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肉は1日ひと口だけ? 人も地球もヘルシーになる食生活のススメ

2019年02月01日(金)18時30分
冨久岡ナヲ(イギリス在住ジャーナリスト)

環境への負荷が高い食肉生産

レポートでは、お手本食として1日に食べていい量を食種別に挙げている。たとえば、牛乳は250ミリリットル=大きなグラスに1杯まで、赤身肉なら14グラム=1〜2口まで、卵は1個の6分の1といった具合だ。

「えっ、肉はひと口しか食べてはいけないの!?」と驚くが、これは1カ月分の量を1日ずつに割ったから。実は10日ごとに小さめのステーキを1枚食べられる、ということだ。

タンパク質はできるだけ魚肉ではなく豆類とナッツから摂ることを勧めている。魚は自然資源がどんどん少なくなっているからだ。また牛、豚、羊など特に赤身肉の生産は、食糧生産のなかでも環境への負荷が特に高い。草食である家畜の飼料の生産には人が食べるための青果の栽培と同じくらいの土地や水が必要だ。家畜の放牧にももちろん土地は必要で貴重な森林が失われている。そして家畜の排泄物は水を汚染し、ゲップに含まれるメタンガスは二酸化炭素の20倍も環境負荷が高い。肉の食べ過ぎはメタボリックシンドロームも招く。まとめれば、肉食というのは環境にも人にもよくない、だから食べる量を減らそうということなのだ。 (各国の食肉生産者たちはこぞってこの見解に反対しているが。

日本人の食事はお手本食に近い?

こうしてみると、納豆や豆腐など昔から豆類由来の食品を多く食べてきた日本人は、お手本食に近い食生活をしているのでは?と感じる。世界のエリアの食事内容を統計したグラフでは確かに、魚の摂取量がやや多すぎという以外、東アジア圏は合格ラインだ。

欧米は牛、豚、羊など赤身の肉を、アフリカでは芋類の摂取量をとにかく思い切り減らさないとだめで、その実現には砂糖と同じような不健康食品税を牛肉にも課す案など、食文化と食物生産システムの革命的な大変化が必要だと説いている。

しかし日本人にとってはそこまで難しいことではない、という気がする。昔よりはピザやハンバーガー、揚げものなどをたくさん食べるようになったとはいえ、今も主食は米だし、湯豆腐やほうれん草のおひたしが食卓に上っている。豚肉の薄切りが少しだけ使われた野菜炒めなどは、お手本食の見本レシピのようなものだ。

レポートの中では、新鮮な野菜とオリーブ油をたくさん食べる地中海と、ヘルシーな豆腐の炒め物チャンプルーで知られる沖縄の食事が「ほぼお手本食」とほめられている。「プラネタリーヘルス・ダイエット」をいち早く取り入れ、この「地球にも人間にもヘルシーな食事」が机上の理想論ではないことを他の国の人たちに見せてあげられるのは、私たち日本人なのかもしれない。

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