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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

パンデミックによる相次ぐ倒産・人員削減とフランスの労働組合と労働者の権利

国内7店舗閉鎖が発表された老舗百貨店プランタン  筆者撮影

コロナウィルスの感染拡大が始まって、早くも9ヶ月が経ち、度重なるロックダウンや様々な制限による経済危機は深刻化しています。今年、3月から5月にかけてのロックダウンから、多くの小売店はもちろんのこと大企業や老舗といわれる店舗の倒産・人員削減も相次いでいます。

ルノー 15,000人に及ぶ人員削減

5月、ロックダウン解除直後には、フランスの大手自動車メーカー・ルノーが 15,000人削減(フランス国内では 4,600人削減)・3年間で20億ユーロコスト削減を発表しました。このルノー経営陣の発表を受けて、労働組合連合の呼びかけにより、従業員数千人がルノー・モブージュ(フランス北部)工場に集まり、モブージュ市庁舎までの6キロの道のりをデモ行進する大騒動になりました。5月末、ロックダウンが解除されたとはいえ、10人以上の集まりは禁止とされていた時期の数千人にも及ぶデモ。従業員の怒りもわからないでもありませんが、私は、デモに群がる人混みでの感染拡大の危険性に震え上がりました。

モブージュの工場は、あらゆるセクションが集まる従業員 2,100人を抱える大所帯、中でもカングー(ルノーの車種)の生産を他の工場に移管する計画も含まれていることから、このモブージュ工場の大幅な縮小により、デモ隊はモブージュに集結したのです。デモとなるといきなりスイッチが入るフランス人の興奮ぶりは、このコロナ禍中、恐怖でしかありません。

そもそもルノーはコロナウィルスによる経済危機以前からの弱体化が深刻化しており、(ヨーロッパでは、多くの国でディーラーが閉鎖され、4月の自動車市場は76.3%下落)生産過剰に悩まされていたところ、ロックダウン解除直後の工場業務再開の折にも衛生管理がなされていないとルノーの労働組合が騒ぎだて、騒動となっていました。フランスには、プジョーやシトロエンといった大手の自動車メーカーは他にもあるのに、いつも騒ぎになるのは、ルノーばかり。カルロス・ゴーンの一件にしても、悪いニュースが絶えないルノーです。

FAUCHON(フォション)破産申請・プランタン国内7店舗閉店

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モダンな外観ながらパリの街をシックに彩るフォション・マドレーヌ本店 筆写撮影

そして、6月には、パリの老舗である高級食料品店「FAUCHON」フォションが、裁判所に破産申請を提出しました。本社と、パリのマドレーヌ広場にある3つのパリの店舗(ブランドの象徴であり、130年以上にわたってブランドを象徴するもの)とオテルフォション(ホテル)のティールームがこれに該当、(ホテル自体は、別経営)130名が解雇となりました。   

黒とピンクを使った独特なフォションの店舗の外観は、マドレーヌ界隈でも、一際目立つ存在、シックなパリの街並みに派手でいて、どこかしっくりとハマって街の美しさを引き立てる存在で、こんな老舗でさえもこの経済危機を乗り越えられないということが何よりもショッキングでした。しかし、実のところ、フォションは、コロナウィルス騒動の一昨年以上前から、パリで起こったテロ事件や土曜日ごとに起こる黄色いベスト運動の暴動化や長期にわたるストライキなどの煽りをもろに受けていました。また、多くの観光客を顧客に持つ店舗として顧客のニーズの変化など、経営危機に瀕していたところにこのコロナウィルスの決定打です。今回の破産申請は再建型破産申請で、今後、再建のための措置が取られるとこのことで、なんとかあのマドレーヌの街並みを彩っていた店舗が復活しないかと淡い期待を抱いています。

そして、老舗といえば、つい先日、発表されたプランタンの国内店舗7店舗閉店のニュースです。プランタンといえば、誰もが知っている1865年に設立された老舗中の老舗の百貨店。フランス国内に19のデパートと8ヵ所のシタディウムストアを所有し、従業員3000人を抱える大企業。プランタングループは、11月10日、業績の著しい悪化により、このうちのパリ、ル・アーブル、ストラスブール、メスの4店舗とパリとトゥーロンの3店舗のシタディアムストアを閉鎖し、2021年7月までに450人の雇用を削減することを発表しました。

老舗の有名な店舗としては、フォションに続く、このプランタンの7店舗閉鎖のニュースに「おいおい・・プランタン・・おまえもか・・」というまたまたショッキングなニュースでした。

プランタンとて、フォション同様、業績は、今回のコロナウィルス以前から、テロ、黄色いベスト運動、ストライキなどによる影響を受けていたのです。そして、コロナウィルスでは、3月からのロックダウンで営業ができなかった期間に加えて、今年の夏のソルド(バーゲン)開始時期が感染への懸念から、例年は6月最終週から4週間のところを7月15日からの4週間に移行され、ソルドが始まった頃には、もう皆、バカンスに出てしまって、買い物をする人がいなくなってしまうという痛手にもあいました。

そして、今回の再ロックダウンです。多くの従業員と在庫を抱えるからこそ、さらに厳しい状況に陥るこの状況、プランタンはオスマンの本店をはじめ、継続する店舗もあるので、この事態に店舗縮小は企業として生き残るためには、致し方ないことだったのかもしれません。

