コラム

コロナで拡大した格差をどう解消する? 韓国次期大統領候補たちの提案

2021年02月01日(月)14時43分

自営業者への損失補填を義務化することを提案する丁世均首相(1月28日) Heo Ran- REUTERS

<ベーシックインカムのような一律給付型、儲かった企業と損をした企業の利益シェア、政府による損失補償などが挙がっているが、具体的政策に落とし込めるものはどれか>

*このコラムの内容は筆者個人の見解で、所属する組織とは関係ありません。

文在寅大統領の任期が1年4カ月しか残っていない現在、与党の次期大統領候補等を中心に、新型コロナウイルス感染症により発生した二極化の問題や格差を解消するための対策案が次々と発表されている。

次期大統領候補として、最近の世論調査で最も高い支持率を得ている李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事は、ベーシックインカムの考え方に基づいた「災難基本所得」を継続して推進している。彼は、京畿道の城南市長に在任していた2016年に、城南市に居住している満24歳のすべての若者に四半期ごとに25万ウォン(約22,200円)の地域通貨(1年に4回、合計100万ウォン)を、「青年配当」という名称で支給した。

2018年6月に京畿道知事に当選してからは、城南市で実施した「青年配当」を「青年基本手当」という名称に変更し、2019年から京畿道の満24歳のすべての若者に支給した。

さらに2020年5月には新型コロナウイルス感染症に対する緊急経済対策として、京畿道に居住しているすべての人(外国人を含む)に一人当たり10万ウォン(約9,360円)の災難支援所得を支給し、今年の2月には第2次災難支援所得を支給すると発表した。

プラットフォーム企業の利益を分配

李在明京畿道知事は、あるテレビ番組に出演し、今後「青年基本手当」の適用対象を京畿道のすべての住民に拡大し、将来的には韓国国内のすべての人々に定期的に一定金額の手当を支給する、いわゆるベーシックインカムを導入したいと抱負を語った。

一方、親文在寅派の李洛淵(イ・ナギョン)「共に民主党」代表は、新型コロナウイルス感染症による所得の二極化を乗り越えるための対策として「コロナ利益共有制」の導入を進めている。新型コロナウイルス感染症による非対面取引の活性化で多くの収益を上げたプラットフォーム業種等の企業が新型コロナウイルス感染症の影響により被害を受けた中小企業と利益を分かち合うことで所得の再分配を促す制度だ。

李洛淵代表は1月12日、仁川新港を訪れ「コロナ禍の二極化を克服するためには、私たちの制度や財政、福祉に頼るだけでなく、民間でも痛みを分かち合うことが必要だ」と述べた。また、「文在寅大統領の大統領選挙公約であった『協力利益共有制」の内容を見ると、インセンティブを提供し、共有を誘発する方式があった。今回もそのような方式を援用することができるだろう」と話した。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロイターネクスト:米第1四半期GDPは上方修正の可

ワールド

プーチン氏、5月に訪中 習氏と会談か 5期目大統領

ワールド

仏大統領、欧州防衛の強化求める 「滅亡のリスク」

ビジネス

米キャタピラー、4─6月期の減収見込む 機械需要冷
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story