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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

一ヶ月続くコロンビア政府に対する抗議デモ 収束見えず

©️YouTube - Cesar Pejendiño. Carnaval de negros y blancos.

コロンビアの政府に対する抗議デモはもう1ヶ月も続いています。

NGO人権団体のTembloresによると、4月28日6時から5月24日23時の時点で、警察による暴力に関して以下のような情報が公開されています。

警察の暴力による死者 43人(うち18件は詳細調査中)

警察による暴力件数 3155件

警察による体罰件数 955件

デモ参加者の不当逮捕件数1388件

警察が銃器を発砲した件数 165件

毎日目を通しきれない数の新しい情報が飛び交い、どの情報を信じ何を支持するかでコロンビア国民が真っ二つに分かれてしまっているような気がします。中にはデモに対する意見の食い違いで家族と言い合いになったり友人と絶縁してしまったりするケースもあるようで、国全体がピリピリしている状態が続いています。

デモが始まってから、税制改革の取り下げ、財務大臣の辞任、貧困層の学費一部無料化、保険制度改革の取り下げを実現しましたが、抗議者の要求ははっきりしているものの多岐に渡るため、彼らと政府が折り合いをつけるにはまだまだ時間がかかるような気がします。

以前のブログでコロンビアの警察について書いたことありますが、コロンビアの警察は国防省に属しているので、彼らにとって政府に抗議する人たちは「敵」となり攻撃の対象になります。政府は暴徒を抑えつけるために暴力を使い、それに対して国民が暴力で応戦。「せーの」で双方が手を引くことができれば今回のデモで1番の問題になっている暴力行為は落ち着くのかもしれませんがそんなことはもっぱら不可能なので、今の現状がどのように元通りに戻るのか私には全く想像できません。

 

道路封鎖。反対?賛成?

今コロンビアでは至る所で道路の封鎖が行われています。

抗議のための封鎖の場合もあれば、どさくさに紛れて道路を塞ぎ「通りたかったら金を払え」と封鎖ビジネスをしている例も多く報告されています。

理由はともあれ各地で道が塞がっているので、一部で食料や医薬品の流通が滞り市民の生活に様々な影響が出ており、都心部に住む人を中心に封鎖行為に対する抗議の声が上がり始めています。

今回のデモが最も過激化している街の一つであるカリでは、5月25日に道路封鎖と暴徒に抗議するための「沈黙のデモ」が行われました。政府への抗議デモが将来を心配する左派の若者たちが中心になっている一方で、この沈黙のデモでは今までと変わらない生活を取り戻したい右派の中年層が多く参加していたような印象があります。

参加者の多くは日常を壊すデモ隊を抑えつける警察をヒーローと称え、デモ行進をしながら彼らに感謝の気持ちを示す場面も見られました。

カリに住む私の友人はこれらの人々を「今このコロンビアを動している典型的な人たち。鈍感で無知で自己中心的。」と表現し、封鎖による抗議については「なぜ封鎖をしているのか、政府は彼らに少しは耳を貸すべきだ」と話していました。

これらの道路の封鎖による経済的な損失は計り知れず、失業率を押し上げる原因にもなり、正直誰も得をしない方法のように感じますが、封鎖をしている多くの抗議者は職もないお金もないと言うもはや「失うものは何もない」人たち。文字通り生きるか死ぬかの窮地の状態に立たされている彼らとの対立はまだ続きそうです。

 

ブエナベントゥーラ

ブエナベントゥーラとは太平洋に面した都市で、コロンビアの貿易を担う重要な都市の一つです。

そのブエナベントゥーラで生まれたばかりの赤ちゃんが、カリの病院に転送される途中でデモ隊の道路封鎖に遭遇。デモ隊が救急車を通すことを許可せず赤ちゃんはその場で亡くなってしまうという悲しいニュースが今月24日に話題になりました。(亡くなった経緯など詳細については様々議論になっています)

