最新記事

ジェフ・ベゾス

地球帰還のベゾス氏、空気を読まない発言に怒りが集中「アマゾン顧客と従業員、君たちが代金を払った」

2021年7月27日(火)17時15分
青葉やまと

ベゾス氏の出発前には、飛行に反発する署名活動も話題となっていた。「億万長者は地球にも宇宙にも存在すべきでない。しかし後者を選んだのなら、そこに留まるべきだ」と主張するキャンペーンは、オンラインで19万筆を超える賛同を集めた。かねてから不平等の象徴とも見られていた宇宙飛行プロジェクトに、今回の「君たちが払った」発言が決定的な悪印象を上塗りする形となった。

将来への道拓く、社会貢献の一面も

高まる批判の一方でベゾス氏自身は、今回のプロジェクトが社会に一定の寄与を果たしたと自負する。米CNBCは、「彼の見解によれば、今日行われている業務は将来の世代が宇宙で活動できるよう礎を築くものであり、『この地球における問題を解決する』ものだ」と伝えている。将来世代への寄与を象徴するかのように、同乗したオリバー・デーメン氏は18歳と若く、宇宙飛行の最年少記録を更新した。

加えて、男女平等の推進を象徴的するフライトともなった。今回の宇宙飛行の同乗者のひとりに、82歳のウォーリー・ファンク氏がいる。ファンク氏は1960年代に女性の宇宙飛行士を選抜する非公式のプロジェクトに参加し、厳しい訓練を経て、後に「マーキュリー13」と呼ばれる13名の候補生に抜てきされた。しかし、宇宙飛行士に女性は不適切だとの判断から計画自体が中止され、13名全員にとって宇宙飛行は叶わぬ夢となっていた。

・参考動画。ファンク氏のハグのシーンは1分20秒ごろ


ベゾス氏は「これほど長く待った人は他にいない」と述べ、ファンク氏をフライトの「主賓」として特別枠で迎えている。同社初の宇宙旅行に招待すると告げられたファンク氏は、無言で満面の笑みを浮かべ、ベゾス氏を力強くハグした。今回の搭乗でファンク氏はマーキュリー13で唯一宇宙飛行を実現した女性宇宙飛行士となったほか、宇宙飛行の最年長記録を更新している。

ベゾス氏の宇宙旅行は、社会貢献と見るか、本来納税すべきだった資金で豪遊していると見るかで、随分と評価は変わることだろう。民間の宇宙開発という意味では大きな偉業だったからこそ、少なくとも「君たちがこのすべての代金を支払った」発言は、もう少し言葉を選んだ方が良かったのかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、6月以降の数回利下げ予想は妥当=エストニア

ワールド

男が焼身自殺か、トランプ氏公判のNY裁判所前

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解

ワールド

イスラエルがイランに攻撃か、規模限定的 イランは報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中