コラム

渦巻く「中国すごい!」論──中国の自尊心はここまで肥大化している

2021年04月06日(火)14時52分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国SNSで人気のロシア青年「伏拉夫」(イラスト)

©2021 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

「アメリカは中国に偉そうに上から物を言う資格はない。中国人はこの手は食わない」

先日の米中外交トップ会談で、中国外交のトップ楊潔篪(ヤン・チエチー)は、ブリンケン米国務長官の批判に強く反論。この発言は直ちに中国国内に広がった。「今の中国は昔のように貧しくない。中国人はもう誰の顔色も気にせず大声で『ノー!』と言える時代なんだ!」。楊の発言は中国SNSであふれるほどシェアされた。ネット通販サイト「淘宝(タオバオ)」も、赤地に白文字で楊の言葉をプリントしたスマホケースやTシャツを即座に売り始めた。

世界第2位の経済大国になり、中国人には金持ちの自覚が生まれた。アメリカのコロナ対策失敗を見て、「中国の特色ある社会主義」に自信も持つようになった。民主や自由は大したことない。カネも儲けられないし、コロナ退治もできない。欧米に偉そうなことを言われる筋合いはない──「もうこの手は食わない」という言葉の背景にはこんな心理がある。

それでは、中国人は何なら食うのか。これは中国ネット上で最も人気の外国人の振る舞いを見れば分かる。

浙江省杭州市在住のロシア青年「伏拉夫(フラフ)」は、TikTok中国版アプリの抖音(ドウイン)に「僕、中国人になりたい!」と短く投稿して300万超の「いいね!」を獲得した。「中国大好き!」「わが中国は本当にすごい!」「すごい! 中国!」の繰り返しでフラフは1000万人以上のフォロワーを集め、1億4000万以上の「いいね!」を得てネットの有名人になった。

「人はメンツが大事、木は皮が大事」という中国のことわざがある。メンツ重視は中国の伝統文化だ。中国人は褒め言葉が好きで、特に外国人の中国賛美はもっと好き。たとえ「褒め殺し」でも構わない。

いま中国ネット上にはフラフと同じ中国賛美の欧米人がたくさんいる。本音かどうかは別にして、中国人は彼らの褒め言葉を聞いて気分を良くし、メンツが保たれたように感じる。ただ、むやみな褒め言葉は、自国に対する客観的な判断を鈍らせる。自信を回復した中国人が食い尽くしているのは、この「禁断の果実」だ。

【ポイント】

我们中国太厉害了!
俺たちの中国はホントすごいぜ!

伏拉夫(フラフ)
ロシア名ウラジスラフ・ユリエビチ・ココレフスキー。1995年、ロシアのアムール州生まれ。2012年に高校卒業後、北京の大学に留学。さまざまな激辛火鍋に挑戦したり、高速鉄道化やキャッシュレス化が進む中国社会を称賛する投稿で人気だが、「金儲けの手段」との見方も。

20210518issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

5月18日号(5月11日発売)は「ALLY IN CHIEF 新章の日米同盟」特集。台頭する中国の陰で新たな「同盟国の長」となる日本の重い責務 [PLUS]菅義偉首相単独インタビュー

プロフィール

ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

ニュース速報

ワールド

中国の無人探査機、火星への着陸に成功=新華社

ビジネス

セブン&アイの米コンビニ買収「違法の恐れ」、規制当

ワールド

台湾、コロナ警戒水準を引き上げ 感染者180人に急

ビジネス

アングル:米零細マスクメーカー、「在庫の山」抱え存

MAGAZINE

特集:新章の日米同盟

2021年5月18日号(5/11発売)

台頭する中国の陰で「同盟国の長」となる日本に課せられた新たな重い責務

人気ランキング

  • 1

    脱・脱日本依存? 韓国自治体が日本の半導体材料メーカー誘致に舵を切っている

  • 2

    パイプライン攻撃のダークサイド、「次は標的を選ぶ」と謝罪

  • 3

    コカ・コーラ、マッキンゼー、ソニー...... ミャンマーの外資系企業、国軍が土地所有のビルから立ち退く

  • 4

    【動画】ゲームにあらず、降り注ぐロケット弾を正確…

  • 5

    日本経済、低迷の元凶は日本人の意地悪さか 大阪大…

  • 6

    捕獲のプロが巨大ニシキヘビに遭遇した意外な現場...…

  • 7

    半月形の頭部を持つヘビ? 切断しても再生し、両方…

  • 8

    「話すことが苦手だった」メンタリストDaiGoの人生を…

  • 9

    インドのコロナ地獄を招いた張本人モディの、償われ…

  • 10

    米物価上昇が意味すること

  • 1

    オーストラリアで囁かれ始めた対中好戦論

  • 2

    メーガン妃を誕生日写真から「外した」チャールズ皇太子に賛否...「彼女に失礼」「ごく普通」

  • 3

    パイプライン攻撃のダークサイド、「次は標的を選ぶ」と謝罪

  • 4

    日本経済、低迷の元凶は日本人の意地悪さか 大阪大…

  • 5

    ノーマスクの野外パーティー鎮圧 放水銃で吹き飛ば…

  • 6

    金正恩が指揮者を公開処刑、銃弾90発──韓国紙報道

  • 7

    脱・脱日本依存? 韓国自治体が日本の半導体材料メ…

  • 8

    【動画】ゲームにあらず、降り注ぐロケット弾を正確…

  • 9

    インドのコロナ地獄を招いた張本人モディの、償われ…

  • 10

    プロポーズを断っただけなのに...あまりに理不尽に殺…

  • 1

    メーガン・マークル、今度は「抱っこの仕方」に総ツッコミ 「赤ちゃん大丈夫?」「あり得ない」

  • 2

    「お金が貯まらない家庭の玄関先でよく見かける」1億円貯まる人は置かない『あるもの』とは

  • 3

    オーストラリアで囁かれ始めた対中好戦論

  • 4

    親日家女性の痛ましすぎる死──「日本は安全な国だと…

  • 5

    メーガン妃を誕生日写真から「外した」チャールズ皇…

  • 6

    ヘンリー王子、イギリス帰国で心境に変化...メーガン…

  • 7

    韓国、学生は原発処理水放出に断髪で抗議、専門機関…

  • 8

    パイプライン攻撃のダークサイド、「次は標的を選ぶ…

  • 9

    ビットコインバブルは2021年ほぼ間違いなく崩壊する

  • 10

    知らない女が毎日家にやってくる──「介護される側」…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中