最新記事

女性問題

コロナ禍の新しい生活様式は家事の男女平等を進める?

2020年12月09日(水)20時45分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

掃除は、ときに、家庭の中で議論に発展するという調査がある。スイスの洗剤メーカー、ドゥルゴールがドイツ語圏3か国で定期的に実施している掃除に関する調査だ。その第4回目 MMdurgol_Frhjahrsputzstudie_2020 は次のような結果だった(2019年11月実施、各国20〜69歳の800人、計2400人がオンラインインで回答)。

月に最低1回は掃除のことで喧嘩になると答えた人は、45%もいた。国別(40歳未満)では、オーストリアは56%、ドイツは59%、スイスでは57%だった。

掃除をせず清潔にしないことがパートナー関係解消の要因になり得るかという質問では、40歳未満では、オーストリアは47%、ドイツは52%、スイスでは46%が「そうだ」と答えた。それ以上の年齢でも、それぞれ41%、43%、41%と少なからぬ割合だった。

本調査では、女性は家全体を掃除し男性はカルキ除去など特定の場所の掃除を担当する傾向にあることもわかった。掃除が原因で愛情関係に深い亀裂が入る(かもしれない)のは残念な気もする。

コロナ禍で、男性が掃除をする時間が増えた

11月下旬、ジェンダー平等の達成を目指す国連女性機関(UN Women)は、家庭での無給の仕事(家事と子どもや親の世話)がコロナ禍でどう変化したかの調査レポートwhose time to care: Unpaid care and domestic work during COVID-19 | UN Women Data Hub
を発表した(38か国・18~86歳の男女対象) 。

その結果は、男女とも家庭での無給の仕事に費やす時間が増えているものの、依然として女性の負担が大きいことを明らかにした。掃除の項目を見ると、普段(コロナ禍前)はとくに掃除しない男性は33%いたが、感染拡大以降、掃除をするようになった人は35%増えた。女性も、コロナ禍が影響して掃除をするようになった人は増えた。

世界的に、いまも女性の側に家事の負担が大きいことは改善すべきだが、コロナ禍がきっかけで、家事をよりするようになった男性が増えているのはよいことだ。

男性が家事などに費やす時間の割合が高いドイツでも、コロナ禍がよい影響を与えている。今年4月、ドイツのボディケアおよび洗剤産業協会(IKW)が実施したオンライン調査 Studie | IKW によると、コロナ禍前後の違いが明らかになった。

コロナ禍前よりも掃除するようになった男性は増え、とくによくこなすようになったのは、片付け(57%)と掃除機がけ(55%)。台所の掃除(51%)、掃除一般(49%)、お風呂場の掃除(48%)も多い。

他国に比べ、女性の家事の負担が非常に重い日本でも似た現象は起きているだろうか。筆者の夫は、冒頭のエピソード以降、以前よりも手伝ってくれるようになった。できればもう少しとは思うが、まずは一歩前進ということで感謝している。

 

s-iwasawa01.jpg[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官が近く訪中へ、「歓迎」と中国外務省

ビジネス

IMF、スリランカと債券保有者の協議を支援する用意

ワールド

EU諸国、ミサイル迎撃システムをウクライナに送るべ

ビジネス

中国人民元建て債、3月も海外勢保有拡大 ペースは鈍
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    ロックンロールの帝王を捨てた女性の物語、映画『プ…

  • 2

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 1

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 2

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    「テニスボール貫通ピンヒール」の衝撃...ゼンデイヤ…

  • 5

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 1

    キャサリン妃とウィリアム皇太子の「ご友人」...ロー…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃は「努力を感じさせない魅力がお見事」とS…

  • 4

    英国でビーガンが急増、しかし関係者からも衝撃的な…

  • 5

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:老人極貧社会 韓国

特集:老人極貧社会 韓国

2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる