最新記事

コロナデモ

ドイツで抗議デモ急増、陰謀論者と反ワクチン主義者が警察とジャーナリストを攻撃

2020年5月15日(金)16時50分
モーゲンスタン陽子

ドイツ・ベルリン、規制が緩和されつつあるが抗議デモも増えている REUTERS / Christian Mang

<ドイツでは徐々に制限が緩和されているが、今抗議デモが急増し、警官やジャーナリストに対する暴力も頻発している...>

先週末からドイツ各地で新型コロナ対策の各種制限に抗議する通称「コロナデモ」が急増している。数々の制限が緩和され人々が少しずつ自由を取り戻すなか、なぜ今抗議デモなのか。また、警官やジャーナリストに対する暴力も頻発している。

デモ参加者にはマスクを着用せず、身体距離を取らない人も多い。規制緩和以降、ドイツの新感染者数はふたたび増加傾向にある。この2か月、さまざまな制限を受け入れることにより得たものを無駄にしないよう、そして、ふたたびロックダウン状態に戻らなくて済むよう、メルケル首相も他者の尊重を呼びかけている。

警察とジャーナリストが標的に

5月9日土曜日、ドイツ各地で新型コロナ対策の各種制限に対する抗議デモが行われた。バイエルン州ニュルンベルクでは当初50人の「平和的集会」との届け出であった(現在集会が認められている最大人数)が、蓋を開けてみると2,000 人にまで膨れ上がった。同州ミュンヘンでは3,000人が集合。ベルリンでは国会議事堂前に1,200人が押し寄せた。いずれも、身体距離確保の無視や、警察に対する暴行などで多数の逮捕者が出ている。

ジャーナリストに対する暴力も増えている。ベルリンでは今月、街中で取材撮影中のジャーナリストたちが襲われる事件が1週間に2度も発生。入院者も出ている。その直後、ドルトムントでも極右によるジャーナリスト襲撃が発生した。

Berlin Germany Agents Provocateurs Anti Bill Gates Coronavirus Protests conspiracy 2020/05/09


陰謀論者と反ワクチン主義者による攻撃

規制に反対する人々は、キャビン・フィーバー(狭い空間に長時間閉じ込められることによって生じる熱や情緒不安)や、基本的人権への抵触を主張する。だがどうやら、こうしたデモに参加するのは単純に規制反対の人々だけではなさそうだ。各地でのデモ参加者をみると、左派やリベラルもいるものの、極右・新右派などが本来平和的である集会を煽っているようだ。さらに注目されているのが陰謀論者と反ワクチン主義者だ。陰謀論者は、新型コロナウイルスが次世代通信規格「5G」に関連しているといったり、ビル・ゲイツと関連付けたり、メディアが流すのはすべて「フェイクニュース」であり、そのためジャーナリストたちへの攻撃が増えている。

緩和されたとはいえ、マスク着用義務や身体距離の確保など、まだまだ続く規制に対する一般市民の不満や不安を政府は理解し、デモをする権利は重要だと考えている。だが、それに便乗して政治利用する過激派集団、とくに極右勢力に対し議員たちが警戒を強めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中