最新記事

NAVY SEALS

映画『アメリカン・スナイパー』のネイビー・シールズ狙撃手と上官の、「殺害」プレッシャーの局面

EXTREME OWNERSHIP

2021年10月22日(金)11時45分
ジョッコ・ウィリンク(元ネイビー・シールズ精鋭部隊「ブルーザー」指揮官)、リーフ・バビン(元ネイビー・シールズ精鋭部隊「ブルーザー」小隊指揮官)
ネイビー・シールズの狙撃手クリス・カイル

ネイビー・シールズの狙撃手クリス・カイル CHRIS HASTON-NBCUNIVERSAL/GETTY IMAGES

<リーダーはプレッシャーに動じてはいけない。そうした局面では何に基づいて行動すればいいのか――米軍最強部隊「ネイビー・シールズ」指揮官が経験を基にまとめたリーダーシップのあるべき姿>

2014年の映画『アメリカン・スナイパー』は、イラク戦争に4度従軍したクリス・カイルの自伝を下敷きにしたもの。カイルは米軍最強部隊の1つ、海軍特殊部隊「NAVY SEALS(ネイビー・シールズ)」の伝説的な狙撃手だった。

イラク戦争は2003年に始まったが、2006年のラマディの戦いでネイビー・シールズの精鋭部隊「ブルーザー」を率いたのがジョッコ・ウィリンクとリーフ・バビンだ。バビンはカイルの上官である。

ウィリンクとバビンが、戦場での経験を基にリーダーシップのあるべき姿をまとめた『米海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ)伝説の指揮官に学ぶ究極のリーダーシップ』(邦訳・CCCメディアハウス)という本がある。全米で230万人の読者を獲得し、世界29言語で刊行されている。

最前線で命のやりとりを繰り返す日々の中で、部隊のメンバーを生き残らせつつ任務を達成するために彼らが学び取ったリーダー術は、ビジネスや日常生活でも生かせるはずだ。

ニューズウィーク日本版では、10月5日号の「ビジネスに役立つ NAVY SEALS 12のリーダー術」特集で同書の抜粋を掲載。

以下にその抜粋の一部を掲載する(第3回)。

――ニューズウィーク日本版編集部

※第1回:イラクの戦場でミス続出、「責任を負うべきは私だ」と言った指揮官から学ぶリーダー術
※第2回:ネイビー・シールズ地獄の訓練で「嘘だろ?」...衝撃の展開が示したリーダーシップの重要性

【Part 3】不透明な状況でも決断力を

「建物127の2階の窓に、スコープ付き武器を持つ男がいる」と、クリスが言った。

これは、やや珍しいことだ。クリス・カイルは、チャーリー小隊の尖兵で狙撃手長。つまり、小隊きってのベテラン狙撃手で、シールズ・チームでも指折りの射手だ。

前回のイラク派兵でも、「レジェンド」とふざけてあだ名されていたが、ラマディでは狙撃手作戦の牽引役として、敵の戦闘員を次々と殺害していた。そう、米軍史上最も活躍した狙撃手たちをも、確実にしのぐペースで。

クリス・カイルを偉大な狙撃手にしたのは、誰よりも優れた射手だからではない。狙撃用照準眼鏡(スナイパー・スコープ)の十字線を1~2時間も見つめれば、ほかの隊員なら飽きて集中力を失うはずだが、クリスは自制心を保ち、警戒を怠らなかった。

確かにクリスはツイていたけれど、そのツキをもたらしていたのは、たいてい彼自身だった。

クリスもほかのシールズ射手たちも、相手が「武器を持って敵対行為を行う悪党だ」というPID(身元確認)が取れ、「敵意がある」という合理的な確信が持てた場合は、戦う許可を得ている。私(リーフ・バビン)の承認を得る必要はないのだ。

だから、彼らが承認を求めるときは、敵意があるという合理的な確信が持てないときだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IMF経済見通し、24年世界成長率3.2% 中東情

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック続落、金利の道筋見

ビジネス

NY外為市場=ドルが対円・ユーロで上昇、FRB議長

ビジネス

制約的政策、当面維持も インフレ低下確信に時間要=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア黒海艦隊「主力不在」の実態

  • 3

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 4

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 5

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 6

    【地図】【戦況解説】ウクライナ防衛の背骨を成し、…

  • 7

    訪中のショルツ独首相が語った「中国車への注文」

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    「アイアンドーム」では足りなかった。イスラエルの…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 7

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    猫がニシキヘビに「食べられかけている」悪夢の光景.…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中