最新記事

中国

G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か(その1)

2021年6月18日(金)13時47分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
ギリシャを訪問した習近平

2019年11月、「一帯一路」構想推進のためにギリシャを訪問した習近平国家主席 Aris Messinis/REUTERS

G7首脳会談では「一帯一路」対抗策として巨大インフラ支援新構想を決定したが、中国のアフリカ諸国などとの連携の歴史は古く、容易には食い込めない。そもそも日本は第三国での「一帯一路」に協力を表明している。

バイデン大統領が唱える「より良い世界の再建」(B3W)による新構想

6月11日から13日までイギリスのコーンウォールで開催されたG7首脳会談において、バイデン大統領は自らが唱える「より良い世界の再建」(B3W=Build Back Better World)に基づいてG7参加国を説得し、何とか開発途上国へのインフラ支援新構想の合意に漕ぎ着けた。コミュニケ(共同声明)にも妥協的記述で盛り込まれた。

コミュニケでは、これが中国の巨大経済圏「一帯一路」構想に対抗するものであるとはもちろん書いてないが、随所にそれを示唆する言葉が鏤(ちりば)められており、誰の目にも対抗策であることは明らかだろう。

要は「一帯一路によって中国は発展途上国やヨーロッパ諸国を含め120ヵ国以上の国を掌握しているので、国際社会において絶大な力を持ち、国連などの国際機関を牛耳る結果を招いており、何としてもこれを打ち砕かねばならない」というのがバイデンの思惑であり、それも「中国は不透明な投資によって発展途上国を債務漬けにしてしまい、支援対象国の経済発展を阻害している」というのがバイデンの主張でもある。

もしバイデンが望むように民主主義的価値観を共有した国々が中国の覇権を抑えることができるのなら、大変結構なことだ。

しかしG7メンバー国の中には、残念ながら、日本のようにG7首脳会談ではあたかも反中のポーズを取り、実際は習近平の顔色をうかがいながらでないと動かない国もあるので、バイデンがどんなに言葉で言ってみたところで、実行には相当の困難を伴うのではないかと懸念する。

特にコミュニケでは貧困国が多い「アフリカ」に対するニューディール政策と位置付けている文言があるが、中国とアフリカの結びつきは尋常ではない。

中国の反応

まずは中国の反応を見てみよう。

6月12日付けの中国共産党系メディア「環球網」は<米高官がG7で世界的なインフラ投資新構想により中国に対抗しようとしている。ネットでは(G7を)"失敗者連盟"と称している>という見出しで報道し(17:35)、同日20:58には<案の定、G7が「中国に戦略的に競争するため」に世界的なインフラ計画を立ち上げた。ネットでは「笑わせるぜ、中国はずっと先を行ってるよ」と言っている>と、立て続けに報道した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ中銀、経済成長率加速を予想 不透明感にも言及=

ワールド

共和予備選、撤退のヘイリー氏が2割得票 ペンシルベ

ビジネス

国内債は超長期中心に数千億円規模で投資、残高は減少

ワールド

米上院、TikTok禁止法案を可決 大統領「24日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中