コラム

「今でも共和党最大の人気者」トランプと民主党の密約などあり得ない

2021年02月03日(水)14時00分

マッカーシー下院共和党院内総務(右)は一時トランプを非難したが……TOM BRENNERーREUTERS

<起訴されない保証と引き換えにおとなしくするという手打ち説はでたらめ。謀反を起こした重鎮議員も中間選挙に向けトランプにひれ伏した>

トランプ前大統領のアカウントを停止したフェイスブックとツイッターの決定は、形を変えた第45代大統領への援護射撃だ。

1月20日に退任の日を迎えたトランプは、側近や家族を前に10分間のスピーチを行い、大統領専用機に乗り込んだ。このときのトランプは敗北に打ちひしがれた様子だった。顔色は悪く、体重も減ったように見えた。

アメリカ史上最も公正な選挙を「盗む」ことに失敗したトランプは、数週にわたり怒り狂った末に疲れ果て、今にも自殺しそうだったという説もある。自国政府に対する流血の反乱を引き起こしたトランプに嫌気が差した政権高官や閣僚は、正式な任期切れを待たずに次々と辞任。身内だったはずの共和党下院議員も10人が賛成に回り、トランプは2度弾劾訴追された史上初の大統領となった。

それから2週間で何という変わりようだろう。今や旬の話題はトランプの追放ではなく復活だ。

トランプは上院の弾劾裁判で有罪評決を受ける最初の大統領になるより、現代のクリーブランド──「連続ではない2期」を務める大統領になる可能性のほうが高い。筆者はそうなる確率は少なくとも25%あるとみている。2024年に共和党の大統領候補になる確率は50%だ。

一気に流れが急変した背景には、トランプの行動の変化がある。大統領退任後に起訴されない保証と引き換えに、おとなしくしているという条件で民主党と密約があったのではないかという噂も出ている。だが、民主党がそんな取引をするとはどう考えてもあり得ない。

むしろトランプの行動が変わった理由は、ごく単純な話だろう。SNSというコミュニケーションの主要ツールを奪われたせいで、衝動的に怒りが湧き上がっても、それを表現する「口」がなくなってしまったのだ。

暴言が鳴りを潜めたおかげで、共和党はトランプと交わり、支持する口実ができた。トランプは依然としてアメリカ史上、共和党内で最も人気のある人物であることに変わりはない。

次の重要な選挙日程は、共和党員同士が争う22年中間選挙の予備選だ。トランプの弾劾に賛成したり、あるいは批判的な言葉を口にしただけで、反トランプと見なされた政治家は予備選で討ち死にする公算が大きい。

ケンタッキー州のある共和党当局者は、トランプ信者の共和党員の間の支持は大統領選当時より厚いと語り、現時点で共和党の最高位にある上院議員(ミッチ・マコネル院内総務)への問責決議まで口にした。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、防空強化でG7の協力要請 NATOが取

ビジネス

米指数ファンドからブラックリスト中国企業に多額資金

ワールド

イスラエルの長期格付け、「A+」に引き下げ=S&P

ビジネス

仏ロレアル、第1四半期売上高は9.4%増 予想上回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story