最新記事

イラン制裁

イラン制裁復活、トランプは世界12位の自動車生産国をつぶす

Here’s How New U.S. Sanctions Will Affect Iran

2018年8月7日(火)17時36分
ジェイソン・レモン

国産自動車メーカー、イラン・ホドロの完成車。外国車メーカーも工場進出している Raheb Homavandi-REUTERS

<核合意を離脱し、対イラン制裁を再開して、威勢よくイラン経済を追い詰めるトランプは、どれほどの損害と犠牲が出るか考えてもいないのでは>

アメリカのドナルド・トランプ大統領は8月6日、対イラン制裁を再開する大統領令に署名した。その前哨戦として米政府は今年5月、各国の反対を押し切って2015年に成立した核合意(包括的共同作業計画:JCPOA)から離脱した。

米政府は声明で「アメリカ合衆国は、すべての経済制裁が実行されるよう全力を尽くし、イランと商取引のある国々とも密接に連携し、制裁を完全なものにするつもりである」と述べた。

CNNの報道によれば、今後イラン政府は、米ドルの購入ができなくなる。また、イランと金(ゴールド)や貴金属の取引のほか、黒鉛、アルミニウム、鉄鋼、石炭の直接的・間接的な供給も制裁対象だ。イラン通貨取引の大きな部分は禁じられ、イランの自動車産業も制裁対象となる。アメリカとヨーロッパで製造された航空機をイランに販売することもできなくなる。

11月5日までには、米政府はイランのエネルギー部門に対する「核関連制裁」を完全実施し、イラン産原油の輸入禁止と、外国金融機関によるイラン中央銀行との取引禁止も始まる予定だ。

トランプは8月6日、核合意は「一方的でひどい取引」だったと述べ、「イランの核兵器保有への道を完全に絶つという根本的な目的を達成することができないどころか、虐殺や暴力、混乱を拡大し続ける残忍な独裁政権に、現金という援助を差し伸べるものだ」と新ためて批判した。

イラン最大の市場に打撃

今回の大統領令を受けて、イランのジャバド・ザリフ外相は次のようにツイートした。「トランプ政権は、イラン国民のことを案じているふりをしている。それでいて、最初に科した制裁は、200機を超えるジェット旅客機の輸出を止めることだが、これこそイラン国民が生きるのに欠かせないインフラだ。アメリカの偽善には際限がない」

トランプの大統領令に先立ち、フランス、イギリス、ドイツの外相と、欧州連合(EU)の外交安全保障上級代表は8月6日に共同声明を発表し、アメリカ政府の決定について遺憾の意を表明した。外相らはまた、ヨーロッパとイランの経済的な結びつきを守ることを約束した。

世界安全保障と開発を専門とするコンサルタントで、オランダ在住のイラン系アメリカ人、ベアトリス・マネシは本誌に対し、イランの自動車生産台数は世界12位だと述べ、ルノーやプジョー、フォルクスワーゲンといったヨーロッパの自動車メーカーがイランに工場を持っていることを指摘。トランプは、イラン経済で「最大かつ海外からの投資が最も多い部門に打撃を与えた」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EVポールスター、中国以外で生産加速 EU・中国の

ワールド

東南アジア4カ国からの太陽光パネルに米の関税発動要

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時700円超安 前日の上げ

ワールド

トルコのロシア産ウラル原油輸入、3月は過去最高=L
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中