最新記事

フェイクニュース

大統領選はデマとの闘い フィリピンの選挙、「主戦場」はSNS

2022年4月30日(土)16時30分
マニラで開かれた大統領選候補者の集会に参加した人々

ある日曜日、マニラのアッシジ聖フランシスコ教会ではミサが行われていた。信徒たちがひざまずいて礼拝する中、司祭は、大統領選挙が安全で平穏かつ誠実なものになるよう祈りを捧げた。写真は23日、マニラで開かれた大統領選候補者の集会に参加した人々(2022年 ロイター/Lisa Marie David)

ある日曜日、マニラのアッシジ聖フランシスコ教会ではミサが行われていた。信徒たちがひざまずいて礼拝する中、司祭は、大統領選挙が安全で平穏かつ誠実なものになるよう祈りを捧げた。

タガログ語か英語で唱えられた祈りの中で、司祭は「不誠実や嘘、すべての真実の歪曲」からの解放も求めた。

大統領及び副大統領、上院議員と下院のうち300議席、さらに地方議会1万8000議席を決める5月9日の選挙は、非常に大きな意味を持つと見られている。大統領選挙は、独裁政権を敷いた故マルコス元大統領の長男フェルディナンド・マルコス氏と、現職の副大統領レニー・ロブレド氏が争う構図だ。

年金生活者のアンジェリーク・メンドーサさん(61)にとって、教会の指導者たちが偽情報との闘いに参加することは、至極もっともな事の様に思える。2016年の選挙前と同様、市民は今回選挙でもソーシャルメディアに溢れる虚偽の情報にさらされている。

「司祭たちがフェイクニュースの危険性ばかり説くのでウンザリしている人もいるが、私は違う。私たちの精神性に害をもたらすものに警告を発するのは彼らの道徳的な責務だから」。聖フランシスコ教会でのミサを終えたたメンドーサさんはこう話した。

フィリピンのカトリック教徒は約8500万人で、国民の8割を占める。教会が発するメッセージは大きな影響力を持つ。

その影響力は、唯一の女性大統領候補であるロブレド氏にとっても重要だ。彼女は最有力候補のマルコス氏にリードを許しており、選挙運動では司祭たちの支援を求めてきた。

ロブレド氏はセブ市での記者会見で、「デマと戦うという意味で、カトリック教会には社会に根ざした仕組みがある」と語った。

「とはいえ、私の呼びかけはカトリック教会だけでなく、すべての人たちに向けたものだ。候補者である私のみならず、すべての人たちにとっての問題だ。私たちがデマを阻止するために手を尽くさなければ、選挙は嘘に基づくものになってしまう。最悪の事態は、私が負けることではない。デマの力で他の候補者が当選してしまうことだ」と、ロブレド氏は訴えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フォード、第2四半期利益が予想上回る ハイブリッド

ビジネス

NY外為市場=ドル一時155円台前半、介入の兆候を

ワールド

英独首脳、自走砲の共同開発で合意 ウクライナ支援に

ビジネス

米国株式市場=S&P上昇、好業績に期待 利回り上昇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中