コラム

コロナ感染拡大の中の東京五輪、閉会式はバーチャルで行うべき

2021年07月28日(水)16時00分

そこで問題となるのが閉会式です。賛否両論のある今回の東京五輪夏季大会ですが、この閉会式で説得力のあるメッセージが出せれば、国際的にも国内的にも評価を改善することができるかもしれません。反対に、大会が成功だったなどと自画自賛するような態度を見せるのであれば、ネガティブな評価を固定しかねないと思います。

まず、閉会式はリアルではなく、バーチャルで行うべきでしょう。大会として曲がりなりにも日程を消化できたとして、閉会式では、無理に一同に会する必要はありません。世界中のビジネス界がリモートで会議を行なっているように、五輪の閉会式もネットで結べば良いのです。既に帰国した選手たちも含めて、仮想の世界でつながり、そのことでパンデミック下の夏季五輪という異例な大会を歴史に残すべきです。

人類団結のメッセージを

その際のメッセージとしては、やはりコロナ禍という危機に対して、人類として団結することだと思います。

感染対策において団結し、お互いに厳しい国境管理を当分は我慢し、お互いにワクチンを融通していく、また新たな予防薬、治療薬を国際協力で実現していこう、また改めて全世界の医療従事者に感謝の姿勢を見せよう、そんな内容が自然ではないかと思います。さらに言えば、ワクチン接種の促進というメッセージも是非、この五輪閉会式という場で、世界に向けて発信してもらえればいいと思います。

閉会式の主役は、通常であれば選手たちであり、また次回開催都市を紹介するのも重要な要素とされます。ですが、今回については、主役はパンデミック下の五輪を最後まで支えたボランティア、そして医療従事者という考え方を取るべきでしょう。そして、その方々を顕彰する工夫が必要だと思います。

いずれにしても、中盤から後半戦へ向けたオリンピック競技については、予定通り続行できるのか、また続行して良いのか、厳しい判断の連続となると思います。仮に、相当程度厳しい状況の中で閉会を迎えるという事態も想定し、その場合でも説得力のあるようなバーチャル閉会式の企画を、シンプルなもので良いので用意しておくべきだろうと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英賃金上昇率、12─2月は前年比6.0% 鈍化続く

ビジネス

出光、富士石油株を追加取得 持分法適用会社に

ワールド

アングル:「すべてを失った」避難民850万人、スー

ビジネス

日経平均は大幅続落、米金利上昇や中東情勢警戒 「過
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 5

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 6

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 7

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story