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「子育て」に氾濫するバイアスを排除する方法

2021年10月20日(水)16時25分
船津徹

「問い」を重ねることがクリティカルシンキングのポイント

子育てほどたくさんのバイアスが横行している世界はありません。親が氾濫する情報や周囲の意見に流されて安易な意思決定をしてしまうと、子どもが右に左に引きずり回され、結果として子どもの「やる気」をつぶすことにつながってしまいます。

これがよく起きるのが習い事です。「みんなが通わせているから」と、英会話、スイミング、ピアノ、体操、サッカー、ダンスと、次々に子どもを習い事に参加させては「うちの子には向いていない」とやめさせる。

このような子どもの個性や資質を無視した教育を繰り返していると、子どもの自信はどんどん小さくなっていきます。そして、「自分はできない」「自分には無理」と何事に対しても消極的な態度が形成されてしまうのです。

子育てで一番大切なのは、目の前にいる子どもを直視して「良い部分」を引き出してあげることです。すなわち、子どもの個性、関心、興味、好きなこと、得意なことにフォーカスし、それらを伸ばすことに注力すればいいのです。

男の子だから、女の子だから、長男だから、母親はこうあるべきだ、しつけは厳しくするべきだ、中学受験はさせるべきだ、有名大学に入れるべきだ、将来医者にすべきだ、そんな思い込みが子育てを歪めていきます。

バイアスに惑わされない思考=クリティカルシンキングを身につけるコツは、親が自分自身に「問い続ける」ことです。たとえば子どもの習い事を決める時は、「長所を活かせるか?」「性格にマッチしているか?」「自信を伸ばせるか?」「長く続けられるか?」「今子どもに必要か?」と、自分自身に、またはパートナーと一緒に「問い」を重ねていきます。

この「問い」こそが、クリティカルシンキングを身につけていく最良の方法です。親は自分がバイアスに惑われさていないか、周囲の意見に流されていないか、自分自身への「問い」を忘れずに継続していってほしいと思います。

子どもの「問い」を引き出すと思考力が豊かになる

子どもは知りたいこと、わからないこと、理解できないこと、不思議なことに出会うと、「何で◯◯なの?」という問いを、一番身近な「親」に投げかけます。この「何で?」という気持ちを伸ばしてあげることが、子ども「思考力」の発達に関わってきます。

子どもが「何で」「どうして」と聞いてきたら、親は子どもと向き合って、きちんと答えてあげることが大切です。「不思議だね。◯○ちゃんはどうしてだと思う?」と一緒に考えてあげると、子どもは気になることをどんどん言葉にするようになります。

反対に親が「今忙しいから後にして!」と、子どもの問いに答えてあげないと、子どもに「わからないことをわからないままにする習慣」が身についてしまいます。すると考えることが苦手で、周囲の意見に流されやすい(バイアスに影響されやすい)思考が定着してしまう傾向があるので注意してください。

親がわからない時は見栄を張らずに、子どもと一緒に考えるようにしてください。素朴な疑問に対して、「人に聞くのは恥ずかしいことではない」と子どもに伝えることがポイントで、わからないこと、不思議に思うことを放っておくこと、知ったかぶりをすることの方が恥ずべきことであると学ばせるのです。

また、親が子どもに「問い」を増やすことで「何で?」を引き出すことができます。たとえば食事の時に、「お箸はどうやって作るのだろう?」「タマネギを切ると涙が出るのはなぜだろう?」「電子レンジで食べ物が温かくなるのはどうしてだろう?」など、目につく事象について質問すると、子どもは身のまわりの不思議について「なぜだろう?」と考えるようになります。

この思考が発展すると、「蛇口から水が出る仕組みはどうなっているのだろう?」「シンクに流した水はどこに行くんだろう?」「テレビはどうして映るんだろう?」「月はどうしてついてくるのだろう?」「鳥はどこまで高く飛べるのだろう?」など、親にとっても答えられない質問が次々と子どもの口から飛び出してくるようになります。

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