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シリコンバレーと起業家

内藤聡|アメリカ

米国新政権によるシリコンバレーのビザの影響

──シリコンバレーのテック企業は給与が高いことで有名で、それを夢見ている人も多いのかなと思うのですが、一方リモートの場合、給与は現地水準に合わせるという話もありここはどのようにお考えですか。

内藤:たしかにサンフランシスコやベイエリアの給与はすごく高いというイメージですが、給与と同じく生活費や税金も高いので、特に家庭を持っている人からするとそんなに良い暮らしはできていないんじゃないかと思います。

他の地域から働くと給与水準は下がるかもしれませんが、とは言っても他の企業もグローバルで優秀な人材に長く働いて欲しいと考えている以上、給与やオファーの内容で競争をするので、その地域で高い水準の給与をオファーすることに変わりはないと思います。そう言う点では、FacebookやMicrosoftにリモートで雇用される従業員は、どこにいても良い暮らしはできるのではないでしょうか。

──以前Anyplaceはチームがフルリモートで働いているお伺いしたのですが、時差や採用周りで大変な部分はあったりしますか。

弊社Anyplaceはパンデミック前からフルリモートで働いているので、コロナ前後で大きな変化は特にありませんでしたが、それでもやはり時差は意識せざるを得ません。ただ、オペレーション側の従業員は北米のタイムゾーンにいて、エンジニアはヨーロッパ圏にいるので、部署同士はほぼ同じタイムゾーンで仕事ができています。全社ミーティングは月に一度の頻度なので、その時には全員の時間を合わせて集まっています。

今後社員の数が増えて異なるタイムゾーンで働く人数が増えた時のために、GitLabというコロナ前からフルリモートで全社員が働いていて、会社の時価総額が3000億円近くある会社を参考にしています。彼らは同期のミーティングをしなくてもいいような、非同期で時差のあるチーム間でコミュニケーションを取れるやり方を導入しているみたいなのですが、具体的な詳細までは公開されていないので、弊社でも色々と試行錯誤やリサーチをして、今後の規模拡大に備えた非同期のコミュニケーション方法を模索しています。そういう点では、非同期でコミュニケーションを取ることを前提としたプロダクトはスタートアップのアイデアとしてチャンスかもしれません。

個人的に初期のチームは時差がなくて対面で過ごす時間が多い方が良いのかなとは思いますが、会社が大きくなっていくにつれてシステマチックにできる部分はそうしていきたいですし、世界中から優秀な人材を惹きつけたいのであれば、時差にストレスなく働ける環境にするべきです。例えば、夜中の12時に頻繁にミーティングをする必要がある環境は、従業員にとって持続可能ではないので。

リモートの採用に関していうと、税制や福利厚生は国によって全然違うので、それに一つ一つ対応するのがすごく大変です。このあたりはRemoteDeelなどのHRまわりのSaaSのスタートアップが出てきていて、これらを使うと、例えば「カナダで採用するならこういう税金がかかって、こういう福利厚生が必要で、保険ならこういうものが適応できます」といったことをダッシュボードから簡単に選択できるようになるので、現地の採用の知識がなくてもすぐに採用ができてすごく便利みたいです。こういったプロダクトは今後リモートワークが浸透するにあたってニーズが更に高まるだろうなと思っています。

──今後、仮にサンフランシスコ・ベイエリアで会社を経営していきたいという場合には、移民起業家はどのような流れで移住して起業していくのが良いと思いますか。

私は専門家ではないので、詳しいことは移民弁護士に聞いてもらいたいのですが、基本的には日本人がシリコンバレーで起業する場合は、E2ビザを取得するという流れは今後も変わらないと思います。E2ビザを取得するための新しい基準は、新政権に変わってからでないと分かりませんし、相談する弁護士によっても言うことが違うと思いますが、オバマ政権時の水準に近いレベルまで下がるのではないかと思います。

 

Profile

著者プロフィール
内藤聡

Anyplace共同創業者兼CEO。大学卒業後に渡米。サンフランシスコで、いくつかの事業に失敗後、ホテル賃貸サービスのAnyplaceをローンチ。ウーバーの初期投資家であるジェイソン・カラカニス氏から投資を受ける。ブログ『シリコンバレーからよろしく』。@sili_yoro

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