このようなことは決してあってはならないことですし、このニュースによって封鎖抗議に反対する国民が増えたことは想像できますが、このニュースに対して「そもそもブエナベントゥーラにきちんとした医療機関がないことが問題だ」と唱える人もいます。そんなことを今になって言っても赤ちゃんの命は返ってはきませんが、確かにこのようなコロンビアの貧困格差には確かに問題があると思います。

ブエナベントゥーラは麻薬組織や武装組織の巣になっており、治安が悪い都市としても有名です。また、貧困率も高く水や電気も通っていなければ教育も受けられないような人がたくさん住んでいる場所でもあります。

↑ブエナベントゥーラの村の様子

政府が経済を回すことや都市を発展させることに一生懸命になっている裏で、お金を出すほどの価値がないと判断され見捨てられた田舎では、子供は教育を受けれず、病院はなく、道は舗装されずと、政府による目に見えない「封鎖」に苦しんでいる人がたくさんいることは避けられない事実なのではないでしょうか。

今回の道路封鎖による抗議はコロンビアの経済、将来に打撃を与える行為であることは明らかですが、この封鎖を解除しろというのであれば政府側もこれらの目に見えない封鎖についてこれを機に考えてみてはどうかと私は思うのです。

↑道を整備されないがために救急車や物資を運ぶトラックが立ち往生している様子。雨季は私が住んでいる所も似たようなことが起きます。

 

人権団体の入国を一時拒否

副大統領兼外交官であるマルタ・ルシア・ラミレス氏はCIDH(米州人権委員会)のコロンビアで行われている警察による暴力を調査する目的での訪問の可能性に対し、「全ての訪問者は歓迎だが、一つ一つの問題について自国の機関が検証を終えるまで、今は待った方が良いと我々は考えている」と入国拒否とも取れるコメントをし波紋を呼びました。

隣国ベネズエラが人権団体の入国を拒否したときは「独裁政権だ」と非難していたコロンビアの大統領と副大統領ですが、ここに来てベネズエラと同じような措置をとることを発表した政府に、国民から更なる批判の声が寄せられました。

↑コロンビア人コメディアンが作成した動画「人権団体?あら〜今は入れてあげられないのよぉ〜。今すごく家中がゴチャゴチャでね。別の日だったらたぶn...あ、台所ね。あの鍋の蓋は開けないで欲しいの、腐ったリンゴ(日本でいう腐ったミカン)がたくさん入ってるから。棚の埃も払わなくちゃ。(責任者を辞任させるという意味)煙のカーテンもかけなきゃいけないわ。(見られたくない部分を隠すという意味)下駄箱(極右の軍司令官)も超きたないの。あとジーンズがなくなっちゃったのよね。(デモ隊の行方不明者たち)ほら、ここで無くなるといつどこで発見されるか分からないって知ってるでしょ?(一部の行方不明者たちが後日遺体で発見されている)ベッドのカバーは取らないでね、白いシーツも染みだらけ(血まみれ)だから洗わなきゃいけないの。でも問題ないわ、私って銃が大好きなのよね。」

この出来事から2日後、囲み取材にて副大統領は入国拒否の発言を否定し、「私たちはもう彼らを招待しました。委員会の要望で6月29日と決定しています。もしもっと早く訪問していただいても問題はありません。」と発言を一転しました。

 

暴力と分断

この一ヶ月間、SNSを開けば目も覆いたくなるような暴力的な動画や画像が溢れかえっているような状態が続いています。何か事件が起これば、右派と左派で責任を押し付け合うようにお互いを汚い言葉で罵り合っており、同じ国民同士が衝突し傷つけあっている姿を毎日見ることで精神的に参ってしまっている国民もたくさんいるのが現状です。

デモ隊はじめ現政権に不満を感じている人の政府やメディアに対する不信感は根強く、これから重ねられていくであろう対話によって果たしてこの混乱の出口が見えてくるのか否か、私にはただ見守ることしかできません。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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