World Voice

イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

イタリア人にとってのマスク義務とエアロゾル

iStock-マスクを外しアペリティーボを楽しむ人々

| 今、またマスクの着用義務が課せられたイタリア人にとってのマスク

イタリアでは、2020年10月7日緊急政令第125号が出され、第1条 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の延長に緊密に関係する緊急措置によって、
「私的住居以外の閉鎖空間及び屋外のあらゆる場所での着用義務を考慮し,マスクを常に携帯すること」
2020年3月25日緊急政令第19号第1条に修正を加えた。
この制令は、2021年1月31日まで引き続き適用される。

これまで、マスクの着用をイタリア全国で義務化する政令と州が出す州知事令などが各都市ごとに規制が違って、バラバラであった。

「屋内のみ」や「交通機関内を含む公共の屋内の場や継続的に対人距離を維持できない場合のみ」や「屋内外問わず、常に」などであった。
4月26日の首相令では、
「第3条 全国における情報及び予防措置
2項 新型コロナウイルスの感染拡大抑止のため,交通機関内を含む公共の屋内の場や継続的に対人距離を維持できない場合には,呼吸器を防護するための用具(注:マスク)の使用を全国で義務化する。6歳以下の子供,マスクの継続的な利用ができない障害者,また、このような人々のケアにあたる人々は当該義務の対象ではない。」
とあるが、屋外でのマスク着用義務については言及されていないため、多く首都ローマを含む多くの地域では、マスクをせずに外出して散歩をする人の姿も見られた。

| 現在の全国レベルでのマスク着用義務化のまとめ

【屋外】継続して(同居者ではない)他人から隔離された状態が保障される場合を除き,屋外のあらゆる場所でマスクの着用が義務づけられる。
【屋内】私的住居を除く屋内のあらゆる場所でもマスクの着用が義務となる。一人であるいは同居者と自家用車で移動する場合,着用は義務づけられないが,タクシーや同居者でない友人等と自家用車で移動する場合は、マスクの着用が義務づけられる。
【例外】スポーツ活動中,6歳以下の子供,マスク着用に適さない疾患や障害を持つ者
【罰金】罰金は400ユーロから1,000ユーロ 

となっている。

2020年10月13日付の首相令では、
第1条 全国土における感染拡大防止緊急措置
1 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、マスクの常時携帯、及び私的住居以外の閉鎖空間及び屋外のあらゆる場所での着用を義務付ける。場所の性質上、または状況によって、同居人ではない者からの隔離状態が継続的に保障される場合は(着用義務の)例外とする。また、経済・生産・行政・社会活動のための感染予防プロトコールやガイドライン、また飲食に関するガイドラインはそのままとする。なお、以下の者は、上記の義務を免除される。
 a) 運動中の者
 b) 6歳未満の子供
 c) マスクの着用に適さない疾患や障害を持つ者。また、上記の者の世話・介助を行う上でマスクの着用が不適当な者。
私的住居内であっても、同居人ではない人が居合わせる場ではマスクを着用することを強く推奨する。
という新首相令が現在適応されている。


| 北ヨーロッパと南ヨーロッパにおけるマスク着用に関して

ヨーロッパ圏の人々はパンデミック以来、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための対策として、マスクを着用することを義務化された事について、時間とともにマスクに対する意識の変化もあった。
しかし、北ヨーロッパと南ヨーロッパの間には明確なギャップがある。


YouGovとImperialCollegeLondonのInstituteof Global Health Innovation(IGHI)は、29か国でCovid-19に対する意識調査でマスクをする行為に関するデータを収集し、毎週約21,000人にインタビューした。繁栄チャート

調査の結果によると、フィンランド、スウェーデン、デンマークを含む北欧諸国の市民は、公の場でマスクを着用することを望んでおらず、彼らの意識や意見は時間の経過しても、ほとんど変わっていないと述べた。

しかし、西ヨーロッパの一部の国(フランス、ドイツ、スペイン、イタリア)では、パンデミックの初めに人々は公の場でマスクを着用することをより嫌がったが、状況の進化は徐々に彼らの考えを変えたことが窺える。

イタリア、スペインでは、公共の場でマスクを着用した人の数が急増し80%を超えた。
一方、北方欧諸国では、最新の調査回答が示された一、10%以下の使用率である。

緊急事態の開始以来最も多くの死者を出した英国ではあるが、そもそもマスクをしている人が少ない。その使用率は0%強から40%弱と、大陸ブロックの他の近隣国のレベルに達することはなかった。

ヨーロッパ諸国で最初にマスクの使用を義務付けたのが、チェコ共和国は3月18日、そしてスロバキアは3月25日であった。それぞれの国では、スーパーマーケット、薬局、公共交通機関でもマスクの着用義務を課していた。それに続いて、ボスニアとヘルツェゴビナは、3月29日に市民に家の外で口と鼻を覆うマスクまたは保護装置を着用するように強制した。
それ以来、ヨーロッパ中のその他の近隣諸国の公的機関は、さまざまな程度の重大度でさまざまな規則を導入していった。

