ニュース速報

ビジネス

鉱工業生産、4カ月ぶりプラス オミクロン株など下振れリスク多く

2021年11月30日(火)11時41分

経済産業省が30日発表した10月鉱工業生産指数速報は前月比1.1%上昇となった。4カ月ぶりの上昇。ロイターの事前予測調査では同1.8%上昇と予想されており、これを下回った。写真は2017年1月、横浜で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 30日 ロイター] - 経済産業省が30日公表した10月の鉱工業生産指数は、部品不足が響いていた自動車の挽回生産などで4カ月ぶりのプラスに転じたが、 調査時点では新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の影響は織り込まれておらず、先行きの下振れリスクは多い。市場関係者の間では景気の下振れリスクが指摘されている。ロイターが集計した民間予測中央値の前月比1.8%上昇で、公表された数字はこれを下回った。

<自動車増産でも企業マインドは弱気、基調判断据え置き>

鉱工業生産指数は新型コロナの影響で急激に落ち込んだ昨年春以降、緩やかな回復基調が続いていたが、今年7月以降は半導体や部材の不足が響き、3カ月連続の減産となっていた。10月は増産に転じたものの、「これまでの低下を回復するほどの上昇にはなっていない」(同)。

自動車など輸送用機械が前月比で15.4%上昇、半導体製造装置などの生産用機械が同4.2%上昇、汎用・業務用機械が同3.2%上昇だった。自動車は半導体不足や東南アジアでの感染拡大による部材供給不足の影響が緩和され、4カ月ぶりの増産となった。

一方、無機・有機化学が同3.3%低下、鉄鋼・非鉄が同2.3%低下、電子部品・デバイスが同1・0%低下となった。電子部品の減産は在庫要因で、経産省では「スマートフォン向け需要が低下しているかどうかは判断できない」としている。

企業の生産計画を集計して算出される生産予測指数は11月が前月比9.0%上昇、12月が同2.1%上昇だった。自動車などの挽回生産が続く見通しだが、予測には上振れ傾向があり、これを補正した試算値は11月は同4.2%上昇となっている。

経済産業省は生産の基調判断を「足踏みをしている」に据え置いた。

生産計画を上方修正している企業の割合から下方修正した企業の割合を差し引いた生産活動マインド指標(DI)は11月がマイナス10.2で、10月のマイナス13.0から上昇しているが、マイナス5を下回ると景気後退局面入りの可能性が高いと経産省では判断しており、「企業の生産マインドはまだ弱気」(同)とみている。

<供給制約から景気下振れにフェーズ変化の可能性>

みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「自動車の挽回生産は想定通りだが、化学や鉄鋼など素材系が弱くなっており、これまでの供給制約による減産ではなく、景気・需要の下振れにフェーズが変わりつつある可能性がある」と懸念を示している。

大和証券の末廣徹シニアエコノミストは「電子部品の減産については、巣ごもり需要の一服などが想定される」と分析している。

前週南アフリカで発見されたオミクロン株の影響も不透明要因だ。大和証券の末廣氏は「人の国際移動が制限されることは世界経済にネガティブで、景気下押し要因」と語った。

*経産省の発表資料は以下のURLでご覧ください。

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/index.html [http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/index.html]

※過去の関連記事はでご覧になれます。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中