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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

コロナウイルスとの共存

画像: XH4D_iStock

オーストラリアでは新型コロナウイルスに対しての規制が徐々になくなりました。 以前はどの施設に入る場合もチェックインが必要でしたが、ほとんどの場所でチェックインの必要がなくなりました。レストラン、バー、スポーツ観戦などに入る場合は最低2回のワクチン接種が義務付けられています。マスクの着用は空港や医療施設では義務付けられていますが、それ以外の場所では義務化はされていません。国内線に乗る場合も以前はPCR検査か迅速抗原検査が必要でしたが、現在は検査の必要はありません。

オーストラリアは新型コロナウイルスが広がり始めた2年前は公衆衛生とバイオセキュリティの理由から法的に州境や国境を封鎖したり、マスクや予防接種を義務化していました。これらの政策によりオーストラリアは多くの国と比べて新型コロナウイルスの感染の広がりを抑えることに成功しました。しかし2021年の年末より、オーストラリアの18歳以上の新型コロナウイルスワクチンの接種率が目標に達したことにより、州境の規制は緩和され始めました。そして徐々にチェックインの義務やマスク着用の義務も緩和されていきました。年末年始からオミクロン株の流行により新型コロナウイルス感染は爆発的に増加しましたが、以前のようにマスクなどの規制は政府から発表されませんでした。爆発的に伸びた感染者数は2月ぐらいからある程度落ち着きました。子供達の学校が始まることによってオミクロン株が広がることが懸念されていましたが、学校が始まっても急激な変化はありませんでした。学校が始まった当初は中学生以上と教師にはマスクの着用が義務付けられ、3年生以上の小学生もマスクを推奨されましたが、この規制も3月からなくなりました。

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画像:Juanmonino_iStock

オーストラリア政府は空港や医療施設以外ではマスクを義務化ではなく、したい人はしても良いと発表しています。日本ではマスクの義務化がなくても多くの人がマスクをしているようですが、オーストラリアは極端で、義務化されればほとんどの人がマスクをしますが、義務化がなくなるとほとんどの人はマスクをしません。オーストラリア政府は他の人と安全な距離が確保できない場合はマスク着用を勧めていますが、ほとんどの人はマスクをしていません。そもそも新型コロナウイルスが流行する以前はどこにも医療マスクを売っていないし、日本のマスクをしているととても目立ちました。病院内でも花粉症の私がマスクをしているのはとても目立つことでした。マスクは未知のものでマスクの役割など誰も知らなかったのです。いまではマスクはどこにでも売っているし、マスクを着けていても目立つことはなくなりました。

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画像: SB Arts Media_iStock

2月にコロナの広がりは少し治まりましたが、オーストラリアの各州でコロナウイルス感染者数は増加しています。現在オーストラリアではPCRまたは迅速抗原検査でコロナウイルスの検査ができます。しかし迅速抗原検査はPCRに比べると精度が落ちるため、コロナと診断されていないケースもある可能性があります。また州によっては迅速抗原検査の陽性結果を州政府に報告するのは任意の場合もあるので、統計に反映されていないこともあります。ブリスベンでもニュースにはなりませんが、学校の先生やスタッフ不足のため休校なっている学校もあります。

これから新型コロナウイルスに加えて、インフルエンザなども流行りだしたとき、医療機関のキャパシティがどうなるかは不透明です。いままでの教訓を生かされると期待したいです。

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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