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悠久のメソポタミア、イラクでの日々から

牧野アンドレ|イラク

エルビル・チャリティマラソンに参加

エルビルマラソンのスタート地点の様子 ©筆者撮影

先週土曜日、エルビル市内で「エルビルマラソン」が開催されました。

こちらのマラソンはチャリティが目的で、「マラソン」と銘打っていながら3kmだけの初心者でも走れるコースでした。

目的はがん患者への連帯と支援で、参加費はゴール場所となったナナカリ病院という白血病などの血液疾患を治療する専門病院への寄付となりました。

私もここでの主な仕事の一つがイラクにおける小児がん支援で、ゴールとなったナナカリ病院の敷地内に所属団体の事務所が入っています。

そのため、私やイラク人の同僚たちは病院からの招待枠で参加させてもらいました。

  

渋滞の道路を走る快感と大気汚染と

当日はスタート地点へ向かうためにコースとなる場所を30分ほど前に車で通っていたのですが、驚くことに30分前でも全く車両規制もされることなく、普通に車が往来していました。

日本でマラソン大会なんかを見たことあるのですが、基本1時間以上前には全て交通規制が敷かれていたと記憶していたので「今日は本当に走るの?」と同僚につい冗談交じりに聞いてしまいました。

さて、ゴール地点にある事務所内で着替えを済ませスタート地点であるモールの前まで移動することに。

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参加者に配られるTシャツと帽子 ©筆者撮影

この時点でスタート20分前(スタート時間は10時)でけっこうギリギリだったのですが、同僚が「車で行くと帰りに取りに戻るのが面倒だから、歩こう」と提案。ショートカットしながらも少し速足でスタート地点に向かいました。

3kmのコースをショートカットしているとはいえ逆走しているので、20分で着けるのかと不安に思っていたところ、案の定スタート地点が見えてきた時にはとっくに10時を過ぎていました。しかし同僚たちは全く動じず。。

最初からスタート時間なんて守られないと分かっていたといった表情で飄々と歩いていました。もうエルビルに2年以上住んでいますが、まだまだ現地には溶け込めていないと少し反省。

そうして10時5分過ぎにスタート地点のモール前に到着。

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©筆者撮影

応募は1,000人を越していると聞いていたのですが、当日実際にいたのは700-800人といったところでしょうか。

中には学生・地元の私立の中高生もいて、コロナ禍を経て久しぶりにこんなに大勢の人たちを見ました。また地元の人たちに交じって外国人もたくさん参加しており、エルビルに人々が戻ってきたのだなーと嬉しくなりました。

このチャリティマラソンは3年前に始まったそうですが、昨年はコロナ禍で中止に。なので今回2年ぶりの開催となりました。

そして、10時10分を過ぎた頃、アナウンスがあり突如スタート!

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©筆者撮影

競争枠で出ているアスリートのお兄さんたちが颯爽と飛び出し、それに続いて学生たちも全力で走り始めました。

私たちは最後尾の方でしたので、前が出たのと同時にゆっくりスタート。

最初の全力疾走で疲れ果てた生徒たちをゆっくりと追い抜きながら、各々のペースで走っていました。

事務所が近いこともありいつも車で通っている場所ではあったのですが、まったく車が通らず人だけで溢れている大通りを見るのはなんとも不思議な気分でした。

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©筆者撮影

上の写真、対向車線は車で埋まっているのが分かりますでしょうか。週末である土曜日でも車通りは多く、平日はさらに多くの車が走っています。

イラクは鉄道もなく、第三の都市であるエルビルでも公共のバスはほとんど通っていません。車が生活に欠かせない存在であることが分かるかと思います。

ちなみにこの道はエルビル市を南に真っ直ぐ通る道路で、そのまま進むとクルド自治区を抜け中央政府の管理下にあるキルクークという都市に着きます。

3kmということで、日ごろジョギングをしていない私でも余裕だろうと高を括っていたのですが、走ってきてその予想が見事に裏切られたことが分かりました。

問題は排ガスとダストです。雨季に入ったとはいえ今年はまだ雨がほとんど降っておらず、空気中には車の排気ガスと郊外の荒野からの砂が溜まりきっています。その中でのマラソンですから、今までにない苦しさと戦いながらのジョギングでした。

のどにイガイガを感じながらも最後のコーナーを曲がりゴールが近づいてきました。

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©筆者撮影

走りながらモスクを見るという、意外と初めての体験。いつも車で通る道が走るとこんなにも遠く感じるのかと、少し参加を後悔しながら最後の力を振り絞って走っていました。

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©筆者撮影

そしてゴールへ。

この頃にはもう満身創痍。よく写真を撮っていたなと今では思います。

私は3kmを16分ほどで完走。運動不足を痛感したので、この機会に縄跳びトレーニングを再開しようと決意しました。

後からゴールした同僚たちとも合流し、表彰式を遠目から見ていました。

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©筆者撮影

いつも見慣れている病院の中庭が人で溢れているのもなんだか変な気分。

参加者にはエルビル県知事やクルド自治政府の保健大臣なんかもいて、意外と政府高官もいたのだなと思いました。

表彰式も終わり、同僚たちと中庭に座ってコーヒーを飲みながら雑談をしていました。

11月も終わりとはいえ、エルビルは日中はまだ20℃近い気温。秋の太陽を全身に浴びながら、同僚たちと「何で一年中こんな気持ちいい気温じゃないんだろうねー」なんかとたわいのない話していました。

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©筆者撮影

同僚たちと別れた後は同業者でマラソンにも参加してくれた日本人の友人と一緒にクルド風ケバブを食べに街へ。

身体も動かし、お腹も満たされ、満足な週末となりました。

  

 

Profile

著者プロフィール
牧野アンドレ

イラク・アルビル在住のNGO職員。静岡県浜松市出身。日独ハーフ。2015年にドイツで「難民危機」を目撃し、人道支援を志す。これまでにギリシャ、ヨルダン、日本などで人道支援・難民支援の現場を経験。サセックス大学移民学修士。

個人ブログ:Co-魂ブログ

Twitter:@andre_makino

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