World Voice

トルコから贈る千夜一夜物語

木村菜穂子|トルコ

猫の猫による猫のための街 ‐ The city of the cats, by the cats, for the cats

イスタンブール以外の都市での取り組み

私が現在メインで住んでいるトルコ南部のガジアンテプも動物に優しい街です。県としては「animal friendly city (動物に優しい街)」をスローガンにしています。「生き物保護課」(トルコ語では Gaziantep Büyükşehir Belediyesi Doğal Hayatı Koruma Daire Başkanlığı) があり、県が路上の犬や猫たちの面倒を見ています。

2016年にガジアンテプではトルコで初の動物専用の救急車が導入されました。

ガジアンテプの動物用の救急車.JPG ガジアンテプ県の公式ホームページより

ガジアンテプ県のホームページ上での2021 年 4 月 21 日付けの記事では、犬・猫それぞれのおうちが市内の色々な場所 (特に公園内) に新しく設置されていく様子が報告されています。ガジアンテプには 2021 年 4 月の時点で 250 の餌やり場所が設置されており、餌やりのために職員が定期的に訪れます。

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ガジアンテプにある猫の家 (餌やりスポット) - 筆者撮影

また県としては、県民に呼びかけて、路上で生活する犬と猫のために少しの餌と水を置いてくれるように啓蒙運動も続けています。路上はこうした犬や猫たちの生活の場であり、彼らが安心して住めるように行政と市民が一体となって行動することを目標としています。

犬猫に関する要人の発言

イスタンブールの Bahçelievler 地区の区長 Hakan Bahadır 氏は、犬猫たちに快適な家と餌を提供する点で率先しています。その区長の言葉

Sonuçta onlarda canlı ve bizim hayvanlara sahip çıkmamız lazım. Biz, kedi ve köpeklerimizi, 'sokağımızın hayvanı değil, sokağımızın can dostu' olmaları için çalışıyoruz.

結局のところ、彼ら (路上の猫や犬) も生き物であり、保護する必要があります。猫や犬たちは単なる「路上で生きている動物」としてではなく、「路上で生きている私たちの友達」として扱われてほしいのです。

このブログ記事の前半でご紹介した映画監督トルンさんへのインタビューがオンライン版の朝日新聞の Globe+ に載せられています。現在でもトルコでは、「欧米並みの」路上環境 (つまり犬や猫が一切いない環境) を作ろうとする試みがあるそうで、路上猫を愛する人々とバトルが繰り広げられているとのこと。このトルン監督の次の言葉が胸に響きました。

トルコは他国にならおうとしたりせず、独自性を大事にすべき。違いを大切にしてゆかなければならない。猫はその象徴。

コロナ禍における路上生活の犬・猫のお世話

コロナ前、犬や猫たちはレストランやカフェでの余り物のおこぼれに預かったり、お客さんからおすそ分けをもらったり...餌に困ることは少なかったと思われます。でもコロナでロックダウンが続き、レストランやカフェは休業し、道路から人々が消えました。真っ先に影響を受けるのは、路上で生活する犬と猫たち。

自治体ではコロナ中に、餌やりや健康状態の見回りにより力を入れています。そしてもちろん、自治体だけが奮闘しているわけではありません。多くのトルコ人たちが外出時に猫の餌を持って出かけ、公園など猫がいそうなところに餌を置いていきます。猫は体のサイズが小さく、食べるといっても量に限りがありますので、餌やりも負担なくできます。私も外出のたびに餌を持って出かけています。でも犬に関しては、トルコの犬はほぼすべて大型犬。ですから犬の餌については自治体に頼るところが大きいのではないかと思います。

トルコで見かけた犬の写真

私自身が筋金入りの猫派なので、勢い猫の写真ばかりになります。でも読者さんの中には犬好きの方も多いはず。フェアにするために、犬の写真も1枚載せたいと思います。ドラッグストアの入り口にデンと横たわって居眠りをするワンコと、その奥にちまっと丸まるニャンコ。お店に入る時には、この犬と猫を踏まないように細心の注意をしつつ...です。

イズミルの猫と犬.JPG

イズミルのドラッグストアでの犬と猫 - 筆者撮影

路上の犬・猫との共存はトルコの文化

先ほども少し触れましたが、トルコでは道路から犬や猫を全て追い払ってしまおうという動きもあるようです。今のところ、動物愛護団体や動物好きなトルコ人たちの反対で、それは実現していません。私としては、今後もトルコのこのスタイルを貫いてほしい。犬や猫が自由に路上で生活する...しかも、薄汚れたみすぼらしい姿ではなく、こざっぱりとした世話の行き届いた犬猫たち。人間がフラリとカフェに立ち寄るように、犬や猫もカフェにフラリと立ち寄りに来る。これはトルコが誇れる文化だと思います。

先ほど書いたように、トルコでは犬や猫の殺処分はなされてないと言われています。でも実際のところは分かりません。インターネット上では、トルコでも殺処分が行われてる! なんていう暴露記事もあります。真相は分かりません。でも大切なのは、現実としてトルコではお外で暮らす犬や猫が人間と一緒に共存しているという紛れもない事実。そして、道路の至る所に餌や水が置いてあるという事実。

こういう優しさをつなぐ行為は、人を豊かにすると思います。この優しさに触れると、トルコ人への敬意が深まります。是非とも、この文化を今後も世代から世代へと継承していってほしいと思います。

 

Profile

著者プロフィール
木村菜穂子

中東在住歴13年目のツアーコンサルタント/コーディネーター。ヨルダン・レバノンに7年間、ドイツに1年半滞在した後、現在はトルコ在住4年目。メインはシリア難民に関わる活動で、中東で習得したアラビア語(Levantine Arabic)を駆使しながらトルコに住むシリア難民と関わる日々。

公式HP:https://picturesque-jordan.com

ブログ:月の砂漠―ヨルダンからA Wanderer in Wonderland-大和撫子の中東放浪記

Eメール:naoko_kimura[at]picturesque-jordan.com

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