最新記事

株の基礎知識

日本株を影で大量保有 日銀のETF買入れが株価に与える影響とは?

2020年11月10日(火)11時15分
宇佐見聖果 ※株の窓口より転載

さらに2001年、長引くデフレから不良債権を抱え痛んだ銀行を救済するためとして、中央銀行としては世界初の試みとなる、民間銀行からの国債買入れを開始します。この国債買入れは一定の効果を得たとの判断のもと、2006年に一旦解除されます。

■リーマンショックからETF購入へ

しかし2008年、リーマンショックを発端とする世界金融危機が勃発。日本経済は再びデフレ不況へ突き落とされます。このとき、株価は戦後最大の下落幅を記録。10月には日経平均株価がバブル崩壊後最安値となる6,994円を記録します。

大ダメージを受けた日本経済の復活を目指して2010年、「包括的な金融緩和政策」という名の大胆な金融政策が始動します。金利や国債購入といったこれまでの政策を設定し直したものに加え、はじめて日銀が株式市場へ働きかける内容を含むものでした。

このときの日銀総裁の記者会見では、株式市場への介入策に関して「リスクプレミアムに働きかける」、つまり、高まっているリスクの低下を促すためだと説明しています。

そして同年12月、日銀は初のETF購入に踏み切ります。以後、設定された年間目標額の枠内で買入を継続。この策が功を奏したのか、株価は上昇基調のもと、2015年4月に2万円台を回復します。

kabumado20201110nichiginetf-chart.png
こうして株式市場は一定の安定を取り戻したわけですが、日銀のETF買いは止まる気配をみせません。当初年間3,000億円で開始されたETF購入枠は2013年、2014年と段階的に引き上げられ、2015年には3.3兆円、2016年は6兆円へと拡大しています。

日銀ETF購入が株式市場に与える影響

膨らみ続ける日銀ETF買入。一体、この動きは株式市場へどういった影響をもたらすのでしょうか。

まずプラス面をみてみると、一定額を供給していることによって日本市場の底支えの役割を担っていると考えられます。当初の目的であった「リスクプレミアムへの働きかけ」はそれなりに効果をもたらし、以降の株価安定にも一定の貢献をしているでしょう。

■株式市場と企業にもたらすマイナス要素

反面、マイナス面が指摘されているのも事実です。直近のOECD(経済協力開発機構)による調査では、日銀はすでに上場企業の40%において10位以内の主要株主となっているとされています。

日銀の購入手法は、日経平均株価、TOPIX、JPX日経インデックス400等の対象指数に基づいて数十ものETFを組み合わせるものです。そのため、銘柄によっては株価の過大評価や、事業戦略を根拠とせず単にETFの主要指数に組み込まれていることに基づく評価がなされている場合も考えられます。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

24年の独成長率は0.3%に 政府が小幅上方修正=

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、ゴールドマン会長・CEO

ビジネス

米株「恐怖指数」が10月以来の高水準、米利下げや中

ビジネス

中国大手銀5行、25年までに損失吸収資本2210億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中