最新記事

変異株

コロナ対策優等生キューバを襲うデルタ株 海外派遣の医師呼び戻しも

2021年8月16日(月)12時05分
ハバナのワクチン接種施設で、接種後に検温を受ける女性

昨年の大半にわたって新型コロナウイルスの封じ込めに成功してきたキューバがデルタ型変異株による急激な感染拡大に直面、海外で働く数百人の医師を帰国させる一方、ホテルを隔離施設や病院に転用するなど医療逼迫回避へ瀬戸際の対応を続けている。ハバナのワクチン接種施設で、接種後に検温を受ける女性。2日撮影(2021年 ロイター/Alexandre Meneghini)

昨年の大半にわたって新型コロナウイルスの封じ込めに成功してきたキューバがデルタ型変異株による急激な感染拡大に直面、海外で働く数百人の医師を帰国させる一方、ホテルを隔離施設や病院に転用するなど医療逼迫回避へ瀬戸際の対応を続けている。

感染抑制成功から世界最悪の事態へ

感染の抑制とともに、世界中に医師を派遣し、国内開発のワクチン接種も始めてきたキューバだが、ここ2か月で感染者数の7日間移動平均は8倍に拡大。その数は100万人当たり5639人と、世界平均の10倍にも及ぶ最悪レベルとなっている。

検査陽性率は世界保健機関(WHO)基準である5%の4倍、死者数の7日間平均は100万人当たり52人と、世界平均の6倍に達した。公式統計による累計死者数は世界平均の半分程度だが、診断されていないケースの存在を考慮すると実数ははるかに多いとの推測もある。さらに、現在は死者数も急増する一方だ。

キューバはコロナ禍前から数十年来で最悪の経済危機にあり、医薬品が不足しているほか、生活物資を求めて長蛇の列ができるなど、人々の暮らしはすでに厳しい制約を受けている。感染抑制のためのロックダウン(都市封鎖)実施は難しい情勢といえる。

中部都市サンタクララで大学教授を務めるアナ・イリス・ディアス氏は今週フェイスブックに「20時間待っている行列と、総合病院の廊下で死んでいく人々を目撃した。数時間待った高齢女性が、4日にわたり抗原検査もPCR検査も受けられずに死亡した。見たくなかった医療崩壊だ」と投稿した。

政府は米国による制裁強化でワクチンの材料調達が困難になり、接種妨げの一因になっていると指摘しているが、反政府派は国家運営経済の非効率が原因の側面が大きいと主張する。

物資不足、埋葬も追いつかず

東部グアンタナモ州在住の男性は、30歳の友人が新型コロナに感染し、薬と酸素がなかったため死亡したと話した。

「ここでは(抗生物質の)アジスロマイシンで治療している。通常なら薬局で16ペソで買えるのに、何カ月も品切れ状態だ」。男性は、現在は闇市場で3600ペソに値上がりしていると付け加え、自分自身も感染による呼吸困難のため吸入を行なっているが、最近は頻繁に停電するため(吸入用の)湯を沸かせないこともあると話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中