オーストリアは、パンデミックの始まりの時期は、最も厳しい規制をかけた。セバスチャン・クルツ首相は、オーストリアの人々に、すべての公共スペースでのマスクの「強制使用を導入」することによって感染拡大を防ぐよう国民に理解を求めた。初めにきつく強制力を持って縛りをつくり、後で徐々に緩めて調整するというやり方である。

ポーランドでも同様の対策が導入されていたが、5月末に緩められた。人と人との安全距離が2メートルに保たれていれば、屋外でマスクを着用する必要をなくした。

フランスの公共交通機関ではマスクが義務付けられている。しかし人口の多い都市では負担が大きすぎるため、すべての屋内公共スペースに対策が適用された。フランスの現在の規則は、ヨーロッパ全体で最も厳しくないものの1つだ。
マスクの着用義務を巡ってのトラブルで、残念な事件もあった。南西部にあるバイヨンヌでマスクの着用を拒否した乗客にマスクをするように注意をしたバスの運転手が、この乗客に殴打され亡くなった。

英国、スコットランド、北アイルランドの公共交通機関でもマスクが義務付けられており、スコットランドの場合と同様に、7月24日から英国のスーパーマーケットではマスクの着用が義務付けらた。

スペインでは、マスク着用の問題は、スペイン国内でマスク反対派グループとの対立があった。
おそらく、世論におけるこの緊張の指標の1つは、マラガの南にあるフエンギローラで予定されていた歌手のオマールモンテのコンサートが中止になった。
実際、前回のチャリティーイベントでこのアーティストがマスクを着用していなかったことが明らかになったからである。
現在、スペイン当局は、2メートル以上の距離を保つことが不可能な場合、屋内と屋外の両方の公共スペースで、6歳以上のすべてのスペイン人にマスクの使用を義務付けている。
カタロニア、そして最近ではアラゴン、ラリオハ、エクストレマドゥラ、ナバラ、ムルシア、そしてバレアレス諸島も、人々の距離に関係なくマスクを着用する義務を導入した。


| コロナウイルス陽性患者が緊急治療室で咳をした場合はどうなるか?

コロナウイルスはこうやって空中を移動する。

最大の唾液滴(液滴)は重力によって2メートル以内で地面に落下する。咳だけでなく、話したり呼吸したりするだけで放出される微細な液滴(エアロゾル)は、空中に長く残り蒸発していく。バンビーノゲス小児病院の研究者によって作成された3Dシミュレーションでは、環境内の生物学的粒子の動きと、それらの分散に対する通気システムの影響を正確に再現することに成功したという。


研究者らは、「Computational Fluid Dynamics」(CFD)ツールを使用して、エアレーションシステムを備えた小児救急室の待合室を仮想的に再現した。
内部にはマスクのない子供6人と大人6人がいるという設定。この仮想環境空間では、咳をした後30秒間の液滴とエアロゾルの挙動を3つの異なるシナリオで追跡している。
それは、生物学的粒子の空気中の分散を調節する一連の物理的パラメーター(速度、加速度、量、液滴の直径、乱流、空調によって生成される結合運動)を使用して、蜜な環境空間でどんなことが何が起こるかを正確に再現する3Dシミュレーションである。
エアレーションシステムがオフの場合、標準速度より2倍の速度でウイルスは広がり、密空間にいる各人がどれだけの汚染された空気を吸い込んでしまうのかが視覚的に分かるものであった。

イタリア環境医学協会(SIMA)との共同研究で実施されたこの結果は、科学雑誌に掲載さた。


明らかになったのは、潜在的に伝染性の粒子を分散させるために強制的に換気をするということが重要な役割を果たしているということである。
※換気についての注意
空気洗浄機は、病院などの大規模な建物の場合は、外の空気を建物内部に運び綺麗な空気を循環させるものが一般的には取り付けられている。このタイプの換気である必要がある。
家庭や店舗に設置されているエアコンやヒートポンプのほとんどは、スプリットタイプではないため、新鮮な空気を運ばず室内に既存している空気をただ巡回させているリサイクルタイプがほとんど。簡単に言えば、窓を開けて換気をすることを強く推奨している。


| 換気の重要な役割

研究結果
密室の空調流量を2倍にすると、汚染された粒子の濃度が99.6%減少することを示した。
ウイルス濃度が高いほど、伝染の可能性が高くなる。部屋の空気の入れ替え換気は重要。特に閉鎖された換気の悪い環境に関してはリスクが存在することを示した研究結果。混雑した状態の屋外でも同じことが言える。軽度の症状のあるコロナウイルス陽性者と一緒に閉鎖環境に数分間滞在し距離を保っている場合は、感染のリスクが高くなることはおそらくないが、滞在期間が長く、特に閉鎖された換気の悪い環境下では感染のリスクが高くなる。

パンデミックの開始以来広く議論されてきた伝染の経路の1つとして、粒子エアロゾルが考えられ、世界中の科学者の間で大規模な議論が進行中である。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