最新記事

日本経済

東京五輪は日本経済に逆風? 政治リスクも急浮上

2021年7月13日(火)11時40分
東京オリンピックの競技会場

金融市場では、出遅れ感のある日本株にとって、東京オリンピックの開催がさらなる逆風になりかねないとの警戒感が出ている。都内で8日撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

金融市場では、出遅れ感のある日本株にとって、東京オリンピックの開催がさらなる逆風になりかねないとの警戒感が出ている。新型コロナウイルスの感染拡大懸念により、海外投資家の買い出動が期待しにくいためだ。秋の解散・総選挙に影響する可能性も指摘されており、政治リスクが意識され始めている。

緊急事態宣言でも五輪開催

日米の株式市場を見ると、年初来上昇率は8日までに、米ダウが12.47%、米S&P500が15.04%、米ナスダック総合が12.97%。一方、日経平均は2.46%、東証株価指数(TOPIX)は6.41%にとどまっている。日本株の出遅れ感が著しいが、見直し機運は盛り上がらず、むしろ五輪を前に「日米差」は一段と拡大している。

「五輪開催が日本株の重しだ」と、市場関係者の多くが意識し始めている。日本政府は8日、新型コロナウイルス感染症対策本部会合を開催し、東京都に対して、12日から8月22日まで緊急事態宣言を発令することを正式決定した。一方、東京五輪は首都圏をはじめ6都道県で無観客となったが、予定通り開催される予定だ。

ブラジルで6月に開催されたサッカーの南米選手権(コパ・アメリカ)では、選手や関係者に数十人の感染が明らかになった。東京五輪と同様に外部から隔離する「バブル方式」を採ったが違反事例も出ている。東京五輪をきっかけとした感染増加への懸念はぬぐえない。

ワクチン接種で先行していた英国では、ワクチン接種率の低い若者を中心にデルタ株の感染が急速に広がった。イスラエルの保健省は5日、コロナワクチンの発症予防効果が5月の約94%から約64%に減少したと発表している。「デルタ株の登場で、ワクチンを打てばすべて解決するといったシナリオは崩れた」と、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストは指摘する。

バリュー/グロースともかい離

足元の日米株価の格差の一因は「五輪リスク」とSBI証券の北野一株式ストラテジストはみている。TOPIXをS&P500指数で割った「日米相対株価」は、7月に入って年初来で最低水準となった。

バリュー株の代表格とされる日本株に対し、米株はグロース株の性格が強く、日米の相対株価の動きは、米国のバリュー株とグロース株の相対株価の動きとの相関性が高いと北野氏は指摘する。ところが4月以降、日米相対株価の下方かい離が広がった。

国内の新規感染者数の7日間平均の増加の動きとの相関がうかがわれ、5月に感染者数が減少に転じると下方かい離も縮小に向かった。ただ、かい離縮小の動きは鈍かった。北野氏は、感染者数の減少基調の継続を市場が信用しなかったためと分析、「日本にあって他国にない要素となる五輪の開催が懸念材料になっているのではないか」と話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中