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ホラー映画や性犯罪で「犠牲者」になる女の子の気持ちを描く「チャーチズ」新盤

Refusing to Be the “Final Girl”

2021年09月16日(木)18時15分
アリヤ・チョードリー

(左から)チャーチズのマーティン・ドハーティ、メイベリー、イアン・クック。アルバムタイトルはお蔵入りしたバンド名から取った SEBASTIAN MLYNARSKI AND KEVIN J. THOMSONーSLATE

<スコットランド出身の3人組バンド「チャーチズ」が、新アルバム『スクリーン・バイオレンス』で問題提起する現代社会の女性軽視>

ローレン・メイベリーは、「自分はとてもノスタルジックな人間だ」と言う。だから彼女がフロントパーソンを務めるバンドの思い出の品を、たくさん取っておいている。

イギリスの3人組ポップバンド、チャーチズが結成されたのは2011年のこと。メイベリーは数年前、その当時のバンド名候補を書いたリストを発見した。その中に「スクリーン・バイオレンス」があった。そして、それが8月27日に発売された新アルバムのタイトルになった。

「私たちは3人とも映画オタクだから」と、メイベリーはアルバム発売直前に行われたインタビューでそう言った。では、「スクリーン・バイオレンス(映画の中の暴力)」と聞いて、メイベリーがすぐに思い浮かべる映画は何か。

「『エルム街の悪夢』など、ホラー映画の巨匠ジョン・カーペンターの多くの作品。それに『ビデオドローム』など(映画監督デービッド・)クローネンバーグが手掛けてきたタイプの映画かな」

こうした映画で女性がどのように扱われているかは、今回のアルバムづくりで大きなテーマになった。ホラー映画では「注目されるのは殺人鬼のことばかりで、殺された女の子がどんな気持ちだったのかはあまり話題にならない」と、メイベリーは語る。

「『TRUE DETECTIVE/迷宮捜査』や『ツイン・ピークス』といった私が大好きなドラマでも、死んでいく女の子は、誰かのストーリーを補強するための存在として描かれることが多い」

映画の世界だけではない

女性がモノのように扱われ、残酷な仕打ちを受け、無力な存在におとしめられるのは、ホラー映画の世界だけの話ではない。それが日常的な現実だという女性もいるのだ。

「同意もしていないのに、誰かの性的興奮のためにじろじろ見られたり、追い回されたりする感覚は、全ての女性が知っていると思う。それでも何とか生きていくために、そうした現実と暗黙の交渉をして、妥協する感覚を、多くの女性は何らかの形で知っているはずだ」

こうした問題意識は、最新アルバムの歌詞にも表れている。「必死に愛されようとすることに疲れてきた」と、メイベリーは8曲目の「ララバイ」で歌っている。6曲目の「ファイナル・ガール」は、ホラー映画の最後のシーンで殺人者と対峙する女性登場人物を歌っている。

「最後のカット/最後のシーンに/最後の女の子(ファイナル・ガール)がいる/彼女が叫んでいるのが分かるでしょう」

それは女性であることの恐ろしい現実と、それを変えることができない無力感を示唆している。

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