の意味で考えさせられたのである。

そんなとっても新しい経験となったこの1ヶ月の間に起こったことをお話しできたらと思う。

今回はムスリムである彼、その家族のところに嫁ぐにあたって、私もムスリムに改宗し、イスラムの婚姻契約をするお話について。

イスラム教のことについては私もまだまだ初心者で勉強をし始めたところで知らないこともたくさんあるが、イスラム教徒といっても様々で、特にルワンダのムスリムの人たちは人によって信仰心の違いが大きく、行動や振る舞いも人それぞれ。

私の彼も信仰心がそこまで強くなく、一緒に暮らしていても普段の生活でムスリムであるということを実感することはそんなにない。また日本人である私の状況を理解してくれ、柔軟に考えてくれていたこともあり、本人は私の改宗が必要かどうかは私次第というような感じで託してくれていた。

私自身は典型的な日本人の家庭に生まれ、お正月には神社に詣り、クリスマスにはお祝いをし、お葬式は仏教に則るというように生活の中にいろんな宗教が混ざり、実際には自分がどの宗教を信仰しているのかということを考えることなく生きてきた。神社やお寺にお詣りに行ったりすることはあるけれど、それがその宗教を信じているという事とは別であり、神様の存在を認めお願い事としてお祈りをすることはあっても、それが他の本当に宗教を信仰している人が毎日お祈りをする事とは全く別のことであると自分自身が一番実感していた。

そんな環境の中で30年近く生きてきた私が、この日本人の宗教観とは全く異なるイスラムに改宗するということは、まず自分と向き合う必要があった。愛している彼との婚姻のために彼の宗教に改宗するということ自体は、それほど難しさはなく、自分の中でも改宗することは問題ないと考えていた。

しかし、一番の問題は改宗したところで、本当にムスリムとして神を信じて、信仰心をもって生きていくことができるのかという自分への問いであった。周りのムスリムを見て真似して、同じ行動をすることはできるが、それに本当の意味で心がついてくるのだろうかと。そんな不安から形だけでの改宗に疑問を持ったまま、あっという間に時間が経ち、結婚式の1ヶ月前となった。

改宗は信仰心の強い彼の家族の願うところがとても大きく、今回役所で正式な婚姻の手続きをして結婚式をあげるのであれば、イスラムとしての結婚の契約の儀式も行うべきということで、必然的に改宗が必要となっていった。

そんな不安と疑問を少しでも取り除きたいと思い、何人かのムスリムの友人に相談をした。一番助けになったのは、コロナ禍で学校が閉鎖となりその時期から一緒に住む事となった彼の妹の存在であった。彼女は信仰心がとても強く、毎日5回のお祈りはもちろん、容姿や服装、行動もイスラムの信仰に則っている。10代とまだ若いのにも関わらず、彼女の周りの人を思いやる行動や落ち着いている姿に、日々学ぶことがたくさんあった。そんな彼女にこの悩みを相談したところ、彼女はこんなアドバイズをしてくれた。

『始めはみんな同じような不安をもっている。でも始めから完璧な人なんていない。自分の気持ちがムスリムになるのには十分じゃないと思っているかもしれないけれど、愛している人のためにムスリムになるという行動で十分その理由となる。改宗してから少しずつ自分のできることから始めていけばいい。』

この彼女の言葉に救われ、それだったら私もできるんじゃないかと思うことができ、改宗の決心をした。

心が決まった後は、もう待ったなし。

ルワンダではシャハーダと言われる信仰告白を行うことでムスリムに入信することができる。ムスリムの前で『アッラーフ(神)の他に神はなし。ムハンマドはアッラーフの使徒である。』とアラビア語で唱えることが最低条件となる。信仰心の強い知り合いのムスリムの立会いをお願いをして、宣言をし、その瞬間からムスリムとなった。

初めは実感はそんなになかったが、その日から結婚式までの間に少しずつヒジャーブ(スカーフ)をしたり、服装を気にかけていくことで、ムスリムの妻となったんだと実感していった。

無事、改宗をした後はイスラム教としての結婚の契約のための儀式の準備だ。ルワンダにはルワンダ・ムスリム・コミュニティという団体が存在し、その団体に婚姻契約の申請を行う。私たちが住んでいる地域ニャミランボはルワンダでも一番ムスリムが多く住んでおり、本部のモスクがある地域。本来はこの婚姻契約の申請を行う場合、いろいろと審査が行われ、簡単に行かない場合も多いと彼から聞いていたが、彼の家族からこちらの団体につながりのある友人に間を取り持ってもらったことで、申請までスムーズに行うことができた。また私がルワンダの現地語が話せることで、とても喜ばれそれも助けとなって、問題なく祝福してもらえた。

そして儀式の当日。モスクで行う場合もあるが、私たちは小さい息子もいるため自宅で行なった。ルワンダではこの儀式はインドア(スワヒリ語)と呼ばれ、イスラム教の導師イマーム、二人の男性の証人、私の父の代わりの男性(ルワンダで行い父不在のため)、彼と私が契約書に婚姻に関する署名を行う。

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婚姻契約書への署名(筆者撮影)

儀式には彼の家族・親族が参加した。またインフワーノと呼ばれる新婦に支払われる新郎の持参金もこの契約書に記載され、儀式の間に渡される。

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インフワーノの贈呈(筆者撮影)

日本の結婚式として知っていることもそんなに多くはないが、それでもそれと比べて異なる部分やまた似ている部分もあって、とても興味深かった。また儀式の中で、彼と私に対してこれからの結婚生活のアドバイスもしてくださり、とても心にささったのを覚えている。

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婚姻儀式の様子(筆者撮影)

こんな経緯で無事、イスラム教としての結婚が成立し夫婦となった。次回はルワンダでの婚姻の手続きやお披露目についてお話ししたいと思う。

 

Profile

著者プロフィール
大江里佳

ルワンダキガリ在住。2014年に青年海外協力隊としてルワンダに渡ったことをきっかけに、この土地の人々の生きる力と地域の強い結びつきに惹かれる。帰国後も単独でルワンダに戻り、現地NPO職員を経て、2019年に現地でコンサルタント・現地語通訳等の会社を起業。一方で、現地アフロダンスチームに所属しダンス活動も行う。2018年から同棲を始めたルワンダ人パートナーとの間に子を授かり、2020年に出産。現在家族3人でキガリで暮す。

Webサイト: URUZIGANGO
Twitter: @satoka817

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