最新記事

中国経済

中国GDP成長率は過去10年、2%近く水増しされていた?──米ブルッキングズ研究所

China Exaggerated GDP Growth Data by 2 Percent: Report

2019年3月8日(金)14時37分
ジェイソン・レモン

中国の経済統計は構造的な問題を抱えている REUTERS

<米研究機関の推計で、中国国家統計局の発表するGDPデータが誇張されていた疑惑が出てきた>

中国が過去10年近くの間、GDP成長率を平均で約2ポイント水増ししてきた可能性があることが、米ブルッキングズ研究所の最新の研究で明らかになった。

3月7日に発表された「ブルッキングズ経済活動報告書 2019年春号」によると、中国政府のGDPは中国各地の地方政府から提出された統計数値をもとに算出されている。ところが、中国政府は地方が投資や経済成長の目標値を達成すると報奨金を出すため、地方政府は統計を水増ししてでも目標を達成しようとする。

「中国国家統計局(NBS)は、地方から集まる水増しデータを補正して国全体のGDPを算出する」が、2000年代中盤以降、NBSは水増し分を過小評価してきたと、報告書の概要には記されている。

ブルッキングズ研究所は、中国の付加価値税のデータから逆算した鉱工業生産や卸売売上高、不動産業売上高などを使って、地方の本当のGDPを推計した上で全国のGDPを算出した。その結果、2008年以降にNBSが発表してきた公式統計と比べ、「2008~16年の実際のGDP成長率は平均して1.7ポイント低く、2016年の投資・貯蓄率は7ポイント低かった」と結論付けている。

中国GDPが抱える根本問題

在米の中国大使館からは、この報告書に関する返答はまだない。

香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストによれば、現在、中国政府指導部は経済成長の鈍化に直面している。今週、第13期全国人民代表大会(全人代)が北京で開幕したが、李克強(リー・コーチアン)首相は政府活動報告の中で、2019年の経済成長率の目標を前年の「6.5%前後」から「6~6.5%」へと事実上引き下げた。

2018年の成長率は公式発表(おそらく不正確ではあるが)で6.6%とされ、比較的に高い成長率を維持しているが、中国の成長率としては1990年以降、最も低かった。一方、18年のアメリカのGDP成長率は約3%だった。

「中国のGDPは3つの問題を抱えている」と、北京大学のマイケル・ペティス教授(金融学)はサウスチャイナ・モーニングポストの取材に答えて言う。「1つ目は、必ずしも正確に計算されていないこと。2つ目は、データの集計方法にバイアスがあること。3つ目は政府のマクロ経済政策上の問題だが、巨額の不良債権の評価損が計上されていないこと」

「NBCが補正してきたのは2つ目の問題だけだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中