最新記事

アメリカ社会

まだ闘っていた!極左アンティファと極右プラウド・ボーイズとは何者か

Who Are Antifa and the Proud Boys? Portland Protests Explained

2021年8月24日(火)20時45分
スー・キム
アンティファの旗とプラウド・ボーイズのメンバー

衝突の後、アンティファの旗を奪って掲げるプラウド・ボーイズのメンバー(6月18日、オレゴン州オレゴンシティー。赤い煙は武器に使われた熊よけスプレー)) REUTERS/Maranie Staab

<この1年、衝突を繰り返してきた極左集団と連邦議会議事堂襲撃に関与した極右組織>

オレゴン州ポートランドで8月22日、別々にデモを行っていた極左集団のアンティファと極右組織のプラウド・ボーイズが衝突し、暴力事件に発展した。

アンティファは反ファシスト(アンチ・ファシスト)の略語で、抗議デモなどのイベントでネオナチや白人至上主義者に抵抗する極左集団の通称だ。リーダーは存在しない。この数年、オレゴン、ワシントンやニューヨークの各州で、アンティファとプラウド・ボーイズの衝突が暴力に発展する事例が相次いでいる。

中でもポートランドはこの1年、衝突の中心地となってきた。2020年5月25日にミネソタ州ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドが白人警察官に殺害された事件を受けて、全米で抗議デモが行われたが、ポートランドではその抗議デモの中でアンティファとプラウド・ボーイズが激しく衝突。22日のデモは、その衝突から1年を迎えるのに合わせて行われていた。

アンティファとプラウド・ボーイズの歴史を振り返る。

アンティファとは何者か

「アンティファ」とは「反ファシスト(アンチ・ファシスト)」の短縮形で、ファシスト、あるいは白人至上主義者に反対する活動を行う集団だ。リーダー不在の緩いつながりで、共産主義や無政府主義、社会主義などさまざまな左派の大義を根拠とした活動を展開している。

米議会調査局(CRS)は2018年、アンティファについて「必ずしも左派の主張のみを掲げている訳ではなく、環境保護主義、先住民の権利や同性愛者の権利などの支持者である場合もある」と報告している。

また有力シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が2021年6月に発表した論文によれば、アンティファのルーツは、第一次世界大戦の直後にファシスト集団に反対したドイツとイタリアの左派集団に遡ることができる。

CRSは2018年の報告書の中で、1980年代後半にアンティファのイデオロギーを取り入れたARA(反人種差別運動)をはじめとする米国内の複数の反人種差別集団が「国際的な運動の積極的な、そして時には(暴力も含めて)犯罪となる戦術を支持した」と指摘する。「アンティファ運動の一部のメンバーは、自分たちの信念を普及させるために罪を犯すことも厭わない」とつけ加えた。

CSISは2021年6月の論文の中で、アンティファ運動の多くの支持者は暴力について、ファシズムに反対するための唯一または主要な手段としては支持していないものの、「正当な選択肢ではあると考えている」と指摘している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中