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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

第73代ドイツワイン女王審査会場で考えた地球温暖化の行方

ワイン業界専門家は、世界的な気温上昇により気温が2度上昇すると世界のブドウ栽培に適した地域は56%減少し、4度上昇すると85%の土地で良質なワインを生産することができなくなると警鐘を鳴らす。

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気温の上昇、異常気象、新たな害虫の発生など気候変動によるブドウ栽培は、尽きない課題がある。その対応の一つとして、ワイン生産者は、ワインの品種を変えることで、気候変動の悪影響を少なくとも部分的には補うことができると予測する。

だが、長年同じ土壌で育成してきたブドウ品種をすぐに変えることは容易ではない。何百年も同じ品種が栽培されている地域では大きなハードルとなる。しかもこのような適応戦略の有効性は、ワイン生産者だけでなく、ワイン品種の変更を受け入れる消費者の意欲にも左右されるだろう。

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ドイツワイン協会広報部長エルンスト・ビュッシャー氏は、こう語る。

ワイン生産者たちは、今はまだ経験を積み、自分たちのブドウ畑でそれらの品種がどのように機能するかを試しているところです。気候変動がこの国でより大きな影響を及ぼすようになれば、ワイン生産者はより迅速に対応できるようになるでしょう。一方、ドイツは温暖化でブドウの成熟度が高くなり、結果的にワインの品質が向上します。

2019年は、場所によっては40度を超える高温のため、ブドウの日焼け被害がかつてない規模で発生しました。結局のところ、品種の変更は、ワイン生産を維持するための多くの方策のうちの1つでしかないのです。

温暖化による影響はすでに健康、漁業、土壌、ツーリズム、交通、降水など自然環境や私たちの日常生活にも重大な問題を引き起こしている。

ドイツ連邦統計局によると、気候変動に伴う洪水による大きな被害を防ぐためには、2100年までに欧州各国は年間30億ユーロもの投資をして沿岸の保護を行う必要がある。

これは、EU委員会の共同研究センター(EUJRC)が行った調査の結果だ。今後80年間に世界経済がどれだけ二酸化炭素を排出するかによって、氷床の融解速度が異なり、海面は最大1メートル以上も上昇する可能性があるそうだ。

現在、欧州の沿岸部における洪水被害(2015年の値に基づく)は、年間14億ユーロにのぼる。毎年、約10万人の市民が沿岸部の洪水の影響を受けている。浸水を防ぐ最も簡単な方法は、堤防の高さを上げること。気候の変化や場所に応じて、30~300センチほど増やさなければならない。

 

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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