ニュース速報

ビジネス

シンガポール中銀、予想外に金融政策引き締め インフレリスク対応

2022年01月25日(火)13時17分

1月25日、シンガポール金融管理局(MAS、中央銀行)は、インフレリスクが高まっているとして、金融政策の引き締めを決定した。シンガポールのMASで2017年6月撮影(2022年 ロイター/Darren Whiteside)

[シンガポール 25日 ロイター] - シンガポール金融管理局(MAS、中央銀行)は25日、金融政策の引き締めを決定した。世界的な供給制約や需要改善を背景にインフレ圧力が高まる中、4月に予定される半期ごとの定例見直しを待たずに行動し、市場にとってはサプライズとなった。

貿易に依存するシンガポール経済は、世界的なインフレ動向の影響を受けやすい。

MASは金利ではなく、主要貿易相手の通貨に対してシンガポールドルを非公開バンドの中で上げ下げさせることによる為替レート設定を通じて金融政策を運営。「シンガポールドル名目実効為替レート(SドルNEER)」として知られる政策バンドの3つのレバー(傾き、中央値、幅)を通じて政策を調整している。

MASは政策バンドの傾きを小幅に引き上げると表明。政策バンドの幅と中央値に変更はないとした。

MASが定例見直しを待たずに行動するのは原油価格急落を受けて政策を緩和した2015年1月以来。

OCBCの国債調査・戦略責任者のセレナ・リン氏は今回は傾きが「若干引き締め」られただけとし、4月の追加引き締めを予想した。

前日に発表された12月のコアインフレ率は約8年ぶりの伸びを記録した。

MASは声明で、昨年10月の「予防的」な引き締めを今回強化したと説明。「中期的物価安定の確保に適切」な措置だと評した。

MASは4月に半期に1度の政策見直しを行う。エコノミストの大半は引き締めを決定すると見込んでいる。

シンガポールドルは予想外の動きを受け、対米ドルで1.3425Sドルと、2021年10月以来の高値を付けた。

MASが新たに示した今年のコアインフレ率の予測は2.0─3.0%と、従来の1.0─2.0%から引き上げた。総合インフレ率の予測も1.5─2.5%から2.5─3.5%に上方修正した。

「供給制約が改善することで、コアインフレ率は上期の高止まりした状態から下期に鈍化する見込みだが、リスクは引き続き上振れに傾いている」との見解を示した。

今年の経済成長率予測は3─5%に据え置いた。

OCBCのリン氏は「22年はシンガポールにとって財政と金融面のダブル引き締めの年になる」と述べた。

シンガポールは2月18日に予算案を発表する予定で、その際に物品・サービス税の引き上げ時期を明らかにする見通しだ。

21年の国内総生産(GDP)は前年比7.2%増と10年以上ぶりの高い伸びを記録。5.4%減と過去最悪のマイナス成長となった20年から急回復を遂げた。政府は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による影響を軽減するため、過去2年間に1000億シンガポールドル超を支出している。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正-4月米フィラデルフィア連銀業況指数、15.5

ビジネス

全国コアCPI、3月は+2.6% 生鮮除く食料の伸

ビジネス

米アトランタ連銀総裁、インフレ進展停滞なら利上げに

ワールド

パレスチナ国連加盟、安保理で否決 米が拒否権行使
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中