コラム

マスクはつけず手は洗いまくったイギリス人

2021年05月15日(土)17時00分

イギリスでは当初から「接触感染」の危険が強調され過ぎていた Phil Belfast-REUTERS

<イギリスではコロナの接触感染を過剰に危険視する人が多かったが、いま思えば見当違いの対策だったかも>

ほぼ1年前に僕は、日本よりもイギリスのほうが新型コロナウイルスの感染拡大がずっと早くて深刻なのは何とも不可解だという記事を書いた。数々の理由から、日本特有の条件によって感染リスクは日本のほうがより高いだろうと、僕は思っていた。

もちろん、僕たちはいまだにイギリスの状況があんなにも悪化したわけを正確につかめていない。でも、イギリスでは当初からずっと、「接触感染」の危険が強調され過ぎていたことが、今になって明らかになりだした。最初の頃は、はっきりとこう言われていた。手を洗いなさい。石鹸を使いなさい。20秒は洗うこと。「つまり『ハッピーバースデイ』の歌を2回歌えるくらいの時間です」。もしも共用バスルームを使っているなら、手洗い後には肘を使うなりペーパータオルをかぶせるなりして、蛇口ハンドルに触れないようにして水を止めること。

もしも近くに流しがなければ、手指消毒剤を使いなさい。

イギリスでは、なかなかマスクが広がらなかった。たとえば店内などでのマスク着用は、何カ月も義務付けられていなかった。正確に言うと義務付けられたのは7月24日、この状況が国家的非常事態であり、全国的なロックダウン(都市封鎖)を実施するに値すると周知されてから実に4カ月たってからのことだった。

イギリスは手洗いを重視

これは、国によって微妙に異なる点の1つで、普段だったら気付きもしないもの。イギリスでは、手洗いが重視された。僕だってそうだ。僕はスーパーマーケットのセルフレジにとてもナーバスになっていた。みんなが同じタッチスクリーンの、まさに同じところをタッチするからだ(レジ袋5ペンスを購入しますか?「いいえ」)。

僕は店を出るやいなや手を消毒した。たとえムズムズしても顔を手で触らないように注意していた。そして帰宅するとすぐに手を洗い、手を清潔にするまではドアノブや電気スイッチに触れないように気をつけていた。それから買ってきた物を片付けて、店員やほかの客がそれに事前に触っていた可能性もあるので、念のためもう一度手を洗った。僕たちは、シリアルのパッケージからATMのボタンに至るまで、触れる物の全てにコロナウイルスが潜んでいるようなイメージを思い描いていた。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。アドレスはjhbqd702@yahoo.co.jp

ニュース速報

ワールド

G7、人権・香港・台湾などで中国に懸念表明 コロナ

ワールド

東京五輪、G7全首脳が開催支持と菅首相 

ワールド

G7、大規模景気支援「必要な限り」継続 過去の過ち

ワールド

G7声明、途上国の温暖化対策に拠出増額 具体策は盛

MAGAZINE

特集:世界があきれる東京五輪

2021年6月15日号(6/ 8発売)

国民の不安の声や専門家の疑念は無視して
「安心・安全」を繰り返す日本を世界はこう見ている

人気ランキング

  • 1

    4000回の腕立て伏せを毎日、1年間続けた男...何を目指し、どうなったのか

  • 2

    EVシフトの盲点とは? トヨタが「水素車」に固執するこれだけの訳

  • 3

    歴史に置き去られた世界の廃墟たち...不気味で美しき9つの場所

  • 4

    話題の脂肪燃焼トレーニング「HIIT(ヒット)」は、心…

  • 5

    誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に

  • 6

    【ファクトチェック】肛門PCR検査は中国で義務付けら…

  • 7

    デーブ・スペクター「日本は不思議なことに、オウン…

  • 8

    将来の理数系能力を左右する「幼児期に習得させたい…

  • 9

    ワクチン副反応、実は若い男性で心筋炎が多発 ファ…

  • 10

    ノーベル賞を受賞した科学者の私が、人生で後悔して…

  • 1

    4000回の腕立て伏せを毎日、1年間続けた男...何を目指し、どうなったのか

  • 2

    国際交流で日本にきた中国人200人に「裏切り者」のレッテル

  • 3

    デーブ・スペクター「日本は不思議なことに、オウンゴールで五輪に失敗した」

  • 4

    ビットコインを暴落させたマスクにアノニマスが「宣…

  • 5

    EVシフトの盲点とは? トヨタが「水素車」に固執す…

  • 6

    山口香JOC理事「今回の五輪は危険でアンフェア(不公…

  • 7

    武漢研究所は長年、危険なコロナウイルスの機能獲得…

  • 8

    水深6000メートル超の超深海帯で死肉をたいらげる新…

  • 9

    アジアゾウの群れが大都市の目前に、警察など400人が…

  • 10

    「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型…

  • 1

    4000回の腕立て伏せを毎日、1年間続けた男...何を目指し、どうなったのか

  • 2

    脳が騙される! 白黒の映像が、目の錯覚でフルカラーに見える不思議な体験

  • 3

    脱・脱日本依存? 韓国自治体が日本の半導体材料メーカー誘致に舵を切っている

  • 4

    国際交流で日本にきた中国人200人に「裏切り者」のレ…

  • 5

    デーブ・スペクター「日本は不思議なことに、オウン…

  • 6

    ホテルで24時間監視、食事はカップ麺の「おもてなし」…

  • 7

    東京オリンピックの前向きな中止を考えよ

  • 8

    閲覧ご注意:ネズミの波がオーストラリアの農地や町…

  • 9

    武漢研究所は長年、危険なコロナウイルスの機能獲得…

  • 10

    捕獲のプロが巨大ニシキヘビに遭遇した意外な現場...…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中