最新記事

気候変動

気候変動の影響で地球の自転軸がずれた──最新研究

Earth's Axis Has Been Shifted by Climate Change, Study Says

2021年4月27日(火)20時45分
アンダース・アングルシー
地球のイメージ

地球の地軸は80年以降に約4メートル移動したと推定される LuisPortugal-iStock

<地球温暖化で氷河が溶けたことで、地球上の水の配分が大きく変化したせいだという>

地球温暖化は地球の自転軸(地軸)にもずれをもらしていることが、最新研究で明らかになった。

地軸が地球の表面と交差する点である地理極(北極点と南極点)は固定しておらず、地球上の質量の配分が変われば、地軸と地理極が移動することもある。科学者たちは、(温暖化による)氷河の融解が原因で大量の水が移動したことが一因で、地理極が急速に東方向にずれていると指摘する。

1980年以降、北極点と南極点の位置は約4メートル移動したと推定されている。米地球物理学連合が発行する科学雑誌「Geophysical Research Letters」が新たに掲載した査読済みの研究報告は、1990年代以降の移動については、氷河の融解がその主な原因だと指摘。それに比べて、地下水のくみ上げはさほど大きな影響はなかったとつけ加えた。報告によれば、海流などの自然因子もまた、地軸の移動に影響を及ぼした。

研究チームは、2002年から地理極の移動を追跡している重力観測衛星「GRACE(重力取得による気候実験)」のデータを独自の数学モデルで分析し、その結果を発表した。

「唯一の理由ではないが大きな影響を及ぼした」

チームを率いたのは中国科学院の地理科学・資源研究所に所属する邓珊珊。中国政府が研究資金を提供した。

研究者たちは、1990年代半ばに地理極が南向きから東向きに移動したことを発見。また1995年〜2020年にかけての地理極の移動スピードは、1981年〜1995年に比べて17倍速かったと指摘した。

「氷河が融解した結果、陸水(内陸部にある河川や湖、湿地や雪氷などの総称)の貯水量の減少が加速したことが、1990年代以降の地理極の急速な移動を後押ししている主な理由だ」と報告書は指摘し、こう続けた。「この新たな所見は、地理極の移動と気候変動が過去に密接に関係していたことを示している」

研究チームは、気候変動は地理極の方向が変わった唯一の理由ではないが、観測を行った期間については、気候変動が大きな影響を及ぼしたことは確かだと述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅反落、1000円超安で今年最大の下げ

ワールド

中国、ロシアに軍民両用製品供給の兆候=欧州委高官

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明、無所属候

ワールド

IAEA、イラン核施設に被害ないと確認 引き続き状
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中