最新記事

ペット

シニア犬をテーマにした体験型ドッグカフェ:犬と人が幸せになれる高齢化社会とは 

2019年8月2日(金)14時30分
内村コースケ(フォトジャーナリスト)

「シニアだからこそおいで」という場所に

A9_08723.jpg

『meetぐらんわん!』のスタッフの皆さん

これまでに2頭の愛犬を見送っている中村さんは、「犬は亡くなる直前に必ず感謝の気持ちを伝えてくる」と言う。「1頭は保護犬でした。その子はしっぽを振ったことがなかったのですが、最期にすごく振ってくれて、号泣してしまいました。もう1頭は最後の2日間は意識がなかったのですが、旅立つ瞬間に意識が戻って、私の顔をじっと見てから亡くなりました。犬にも感謝を伝えるタイミングが必要なんだと思います。飼い主としても、それがあって初めてお別れできるし、気持ちの整理ができるのでしょう」

容態が悪化した愛犬を一縷の望みを託して入院させ、出張とも重なって最期を看取ることができなかった筆者にとっては、重い言葉だ。同じような後悔を抱える飼い主を増やさないためにも、シニア犬に関する情報交換や、経験者との交流の場は必要だと思う。

「19歳、20歳まで生きた犬の中には『毎日行きつけのカフェに行って人と触れ合っていました』という子も多いんです。年老いても、近所に出かけるなどして毎日刺激を与えてあげるのが大切だと思います。だから、シニア犬と飼い主さんが安心して来られるような、『シニアだからこそおいで』という場所にしたいとい思います」(中村さん)

最愛の『マメ』に捧げる

A9_01659.jpg

既に介護状態に入っていた7月17日、マメは久しぶりに帰宅した僕を追って突然駆け出した。これが最後に見せてくれた元気な姿

この原稿、ここまで書いた段階でいったん入稿したのだが、付け加えなければいけないことが起きてしまった。

先に我が家でも要介護犬を抱えていると書いたが、そのフレンチ・ブルドッグのマメ(15歳メス)が、僕がこの原稿を書き終えて自宅に帰った直前に亡くなってしまった。マメが一番なついていた妻がつきっきりだったので、一人寂しく逝かせることにはならなかったが、僕はまた、前の犬を病院で一人逝かせてしまったことをあれだけ後悔したのに、マメを見送ることができなかった。

でも、不思議と前の時ほどは胸が張り裂けるような思いはない。フェードアウトするような緩やかな弱り方から最期を迎えたこともあるが、僕はすぐに、犬は最期に何らかの形で飼い主に感謝の気持ちを伝えるという、中村さんの持論に思いを馳せた。

マメが、僕がまさにシニア犬との暮らしとお別れをテーマにしたこの記事を世に出そうとしているその瞬間に旅立ったのは、あまりにもできすぎた偶然だ。僕が犬の記事を書いたり写真を撮る仕事をライフワークにしているのを、知っていたわけではないだろう。でも、マメは、こうして皆さんに、このタイミングで、この内容の記事の中で報告するという、最も僕らしい形でお別れを言う機会を与えてくれた。

そうに違いないから、この記事をマメに捧げます。ありがとう、マメ!

RX608273.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ホンダ、旭化成と電池部材の生産で協業 カナダの新工

ビジネス

米家電ワールプール、世界で約1000人削減へ 今年

ビジネス

ゴールドマンとBofAの株主総会、会長・CEO分離

ワールド

日米の宇宙非核決議案にロシアが拒否権、国連安保理
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中