コラム

世界でもっとも多い統治形態は民主主義の理念を掲げる独裁国家だった

2021年03月23日(火)17時33分

世界の多くの国が選挙独裁主義に移行する危険性をはらむ...... bizoo_n-iStock

<最新の民主主義指標から見ると、現在、もっとも多い統治形態は、選挙独裁主義で、62ヵ国、世界人口の43%となっている...... >

本稿は埼玉大学国際シンポジウム「パンデミック時代における科学技術と想像力」(2021年3月27日、28日)の基調報告として発表する内容のうち、現状整理の部分をふくらませた。シンポジウムではこれからの課題と可能性に主に触れる予定である。無償のウェビナーで申し込みは3月25日まで延期となったので関心ある方のご参加を歓迎する。

最新の民主主義指標から見える民主主義から権威主義への移行

民主主義の危機あるいは衰退が叫ばれて久しい。最近、公開された民主主義の指標として知られるイギリス、エコノミスト誌Intelligence Unitの「民主主義指数」とデンマークのV-Demの最新版ではいずれも民主主義の後退が確認された。特に民主主義指数では2006年に最初の指標を公開して以来最悪の数値となった。特に市民の自由の制限や反対意見への抑圧が見られたと報告している。

民主主義指数では、統治形態を完全な民主主義(Full democracies)、瑕疵のある民主主義(Flawed democracies)、ハイブリッド体制(Hybrid regimes)、権威主義体制(Authoritarian regimes)の4種類に分類しており、今回の結果では民主主義(完全な民主主義、瑕疵のある民主主義)は国の数では55%、人口では49.4%となった。国の数ではかろうじて過半数を上回っているものの、人口では過半数を割っている。

V-Demでは統治形態を自由民主主義(Liberal Democracy)、選挙民主主義(Electoral Democracy)、選挙独裁主義(Electoral Autocracy)、完全な独裁主義(Closed Autocracy)の4つに分けている。今回の調査で民主主義(自由民主主義、選挙民主主義)の人口は32%に減少した。世界の人口の3分の2が非民主主義の国で暮らしていることになる。

下図はV-Demの4つの統治形態の国の数と人口の推移である。レポートでも指摘しているが、選挙民主主義が減少し、入れ替わるように選挙権威主義が増加しているのがわかる。現在、もっとも多い統治形態は、選挙独裁主義で、62ヵ国、世界人口の43%となっている。

ichida0323b.jpg

V-Demでは選挙民主主義から選挙権威主義への移行パターンを下記のように解説している。
 1.選挙によって政権を取る
 2.メディアと市民社会を弾圧する
 3.社会を分断する
 4.敵対者を貶める
 5.選挙をコントロールする

『民主主義の死に方―二極化する政治が招く独裁への道―』(スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジラット、新潮社)や、以前の記事で取り上げたのとほぼ同じ手順が踏襲されているようだ。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『新しい社会を生きるためのサイバー社会用語集』(原書房)など著作多数。ツイッター

ニュース速報

ビジネス

物価圧力生じるのは22年終盤、利上げはその後=イン

ビジネス

三菱UFJFG、4─6月期純利益3830億円 通期

ビジネス

ゴールドマン、投資銀行部門の若手社員の給与引き上げ

ワールド

アングル:死別・失業・債務、インドの世帯を襲うコロ

MAGAZINE

特集:モデルナの秘密

2021年8月 3日号(7/27発売)

コロナワクチンを高速開発したベンチャー企業モデルナの正体とmRNA治療薬の可能性

人気ランキング

  • 1

    東京五輪、中国人バド選手が韓国ペアとの試合中に「罵倒」連発で騒動に

  • 2

    福山雅治ほどの温厚な人を怒らせた「3つのスイッチ」とは

  • 3

    1匹だけみにくい子猫、病気と思ったら「オオカミ」だった

  • 4

    「エッ、これが最後ニャの?」 トウモロコシ・大豆相場…

  • 5

    「お尻がキラキラ光るクモ」ではなく、無数の赤ちゃ…

  • 6

    今度は米西部でバッタが大発生、繰り返される厄災に…

  • 7

    地球上に残された「最後の秘境」で自然の静寂に耳を…

  • 8

    コーチもいないオーストリアの数学者が金メダル、自…

  • 9

    パリ五輪ロゴの出会い系アプリ激似説がネットで再燃

  • 10

    ドラァグクイーンと子供のふれあいイベントが抗議殺…

  • 1

    東京五輪、中国人バド選手が韓国ペアとの試合中に「罵倒」連発で騒動に

  • 2

    1匹だけみにくい子猫、病気と思ったら「オオカミ」だった

  • 3

    いくら太陽光発電所を作っても、日本の脱炭素政策が成功しない訳

  • 4

    「競技用ショーツが短すぎて不適切」英パラ代表選手…

  • 5

    チベットの溶ける氷河から、約1万5000年前の未知のウ…

  • 6

    競泳界の「鉄の女」が水の上を歩く奇跡の一枚

  • 7

    東京五輪、視聴率苦戦の根本理由

  • 8

    ドラァグクイーンと子供のふれあいイベントが抗議殺…

  • 9

    地球帰還のベゾス氏、空気を読まない発言に怒りが集…

  • 10

    なぜ日本男子は世界で唯一、女性より幸福度が低くなる…

  • 1

    東京五輪、中国人バド選手が韓国ペアとの試合中に「罵倒」連発で騒動に

  • 2

    1匹だけみにくい子猫、病気と思ったら「オオカミ」だった

  • 3

    加害と向き合えない小山田圭吾君へ──二度と君の音楽は聴きません。元いじめられっ子からの手紙

  • 4

    20万円で売られた14歳日本人少女のその後 ──「中世に…

  • 5

    「無駄に性的」罰金覚悟でビキニ拒否のノルウェー女…

  • 6

    「1日2個、カットしてスプーンで食べるだけ」 メンタル…

  • 7

    「競技用ショーツが短すぎて不適切」英パラ代表選手…

  • 8

    人間のオモチャにされたイルカ死ぬ──野生動物に触る…

  • 9

    韓国で、日本製バイクの販売が伸びている理由

  • 10

    いくら太陽光発電所を作っても、日本の脱炭素政策が…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中