最新記事

ウクライナ情勢

米中首脳会談は双方の主張に隔たり 習近平「ウクライナ、一刻も早く終結を」 バイデン「ロ支援なら結果伴う」

2022年3月19日(土)09時59分
中国の習近平国家主席

中国の習近平国家主席は18日、バイデン米大統領に対し、ウクライナで起きているような紛争や対立は誰の利益にもならないという考えを伝えた(2022年 ロイター/arlos García Rawlins)

中国の習近平国家主席は18日、バイデン米大統領とのオンライン会談で、ロシアとウクライナによる戦争を一刻も早く終結すべきと強調した上で、米国など北大西洋条約機構(NATO)加盟国にロシアとの対話を呼び掛けた。ウクライナに侵攻したロシアに対する非難の言葉は口にしなかった。

一方、バイデン大統領は、中国がロシアに物資的支援を行った場合、結果を伴うと警告した。

会談は2時間近くに及んだ。

中国の国営メディアや外務省の発表によると、習主席は、国家同士の関係が対立の段階まで進むことはできず、紛争や対立は誰の利益にもならないと指摘。「ウクライナ危機は私たちが見たくないものだ」と述べた。

さらに「今、最優先すべきことは対話と交渉を継続すること」であり、「民間人の犠牲を避けながら人道的危機を防ぎ、戦闘を停止し、できるだけ早く戦争を終わらせることだ」と強調。全ての当事者がロシアとウクライナの対話と交渉を共同で支援するとともに、米国およびNATOがロシアと協議を行うことで、ウクライナ危機の「核心」問題やロシア・ウクライナ双方の安全保障上の懸念を解決すべきと訴えた。

中国と米国は二国間関係を正しい軌道に導かなければならず、双方は相応の国際的責任を負い、世界平和のために努力しなければならないとした。

同時に、制裁措置で引き起こされる結果を警告。「広範囲に及ぶ無差別な制裁は国民を苦しめるだけだ。一段とエスカレートすれば、世界の経済、貿易、金融、エネルギー、食料、産業、供給網に対する深刻な危機が引き起こされる。すでに軟調になっている世界経済が機能不全に陥り、取り返しのつかない損失がもたらされる」と述べた。

台湾問題については、米中関係への悪影響を避けるために適切に処理される必要があると主張。中国は、台湾を必要であれば力づくで元に戻すべき離脱した省と見なしており、米国との関係において最も敏感かつ重要な問題であると明言した。

また「米国では一部の人が台湾の独立派に誤ったシグナルを送っており、非常に危険。もし台湾問題が適切に処理されなければ、両国関係に破壊的な影響をもたらすだろう」とした。

<ロシア支援なら結果伴う>

米ホワイトハウスによると、バイデン大統領は習主席との電話会談で、ウクライナの都市や市民を攻撃するロシアに中国が物質的支援を提供した場合の「意味と結果」について説明。「バイデン大統領は、危機を外交的に解決することへの支持を強調したほか、両国間の競争を管理するために、開かれたコミュニケーションを維持することの重要性で合意」した。

ある米政府高官は、両首脳の会話が「直接的かつ内容があり、詳細に及んだ」と評価した上で、バイデン氏は、中国がロシアに物質的支援を提供するとなれば、中国は米国だけでなく広く世界中から相応の影響を受けることになると警告。「中国が今後どのような決断を下すのか、われわれは見守ることになる」と述べた。

ホワイトハウスのサキ報道官は、今回の会談で、ロシアを支援しないよう説得するためのインセンティブについては話し合われなかったと述べた。

サキ報道官は、中国がロシアに物質的支援を提供した場合の「結果」、および米政府が何を「物質的支援」と定義するかについて具体的に明らかにしなかったものの、中国の巨額の貿易が影響を受ける可能性があると示唆。「手段の一つとして当然、制裁措置が挙げられる」と述べた。

その上で、米国はいかなる対応も欧州のパートナー国と共に中国に直接伝達すると語った。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英賃金上昇率、12─2月は前年比6.0% 鈍化続く

ビジネス

出光、富士石油株を追加取得 持分法適用会社に

ワールド

アングル:「すべてを失った」避難民850万人、スー

ビジネス

日経平均は大幅続落、米金利上昇や中東情勢警戒 「過
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 5

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 6

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 7

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中