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トルコから贈る千夜一夜物語

木村菜穂子|トルコ

医療ツーリズムの「メッカ」トルコは夏の本格的な観光シーズンを前に着々と準備を進める

コロナ禍のメディカルツーリズム

メディカルツーリズムに力を入れてきたトルコにとって、コロナによる打撃は観光業界にとどまらず、医療業界にも及びます。実際、観光による 2020 年の収益は前年と比べて 65.1% の減少、観光客の数は 71.7% の減少でした(こちらの記事を参照)。とはいえトルコはコロナ禍でも早々に国を全面的に開いた国の 1 つ。各国が鎖国状態に陥る中でも、トルコはツーリストに対してほぼ全面的に開かれていました。週末の外出制限もツーリストには適用されません。

コロナ禍でも植毛手術を受けに各国から人々が訪れることができます。が、もちろんその数はコロナ前の比ではありません。トルコ自体は開かれていても、クライアント側の国の規制が多くて出国できない (しにくい) というのが現状かと思います。観光客が激減している今なら、腕の確かな医師に手術をしてもらえるチャンスと言えるかもしれません。とはいえ、トルコの観光業界はすでに回復の兆しを見せています。

2021 年はトルコの観光業界の回復と飛躍の年

トルコに限らず、世界中で観光業界はどん底の状態です。そんな中、トルコは 2021 年を回復と飛躍の年と位置付け、早くから戦略を練ってきました。気持ちがはやりすぎたせいか、2021 年の 3 月にトルコ文化観光省が制作したプロモーションビデオは散々なバッシングを受けました。このビデオ、現在は削除されています。

トルコ全土でコロナによるロックダウンが実施される中、このプロモーションビデオではトルコがいかに安全な国かをアピールしていて、ビデオに出てくる観光業に携わる人たちはみな「ワクチン接種済み」のマスクを着けています。プロモーションビデオの全体は削除されていて見ることができませんが、下の Bloomberg のチャンネルでビデオの一部が使われています。

Youtube - Bloomberg のチャンネル

このプロモーションビデオに対して、ロックダウン中のトルコ人たちからは「現実と違う!」「外国人にヘコヘコしている!」と怒りの声が多数寄せられたようです。その後、4 月と 5 月にトルコは全面的なロックダウンにまで突入しましたので(以前の記事をご参照ください)、確かにこのビデオの内容は時期尚早だったのでしょう。でも、トルコ政府の意気込みは伝わってきました。

現在トルコでは、夏の本格的な観光シーズンを前に、観光業に携わる人たちに優先的にワクチン接種が進められています。航空会社のキャビンクルー、ガイド、ドライバーなどなど約 110 万人が対象です。

実は、2021 年 4 月までの 4 か月間で既に去年の 2 倍にあたる観光客がトルコを訪れています(こちらの記事を参照)。コロナの第 2 派、第 3 波に襲われながらも、です。ですから既に回復の兆しがありありと見て取れます。2021 年中にトルコでは合計で 3000 万人の観光客を誘致することを目標にしています。

良いことづくめではないのが現実

さて、話を医療植毛に戻します。今回の記事ではセールスポイントをたくさん書きましたが、もちろん手術というのは 100% ではありません。その人のもともとの髪の毛の質や頭皮の環境にも影響されるかと思います。さらにとにかく安い医療植毛を...という思いで安い値段のクリニックを選んだ人の中には、満足のいく結果を得られなかったという人もいるようです。

トルコでは 2000 ドル前後で施術を行うクリニックもあるようですが、これは 2021 年の現在では安すぎという部類に入るかもしれません。3000 - 3500ドルの範囲なら高額な部類に入るようですが、その分、腕は確かだと言われています。安いというだけの理由で飛びつくと、後から後悔することになるかもしれません。「安かろう悪かろう」というのはどの国でも同じかと思います。クリニックや施術方法を比較検討して、クライアント側が賢くなることがもちろん必要だと思います。

メディカルツーリズムのトルコ側のメリット

メディカルツーリズムでトルコ国内に外貨が大量に入ってくるという利点にとどまらず、別の利点もあります。トルコという国にもともとは関心がなく、単に医療目的でトルコに来る人も一定数いると思います。そんな人でも、来たからにはイスタンブール市内を多少は観光することでしょう。あるいは少なくともレストランで食事はします。

そしてトルコの魅力に触れて、「あれ、けっこういい国かも」と目からうろこの人も多いと思います。中東といえば「テロ、戦争」というマイナスのイメージが付きまとうかもしれませんが、実際のトルコは物価が安く、人々がフレンドリーで、食事が美味しく、街がきれいで、歴史がある。

iStock-458012057.jpgi-Stock : フォトジェニックなイスタンブール

ですからメディカルツーリズムのために来た人が、今度は純粋な観光目的でトルコに戻ってくるということも期待できるわけです。また、メディカルツーリズムを体験した人が自国に帰って周りの人や Youtube などのソーシャルメディアを通じてトルコでの様子を宣伝することで、口コミという形でトルコ観光に弾みがつくという利点もあります。

居住者もプチ・メディカルツーリズム体験

私はトルコに住んで 4 年になります。もはやツーリストではないものの、プチ・メディカルツーリズムを体験しています。トルコでまず体験したのは、額と眉間のシワ改善のためのボトックス 1 回。これも日本でなら 3 万から 6 万円するところが 8000 円ほどで済みました。医師の腕も確かで、半年以上経った今も以前ほどシワが目立たないので、結果にとても満足しています。

そして現在は歯科矯正 (インビザライン矯正) をしています。こちらも日本でなら 100-150 万ほどするところが 30 数万で済みます。さらに、大腸内視鏡検査や婦人科系の検診もトルコで経験済みです。こうした理由で、私もトルコの医療・美容施術を活用させてもらっている一人と言えるかもしれません。

コロナ後をしっかり見据えたトルコ。ぜひ今後も観光に弾みがついてほしいと思っています。

 

Profile

著者プロフィール
木村菜穂子

中東在住歴13年目のツアーコンサルタント/コーディネーター。ヨルダン・レバノンに7年間、ドイツに1年半滞在した後、現在はトルコ在住4年目。メインはシリア難民に関わる活動で、中東で習得したアラビア語(Levantine Arabic)を駆使しながらトルコに住むシリア難民と関わる日々。

公式HP:https://picturesque-jordan.com

ブログ:月の砂漠―ヨルダンからA Wanderer in Wonderland-大和撫子の中東放浪記

Eメール:naoko_kimura[at]picturesque-jordan.com

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