最新記事

スペイン

カタルーニャ独立派は「2つの重大な嘘をついている」

2018年11月19日(月)18時00分
モンスラート・ギネス(元カタルーニャ工科大学准教授)、アルフォンソ・バレロ(弁護士)

独立の是非を問う国民投票から1年たった2018年10月1日、バルセロナの広場に集まった人々 Albert Gea-REUTERS

<分離独立ではなくスペインの民主主義に参加するべき──独立反対派の学者、法律家らによる問題解決への提言>

スペインは1978年憲法により民主主義国となって以来、40年にわたり経済的繁栄と完全な政治的自由を享受してきた。この憲法は国民投票によって承認された。カタルーニャの投票率は67.9%で、その90%以上が賛成だった(マドリード地方の賛成率よりも高かった)。

この憲法を改正して、特定の地域が独立できるようにするためには(現行では独立は認められていない)、新たなスペイン全体の国民投票が必要だ。ところが調査会社GESOPの最近の調査によると、カタルーニャでは法的拘束力を持つ国民投票の実施に賛成する人は半分以下(約42%)のようだ。

スペイン警察が出動しなければならない事態は、そもそもカタルーニャ州政府によって引き起こされた。独立の是非を問う17年10月1日の住民投票は違憲であり、その結果は認められないにもかかわらず、州政府はそれを偽り、住民に投票に行くよう促した。しかもこの住民投票は、カタルーニャの全住民の見解を正確に反映していない。この投票が違憲であることを認識している人たちは、投票に行かなかったからだ。

現在、スペイン法に基づき予防拘禁されているカタルーニャの政治家たち、そして刑事責任を回避するために国外に逃れた人々がそのような境遇にあるのは、スペイン憲法とカタルーニャ自治法に自ら違反して、2017年10月27日にカタルーニャ共和国の独立宣言をしたためだ。その責任追及を逃れられると期待するのは不当だ。

独立派の活動家も、その理念ゆえに拘束されているのではなく、大衆に抗議行動をあおり、法執行官の職務遂行を妨害させて、スペイン刑法が定める重罪(反乱または治安妨害)を犯した容疑をかけられているからだ。

これがアメリカでも、同様の結果が示されるだろう。米連邦最高裁は1869年、合衆国憲法は州が一方的に離脱することを認めていないと判示した。

2013年にテキサス州民10万人が独立を求める署名を提出したとき、オバマ大統領(当時)は、このことを改めて明確にした。ホワイトハウス報道官は、合衆国憲法は「(連邦から)去る権利を定めていない」とし、独立ではなく「政府に参加し、関与することが民主主義の基礎」であると述べたのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米制裁が国力向上の原動力、軍事力維持へ=北朝鮮高官

ワールド

韓国GDP、第1四半期は前期比+1.3% 市場予想

ビジネス

バイオジェン、1―3月利益が予想超え 認知症薬低調

ビジネス

フォード、第2四半期利益が予想上回る ハイブリッド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中