最新記事

新型コロナ

「ママ、熱いよ」 コロナ後遺症で煙の匂いが分からない両親を2歳の息子が救う

2022年1月31日(月)16時30分
佐藤太郎

「小さなヒーロー」と称えられるブランドン君 KAYLA DAHL/Facebook

<ダール夫妻は新型コロナ感染症の後遺症による味覚と嗅覚障害から回復していなかった>

1月15日未明(現地時間)にアメリカ・テキサス州アルボードで発生した住宅火災。子育て世代の両親と5人の子供が暮らしていた家庭を大惨事から救ったのはこの家の2歳の息子ブランドン・ダール君だった。

午前4時30分頃、ブランドン君は眠っていた両親の元に行き、母親の足を叩いた。「ママ、熱いよ。ママ、熱い」。咳をしながら懸命に訴えるブランドン君に気づき、後方に火の手が迫っているのを確認した。

220131-us-smallhero01.jpg

燃え盛るダール家 KAYLA DAHL/Facebook

実はこの時、ダール夫妻は新型コロナ感染症の後遺症による味覚と嗅覚障害から回復しておらず、煙の匂いを感じることができなかったのだ。

慌てて他の兄弟を起こし、父親が子供たちを避難させ母親が携帯電話から911に通報した。ブランドン君のおかげで、家が炎に包まれる前に家族全員が無傷で外に出ることができた。設置してからわずか1年の火災報知器は、避難後に初めて鳴ったそうだ。

220131-us-smallhero02.jpg

一家はすべて失ってしまった KAYLA DAHL/Facebook

奇跡に他ならない

報道によると、火元になったのはブランドン君が寝ていた部屋のガスストーブだった。ブランドン君は、どうにかして炎の中をくぐり抜け、両親に近づくことができたという。

一連の避難劇を「数秒のことでした」「奇跡以外のなにものでもありません」と父親は振り返る。「ブランドンは家族全員を救った、私たちの小さなヒーローです」と母親のケイラ。

220131-us-smallhero04.jpg

ブランドン君のおかげで全員が無傷で助かった KAYLA DAHL/Facebook

「ブランドンは神の腕に包まれて炎から守られ、私たち家族全員が外に出られるようにしてくれたのです」

一家は、火災によって6年間の思い出が詰まった住宅、所有していた自動車も含め、すべてを失った。現在は、賃貸住宅に身を寄せながら、有志の友人らの助けのもと寄付を募っている。


【関連記事】
意識障害、感情の希薄化、精神疾患...コロナが「脳」にもたらす後遺症の深刻度
英変異ウイルスに感染した場合の症状の特徴は(英統計局)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアのLNG輸出、今後4年の停滞想定 経済省の悲

ワールド

ブラジル資源大手バーレ、第1四半期純利益9%減 予

ビジネス

韓国LGエナジー、第1四半期は前年比75%営業減益

ワールド

米、ウクライナに長距離ミサイル供与 既に実戦使用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中