最新記事

食生活

「食べなくても匂いだけで満足できる」米研究

A Satisfying Scent

2019年3月4日(月)16時30分
カシュミラ・ガンダー

おいしそうな匂いだけで我慢できる? LAURIPATTERSON/ISTOCKPHOTO

<スーパーでクッキーの匂いとイチゴの匂いを噴霧したら、健康的でない食品を買う傾向があったのはイチゴの匂いを嗅いだ客だった。高カロリー食品のいい匂いについて、米サウスフロリダ大学の研究チームが検証したところ...>

とろとろのチーズがたっぷりかかったピザをがっつきたい! そんな欲望に勝つには、強い意志の力が必要だ。だが最近の研究によれば、ヘルシーでない食べ物の匂いを嗅げば、実際に口にする誘惑に勝てるらしい。

匂いを利用して購買意欲をそそるマーケティング手法がある。例えばシカゴの有名レストランのアリニアでは、客の食欲を刺激するためシナモンスティックとローズマリーを燃やしている。サウスフロリダ大学ムーマ経営学カレッジのディパヤン・ビスワス教授(マーケティング学)ら研究チームは、この匂いの効果について調査をした。

ほとんどの人は、脂肪分や糖分、塩分が多く、高カロリーの食べ物をおいしいと感じる。そして、嗅覚と味覚が脳の報酬回路を活性化する仕組みは重なっているため、嗅覚は食べ物の選択に大きな役割を果たすのではないかと、研究チームは考えた。

仮説の検証は2カ所で行われた。まず中学校の食堂で、「ピザの匂いを噴霧する」「リンゴの匂いを噴霧する」「何の匂いもさせない」の3日間を設定。するとピザの匂いの日には、ヘルシーな食品が多く選ばれた。

スーパーマーケットの実験では、店でチョコチップクッキーの匂いとイチゴの匂いを噴霧(匂いが混ざらないよう1時間の間隔をおいた)。購入商品をレシートで調べたところ、クッキーの匂いを嗅いだ客は果物などの健康的な食品、イチゴの匂いを嗅いだ客は健康的でない食品を買う傾向があった。

「ヘルシーでない食べ物の匂いが脳の報酬回路を満足させ、食べたい衝動を減少させるようだ」と、論文には書かれている。

英栄養士会の広報担当アスリング・ピゴットは、「食欲は抑えられないと思いがちだが、匂いを楽しむうちに衝動がやむこともある。それでも食べたい場合は、本当におなかがすいているのだろう」と、本誌に語る。

不健康な食べ物の取り過ぎを防ぐことは非常に重要だ。なにしろアメリカの成人の約40%が肥満なのだから。

<2019年2月19日号掲載>

※2019年2月19日号は「日本人が知らない 自動運転の現在地」特集。シンガポール、ボストン、アトランタ......。世界に先駆けて「自律走行都市」化へと舵を切る各都市の挑戦をレポート。自家用車と駐車場を消滅させ、暮らしと経済を根本から変える技術の完成が迫っている。MaaSの現状、「全米1位」フォードの転身、アメリカの自動車ブランド・ランキングも。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求 ハマスは

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中