最新記事

日本社会

社会への不満はあるが、政治には参加したくない日本の若者たち

2021年12月15日(水)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
選挙投票

日本の20代の総選挙での投票率は3割程度にとどまる bee32/iStock.

<学校では校則で縛られ、異議を申し立てるとろくなことがない......日本人に植え付けられる「出しゃばらない」メンタル>

11月下旬に衆院選が実施された。投票率は55.9%で、戦後で3番目に低い水準だった。年齢層別のデータはまだ公表されていないが、前回(2017年)の結果からすると、20代の投票率は大よそ3割ほどと見られる。

豊かな国・日本では若者は社会への不満を持っていないかというと、そのようなことはない。内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識調査』(2018年)によると、日本の20代で「自国の社会に不満がある」と答えたのは49.3%と半数にもなる。アメリカの33.5%、イギリスの39.5%よりもだいぶ高い。

年功序列の日本では、若者は能力に関係なく低い給与で働かされる。最近ではあまりに安くなって、実家を出ることもできないほどだ。高齢化の進行で税金もガッポリ取られ、自分たちが高齢期になる頃には年金すらもらえない可能性もある。日本の若者が社会に不満を持つのは道理だ。

こうした状況を変える合法的な手段は政治参画だが、日本の若者はその意欲も低い。上記の調査によると、日本の20代の53.7%が「主権者として、国の政策決定に参加したくはない」と答えている。こちらも他国と比較して高い。

社会への不満が高い一方で、政治参画は忌避する。厄介なのはこの2つが重なってしまうことだが、こういう若者は何%いるのか。内閣府調査の個票データによると、2つの設問に有効回答を寄せた日本の20代は680人で、このうち「社会に不満がある」「政策決定に参加したくない」と回答したのは194人、パーセントにすると28.5%(3割弱)となる。<図1>は、日米の調査結果をグラフにしたものだ。

data211215-chart01.jpg

青色が社会に不満、赤色が政治参加忌避の量的規模で、緑色のゾーンが両者の重なりとなる。社会への不満があるものの政策決定には参加したくない割合は、アメリカの20代では9.6%だが、日本ではその3倍の28.5%いる。

内閣府調査の対象は7カ国だが、他国のパーセンテージを示すと韓国が19.7%、イギリスが14.6%、ドイツが12.2%、フランスが18.5%、スウェーデンが17.2%で、日本が最も高くなっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中