最新記事

新型コロナウイルス

グーグルの検索トレンドが新型コロナの感染拡大の予測に役立つことがわかった

2020年9月16日(水)18時00分
松岡由希子

新型コロナウイルス感染症の症例数が増加する4週間前に、味覚障害、食欲不振、下痢をキーワードとする検索量が増えることがわかった...... undefined undefined-iStock

<検索トレンドをもとに、新型コロナウイルス感染症の発生を地域レベルで予測できる可能性があることが明らかとなった......>

医学的症状に関するキーワードの検索トレンドをもとに、新型コロナウイルス感染症の発生を地域レベルで予測できる可能性があることが明らかとなった。

グーグルトレンド」とは、グーグルでの特定のキーワードの検索量を0から100までの値で相対的に数値化し、そのトレンドをグラフで表示するサービスである。

4週間前に、味覚障害、食欲不振などの検索量が増えている

米ノースショア・メディカル・センター付属セーラム病院のイマーム・アハマド医師らの研究チームは、「グーグルトレンド」を用いて、新型コロナウイルス感染症による消化器症状の検索量と新型コロナウイルス感染症の症例数に相関があるのかどうかを調べた。一連の研究成果は、米国消化器学会(AGA)の医学雑誌「ジャーナル・オブ・ガストロエンテロロジー&ヘパトロジー」で2020年7月3日に公開されている。

研究チームは、まず、新型コロナウイルス感染症に起因する消化器症状として、味覚障害、腹痛、食欲不振、下痢、嘔吐といった検索キーワードを特定。米国15州を対象に、2020年1月20日から4月20日までの13週間にわたり、新型コロナウイルス感染症の症例数と各キーワードの検索量を週次で比較した。

その結果、ほとんどの州で、新型コロナウイルス感染症の症例数が増加する4週間前に、味覚障害、食欲不振、下痢をキーワードとする検索量が増えていることがわかった。

gr1.jpg腹痛、食欲不振、下痢、味覚障害、嘔吐、新型コロナウイルス感染者数 

すでに、季節性インフルエンザでは、グーグルでの検索トレンドが感染症発生の予測に役立つ可能性があることが示されている。グーグルの研究チームが2009年2月に学術雑誌「ネイチャー」で発表した研究論文では「インフルエンザ様疾患(ILI)に関連するキーワードの検索量と患者数には相関があり、患者数が変動する1〜2週間前に検索量が変動する」と明らかにしている。

季節性インフルエンザに比べて1〜2週間タイムラグがある

今回の研究結果は、2009年の研究成果ともつながるが、新型コロナウイルス感染症での検索トレンドと症例数の変動とのタイムラグは、季節性インフルエンザに比べて1〜2週間長い。研究チームは、その理由について「新型コロナウイルス感染症のほうが感染から発症までの潜伏期間が長いことや、検査体制、報告体制の違いによるものではないか」と考察している。

グーグルは、2020年9月2日、新型コロナウイルス感染症の流行と症状にまつわる検索量との関係の解明に取り組む研究者に向けて、咳や発熱、呼吸困難など、新型コロナウイルス感染症の400以上の症状をキーワードとする検索トレンドのデータセットを公開した。現時点では、公開範囲を米国に限定しているものの、研究者や市民社会団体らからの反応をみながら、他の国や地域にも拡大していく方針だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中