ブリヂストン・べチューン工場閉鎖とフランス政府の圧力

今年に入って、多くの企業が倒産、閉鎖のニュースが続く中、なかでも私が一番、憤りを覚えたのは、ブリヂストンのべチューン工場の閉鎖のニュースでした。コロナだ、テロだ・・と大きなニュースが相次ぐ中、9月16日、ブリヂストンの工場閉鎖のニュースがトップニュースとして扱われていたのです。もちろん、私は、日本人なので、ブリヂストンという会社は知っていましたが、その時の私が驚いたのは、工場閉鎖よりも、ブリヂストンが、トップニュースで扱われるくらいフランスでも有名な会社だったということでした。

ブリヂストンは、欧州内の乗用車タイヤ市場の収益構造悪化のために、フランス・べチューン工場を閉鎖することを発表。乗用車用タイヤを生産するこの工場の従業員は863人、労働組合がこの工場閉鎖と閉鎖に伴う従業員解雇に抗議するのは、まだ理解ができますが、フランス政府・ボルヌ労働相とパニエリュナシェ経済閣外相が連盟で、「ブリヂストンは、欧州内の別の工場のためにべチューン工場への投資を長年怠ってきた、工場閉鎖は全く同意できない」と発表し、マスコミを巻き込んで圧力をかけるのには驚きました。

これには、さすがにブリヂストンが気の毒になりました。ブリヂストンは、べチューン工場の操業継続のためにあらゆる可能性を検討した結果、競争力を維持しながら、同工場の操業を維持することは困難であると発表しているのです。

そもそも、フランスの労働組合の強さは相当なもので、ブリヂストンに限らず、ちょっと経営者が気の毒になるレベルです。何かあるごとに組合の抵抗は相当なもので、平常時ですら、気に入らないことがあるとすぐにデモやストライキといった権利が認められ、その権利を横行して反発するのですからたまったものではありません。

それでも、ブリヂストンは、タイヤ部門において、2005年には、シェアトップのフランスのミシュラン社を抜き、以来、世界シェアトップを貫いているので、今回閉鎖されるフランスのべチューンとて、良い時期もあり、メリットもあったのでしょうが、同工場の生産性は、そもそもコロナ以前からの過去10年間で40%も減少しており、ヨーロッパに10ヶ所ある同社の工場の中でも最低。業績悪化の中、この工場閉鎖に踏み切るのは経営者としては至極当然のことです。

ブリヂストンは、この工場閉鎖に関わる人員について、誠実な対応をすることを約束していますが、そもそも、フランスでは、会社の都合により(業績悪化等)、社員を解雇するためには、契約形態や勤続年数にもよりますが、大変なお金がかかるのです。

それでもなお、フランスで規定されているペナルティとも言える莫大な大金を従業員に支払ってまで、ブリヂストンが工場閉鎖を決めたのには、おそらくコロナウィルスが引き金を引いたことには違いありませんが、そうでなくとも、フランスでフランス人を雇って継続するメリットがないわけで、もともと、人件費もアジアなどの諸外国に比べて安いわけでもなく、かといって、生産性よく働くわけではもなく、バカンスだけはたっぷり取り、そのくせプライドだけは人一倍に高く、何かと言えば、デモだストライキだと騒ぐフランス人を雇って工場を続けて良いことは、何もなく、その上、国民はドケチで、壊れた車をガムテープで修理しながら乗る人も少なくないフランス国民が買うのは、中古車がメイン。少しでもダメージを少なく食い止めるために、工場閉鎖は、もっともな選択だと思われます。

そもそも業績悪化のために企業が工場を閉鎖すると下した決断に労働相や経済閣外相が工場閉鎖は認められないなどというのもおかしな話です。会社自体も生き残りをかけて必死なのですから、フランスのような労働者ファーストのやり方は、世界には通用しません。企業は労働者への慈善事業ではないのです。

政府が一企業の工場撤退に対して、このような圧力をかけるのは、ある程度は国民に対しての人気取りのパフォーマンスととれないこともありませんが、政府はこの衰退した工場に援助金の出資を申し出て、工場に再投資し、人を再教育し、工場存続することを要求しました。しかしながら、普通、企業が投資を考える場合、最もその効率の良い場所を選ぶのは、当然のこと、すでにブリヂストンが工場閉鎖に踏み切った時点で、フランスのべチューン工場は投資対象には選ばれなかったのです。フランス政府が一時凌ぎのために、この将来性のない工場に、国としてまで投資すると、正気で言っているのであれば、まことにヤバい国であるとしか言いようがありません。

このあまりに執拗な政府の抵抗に、一度、フランスで起業しようものなら、国ぐるみで抵抗され、撤退ですらままならない、ヤクザの世界からは簡単に足を洗えない世界のようだと空恐ろしく感じるほどです。

9月のブリヂストンの発表から2ヶ月以上たって、先日、再び、政府は、ブリヂストンの経営陣との会談の場を儲け、ブリヂストンが政府の要請を受け入れるつもりはないということを確認し、それをマスコミに向けて発表しました。依然として、ブリヂストンの工場閉鎖が決定したわけではありませんが、少し前進したような印象を受けています。

私は、日本人なので、この話ではどうしてもブリヂストン贔屓になりがちなのかとも思いますが、工場閉鎖に国ぐるみでの抵抗にあっているブリヂストンの工場撤退。普通、フランスでは解雇の際に払われる退職金の計算は、勤続年数を月単位で計算します。長引けば長引くほど、ブリヂストンの負担が大きくなっていくのです。業績悪化は残念な事実ですが、こうなったら、一日も早くブリヂストンがフランスから撤退できることを私は、いつの間にか応援するような気持ちになっているのです。

 

 

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著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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