最新記事

肉は1日ひと口だけ? 人も地球もヘルシーになる食生活のススメ

2019年02月01日(金)18時30分
冨久岡ナヲ(イギリス在住ジャーナリスト)

野菜や豆類中心の食事は地球の健康にもいい? Steve Debenport-iStock

<地球という惑星に生存し続けるために私たちはいったいどんな食事をするべきなのか。環境問題と食生活に関する大規模な研究から発表された「プラネタリーヘルス・ダイエット」提言がイギリスで話題を呼んでいる>

ダイエット、といえば「減量食」のことだと思われているが、この英単語の本当の意味は、減量だけではなく、病気の療養食や宗教食なども含めた「食事の取り方やスタイル」を指す。

英字新聞の見出しに「これからはプラネタリーヘルス・ダイエット(=惑星規模でヘルシーなダイエット)を」と書いてあるのを見つけたら、新しい減量プログラムかしら? と思うかもしれない。しかしこれは、増え続ける私たち人類がこの地球という惑星の上にこれからもずっと生存し続けるため、いったいどんな食事をするべきなのか、その食料をどうやって生産するのが望ましいのかというスケールの大きな研究から出された提言なのだ。

「食料、惑星(地球のこと)、健康:持続可能な食生活」と題されたこのレポートは、人口、食糧、健康、農業、環境などを科学的な視野から考える非営利団体EATと、世界5大医学雑誌のひとつランセットが37名の学者を交えて行った研究の結果で、今年1月半ばに発表された。

地球がヘルシーでなければ人もヘルシーに生きられない

「環境問題が地球に及ぼす影響」と「日々の食生活」とは直接に繋がっていると言われても、あまりぴんとこないだろう。しかし、2050年には98億人、2100年には112億人にと増えているだろうという人類の全員が、量も栄養も十分な食料を得るには...と想像してみると、食べ物を生みだしてくれる地球がヘルシーな状態でなければ、私たちもヘルシーに生きることはできない、というメッセージの意味がなんとなくわかってくる。

では実際にどんな食事をすればよいのだろう。提言された「お手本食」を見ると、とにかく野菜が圧倒的に多い。イメージとしては、一枚のお皿の半分に野菜、果物、ナッツをたっぷり盛り、残りの半分に穀物(それも玄米や雑穀、全粒粉など)、豆類、ほんのすこしの魚と肉に不飽和植物油や乳製品を添え、芋類などをぽつっと置いたバランス感だ。

なんだか、欧米で今大きなトレンドとなっている「ビーガン」(卵、チーズ、はちみつを含め動物性の食物を一切食べない厳格な菜食主義)の食事メニューに、切手サイズの肉と魚を加えたような感じ。雑食型の人でもこんなに野菜だらけの食事へと簡単に切り替えられるものだろうか。

この研究のまとめ役であるハーバード大学のウォルター・ウィレット教授は、以前は赤身の肉を3食欠かさずがっつりと食べていたそうだ。しかし今ではお手本食に沿ったヘルシーな食事をエンジョイしていると言う。

BBC英国国営放送のインタビューで本当はビーガンになることがもっとも地球に優しく好ましいのかと聞かれると「もし温室効果ガスを減らすことだけが目的なら、答えはイエスだ」とうなずいた。

しかし、ビーガン食には動物性食物からしか摂れない栄養が不足するため、「健康に良いかどうかはまだわかっていない」とし、野菜を中心に時々肉や魚や乳製品を摂る「フレクシタリアン(柔軟な食主義)」になることを勧めた。自分自身も魚肉を食べ続けており、バラエティーに富んだ食材を用いて野菜料理にも変化をつけているそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが対円・ユーロで上昇、FRB議長

ビジネス

米国株式市場=まちまち、金利の道筋見極め

ビジネス

制約的政策、当面維持も インフレ低下確信に時間要=

ビジネス

米鉱工業生産、3月製造業は0.5%上昇 市場予想上
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    ロックンロールの帝王を捨てた女性の物語、映画『プ…

  • 2

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 5

    「テニスボール貫通ピンヒール」の衝撃...ゼンデイヤ…

  • 1

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 2

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 5

    「テニスボール貫通ピンヒール」の衝撃...ゼンデイヤ…

  • 1

    キャサリン妃とウィリアム皇太子の「ご友人」...ロー…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃は「努力を感じさせない魅力がお見事」とS…

  • 4

    英国でビーガンが急増、しかし関係者からも衝撃的な…

  • 5

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:老人極貧社会 韓国

特集:老人極貧社会 韓国

2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる