最新記事

スペイン

スペイン総選挙は極右政党VOXが第3勢力に躍進 与党は過半数届かず

2019年11月11日(月)11時15分

スペインで10日投開票された今年2度目の総選挙(下院、定数350)で、極右政党ボックス(VOX)が4月の選挙の倍以上の議席を獲得した。写真はマドリードでの集会に参加したVOX支持者ら(2019年 ロイター/Susana Vera)

スペインで10日投開票された今年2度目の総選挙(下院、定数350)で、極右政党ボックス(VOX)が4月の選挙の倍以上の議席を獲得した。サンチェス首相率いる穏健左派の社会労働党(PSOE)は第1党を維持したものの、議席は減らし、過半数にはさらに遠い状況となった。右派と左派、どちらの勢力も過半数に届かない中で、組閣に向けた各党間の協議が再び難航する可能性がある。

開票率95%以上の時点で、第2党は中道右派の国民党(PP)、VOXが第3党。VOXの獲得議席は52とみられ、4月に獲得した24から倍以上に拡大。一方で中道右派のシウダダノスが議席を大幅に減らした。

投票率は前回より低く、有権者の選挙疲れが鮮明になった。

スペインは、フランコ総統による独裁時代の記憶から長らくナショナリストの台頭とは無縁だった。しかし政治の混迷に対する怒りとカタルーニャ州独立問題がVOX躍進のきっかけとなっている。

VOXのアバスカル党首は、スペインのために「愛国的な代替案」の構築に努めると述べた。

暫定結果によると、社会労働党の得票率は28%超にとどまり、4月の123から120に議席を減らす見込み。

サンチェス首相は4月の総選挙後に連立政権樹立に失敗。野党間でも合意が成立せず、首相が与党勢力の維持・拡大を目指して再選挙に打って出た。

サンチェス氏は「いずれにしても、われわれは革新政権を樹立し、政治的行き詰まりを解消する。共生に反対して憎しみを助長する政党を除くすべての政党に対し、われわれは協力を呼び掛ける」と述べた。

今後については、社会労働党による少数与党政権が発足する可能性が最も高い。だが、その連立相手がどの政党になるか、その連立がいつまで持続するかは不透明だ。

下院の過半数(176議席)を確保するための連立の組み合わせはいくつか考えられるが、いずれも課題は多い。

一つは、サンチェス氏が率いる少数与党政権をPPが認めるケース。以前にサンチェス氏へのいかなる協力も否定していたPPのカサド党首は選挙結果を受け、政治空白の打開はより難しくなったと認めた上で、社会労働党の次の動きを待つと述べた。

このほか、シウダダノスと複数の地方政党が社会労働党と協力するケースも想定される。

同日の上院選でも、社会労働党は過半数議席を確保できなかった。

[マドリード 10日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&Pとナスダック下落、ネットフリッ

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解

ビジネス

NY外為市場=円・スイスフラン上げ幅縮小、イランが

ビジネス

米P&G、通期コア利益見通し上方修正 堅調な需要や
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中